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xbar-R(エックスバーアール)管理図

計量値(重さ,長さ,電圧,電流など量として測定できるモノ)の平均値(xbar・エックスバー)範囲(R・アール)が「偶然要因」によるばらつきの範囲内に入っているかどうかを確認するための管理図である.
ロットからサンプルを取り,サンプルの平均値をロット全体の平均値の推定値,範囲(サンプルの最大値-最小値)をロット全体のばらつきの推定値として考える.
この平均値と範囲が工程能力のばらつき(±3σ)の範囲内にあれば管理状態にあると考える.従って管理図の上下限の管理限界に引かれる線は,検査仕様の上下限ではない.1000個モノを作ったら997個まではこの範囲に入るだろうと言う実力値の上下限線である.
通常は検査仕様のほうが工程能力のばらつきより幅が広いので,製品が不合格になる前に「異常要因」が発生していることに気が付く事が出来るわけである.
では具体的にxbar-R(エックスバーアール)管理図の作り方を解説しよう.

【手順1】同一の条件で生産した場合のデータを集める.
例えば同じ加工機械で加工した製品の仕上がり寸法を2時間おきに抜き取り検査をした値などが利用できる.すなわち時系列に抜き取りサンプル数だけのデータの群ができる.
データは100個以上ある事が望ましい.
群の大きさ(ロットごとの抜き取りサンプル数)は大きければ精度が上がるが検査工数がかかる,小さければ検査工数は小さいが精度が落ちると言うことになる.通常はn=2~5程度で考えれば良い.
(私はn=5,6程度でサンプリングする事が多い)
このデータがこの工程の工程能力をあらわしていると考える.
【手順2】得られたサンプルを群ごとに,平均値(xbar・エックスバー)と範囲(R・アール)を求める.
xbar
【手順3】計算した群の数だけの平均値を平均する.
xbarbar
総平均(平均値の平均値)が平均値の中心値となる.
xbar(エックスバー)管理図中心線
xbar-CL
【手順4】計算した群の数だけの範囲を平均する.
Rbar
範囲の平均値が範囲の中心値になる.
R(アール)管理図中心線
R中心線
【手順5】管理図の数表からサンプル数nに対応する係数を求め,管理限界線を計算する.
xbar(エックスバー)管理図上限・下限管理限界
xbar上限管理線
xbar下限管理線


R(アール)管理図上限・下限管理限界
R-上限管理線
R-下限管理線


それぞれの係数A2,D3,D4は管理図用係数表による.D3が空欄の場合は,下限管理線を設定しない.control_chart_index

【手順6】グラフ用紙にxbar(エックスバー)管理図とR(アール)管理図を描く.
中心線(実践)と上下の管理限界線(点線)を入れる.(図には管理限界線を赤色線,中心線を黄色線で示した)
Xbar-R管理図
【手順7】ロットごとに得られるn個のデータから平均値(xbar)と範囲(R)を計算し管理図にプロットする.

このような手順で作成したxbar-R(エックスバーアール)管理図でロットごとにサンプルを5個程度抜き取り,平均値と範囲を計算して管理図にプロットを続ける.
この管理図により,工程で予期しない「異常要因」が発生したときにアラームが出るようになる.
異常と判断するのは工程能力のばらつき(±3σ)を外れたときなので,工程内検査で不良が発生する(検査規格を外れる)前に異常を検出できることになる.

工程管理図を書いて上限,下限を超えれば工程に異常が発生していると考えてよい.
上下限を超えていなくても異常と判断すべき場合がある.
詳しくはこちらの記事へ

工程管理図

以前このコラムにて工程管理図について取り上げた事がある.
 ・統計的工程管理 p管理図・c管理図
 ・統計的工程管理 xbar-R管理図
コラム的な内容であり,理論的な裏づけなどは解説していない.工程管理図の活用は統計確率理論に裏付けられており,それを分かりやすく説明する自信がなかったと言うのが正直なところである(笑)
今回は意を決して工程管理図の活用に関して説明を試みることにする.
モノを造る場合必ずその品質(特性,性能)にばらつきが発生する.
全く同じモノを造り続けると言うことは不可能である.そのばらつきが使用上問題がない範囲に押さえ込まれていると言うだけである.
例えば食品が100g入った袋を考えよう.袋詰めの機械設備の精度が±10gしかなかった場合,100g±10gの範囲で商品が出来上がる.110g入りの商品を購入した人は問題がないが,90gしか入っていない商品を購入した人は不満になる.
不満を解消するには110g±10gだけ袋に詰めなければならない.これでは造る側の不満が大きくなる.
そこで袋詰め機械設備の精度を改善し±1gで包装できるようにする.101g±1gで袋に詰めれば生産者側も消費者側も不満にはならない.
このようにモノを造るうえで必ず発生する,機械設備のばらつき,原材料によるばらつき,作業によるばらつきなどを「偶然要因」によるばらつきと言っている.
一方上述の例で,機械設備の設定を間違えていつもより多く(少なく)袋詰めしてしまう.機械設備が故障しており,期待通りの精度で袋詰めができない.などの理由によるばらつきを「異常原因」によるばらつきと呼んでいる.
品質管理の立場から言うと,ばらつきがきちんと「偶然要因」による範囲内に入っているか,「異常要因」によるばらつきが紛れ込んでいないかを管理することになる.
この目的で使用されるのが工程管理図である.
平均値もばらつきも「偶然要因」によるばらつきによって,ある一定の範囲内に入ると言う統計確率理論により,工程が正常であるかどうかを管理する手法である.
上述の例では,袋詰めされた製品の重さは,中心値を中心として一定のばらつき(σ:標準偏差)で決まる正規分布であらわされる.
中心値±σの範囲に入る確率は 68.3%
中心値±2σの範囲に入る確率は95.5%
中心値±3σの範囲に入る確率は99.7%
中心値±4σの範囲に入る確率は99.997%
という分布関数である.
重さに限らず,長さ,容量,電圧,電流など数値で測定可能な値(計量値)はすべて正規分布に従ってばらついていると考えて良い.
この性質を利用して,工程の能力(加工したときの中心値とばらつき(σ))が「偶然要因」によるばらつきの範囲にあるかどうかを,中心値±3σの範囲に入っているかどうかで判定するのがエックスバーアール(xbar-R)工程管理図である.
一方不良の個数や不良率のような計数値は二項分布とかポアソン分布となるが,一定の条件が成立すれば正規分布に近似する事が出来る.
従って工程の能力(不良率が一定以下)が「偶然要因」によるばらつきの範囲にあるかどうかを同様の範囲で判定が可能である.これらの管理図がp管理図(pn管理図),u管理図(c管理図)である.
xbar-R(エックスバーアール)管理図