月別アーカイブ: 2017年1月

“出来ない”を叱らない

 赤字企業再生師・長谷川 和廣氏の「社長のノート」という本を読んだ。

この本の中に「出来る/出来ないを叱らない、やる/やらないを叱る」という言葉が出てきた。

部下に対して「出来る/出来ない」を叱ってはならないということだ。部下が仕事を出来ない、ということは上司に責任がある。上司がきちんと方法を教えていない場合がほとんどだ。

仕事の目的と意義をきちんと教え、作業方法を指導する。初めに手間はかかっても、ここをきちんとやれば、後が楽になるはずだ。

部下の仕事がうまく行っていないときに「頑張れ」と励ましても意味がない。部下は頑張れと励まされても、何をどうしたらいいのか分からなければ、頑張りようがない。ナゼうまく行っていないのかをきちんと分析し、足りない部分を補ってやる。これがOJT(On Job Training)だ。

現場に放り込んで、「頑張れ」と励ましただけではOJTにはならない。放っておいて「仕事が出来ない」と叱るのは、おかしい。

特に中国で仕事をしている場合、あなたの部下はあなたが想定している以上に分かっていないことが多い。

農村から出てきた作業者が、コンピュータのキーボードを水が滴る雑巾で拭き掃除をしても、叱ってはならない。コンピュータを初めて見る人間に、「掃除をしておけ」と作業指示だけした上司の方が間違いだ。掃除の仕方から教えないといけない。

学歴や経験のある職員でも、同様なことはある。例えば「QC七つ道具を知っている」という職員を集めて、何かやらせてみてもうまくは行かない。「知っている」と「使える」は全然別の事だ。
「生産が間に合わない」という問題の原因として「注文が多すぎる」という分析をしたりする。
※これは実は日本人でもしばしば間違う。本当の原因は「注文が多すぎる」ではなく「生産能力が足りない」だ。

日本でもQCC活動が下火になり、工場勤務の日本人若者にもQC七つ道具が使えない人が多くなっていると聞いている。そういう人たちに「出来る」を一方的に期待するから、失望と不満が発生する。これが往々にして怒りとなり、部下を叱ることになる。

出来ないことがあれば、教えることにより成長する。チャンスだと思えば失望や不満は発生しない。もちろん出来るのにやらない場合は、きちっと叱らねばならない。叱るという行為は相手の成長を願ってするものだ。


このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第165号に掲載した記事です。

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究極を目指す

 欧米の契約社会が目指すモノは「合格点」だと思う。
欧米発の品質管理基準ISO9000では、顧客満足とは、顧客の要求をもれなく定義しそれを過不足なく満たすことだ。いわば「合格点主義」

一方本来の日本のモノ造りは「究極主義」だと思う。
不良は究極まで減らし「ゼロ」を目指す。
ほぼ1日かかっていた自動車ボディのプレス金型の段取り換え時間を3時間に短縮し、更に3分まで短縮してしまう。

こういう「究極主義」がなければ、田口メソッドの「損失曲線」という概念は生まれないだろう。

随分昔の話だが、シンガポールのハードディスクドライブ組立工場を見学した事がある。

工程を見て直行率が低そうに思えたので、質問をしてみた。責任者の話では普通は80%代、90%に達したら工程改善をしないそうだ。その改善リソースは次世代機立ち上げに振り向けるという。

いかにも合理主義的な考えである。
しかしこれは現場に改善エンジンを持たない者の「敗者の戦略だ」というと言過ぎだろうか。

日本のモノ造りの現場には、改善エンジンが仕込まれている。QCサークルのような現場の改善チームもそのエンジンのうちの一つだ。この改善エンジンが、モノを作り続ける限り改善をし続ける原動力となる。


このコラムは、2009年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第81号に掲載した記事です。

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QCC活動の運用について

 先週はメルマガ読者様から、こんなご相談をいただいた。
※週二回1時間と時間を決めて、就業時間内にQCC活動をやっています。
 スタッフの自主性に任せ、日本人幹部は口を出さない様に気をつけています。
 しかしなかなか成果が出なかったり、歯痒くなり口を出したくなります。
 どのように活動を継続させて行くのが良いでしょうか?

日系企業の総経理様からのメールだ。この方は日本でQCC活動を経験されており、指導者的立場だった方だ。

私は、経営者、経営幹部が積極的にQCC活動に参画した方が良いと考えている。

本来QCC活動は従業員の自発性を尊重し、自主的活動が原則となっている。このため管理職は、サークル活動には口出しをしないことになっている。しかしこれが、日本のQCC活動が衰退してしまった遠因だと私は思っている。

1985年日本が絶好調だった時にQCサークルは日本全体で約27,000サークルあった。それが2000年には3,000サークルほどに激減している。

QCC活動の成果として、サークル数、活動件数を重視したため、各サークルに年間活動件数○件と言う目標が課せられた。その結果、簡単に完結出来るテーマが選ばれたり、既に結果が見えている活動にQCストーリーを当てはめるだけ、などと言う成果実感のない活動が増えて来た。

私はそれらの活動を
・ドブさらいQCC
・ままごとQCC
・なんちゃってQCC
と呼んでいる(笑)

少々厳しい評価かもしれないが、
「事務仕事の効率化を図るためファイルキャビネットを整理しました」
「ミスを防ぐために○○の勉強会を全員でしました」
業務として取り組んだ生産性向上、不良削減活動にQCストーリーを当はめるこんな活動ばかりになって来た。

これでは残業代を支払って、ムダな事をさせている様な物だ。サークルメンバーの方も、達成感がなく、やらされ感しかない。

こういう経緯で、バブル崩壊後活動サークル数は1/10近くまで急降下した。

私はこの頃に、前職で事業部内のQCC推進者として関わっていた。私がいた事業部は、製造部門のないファブレス事業部だったので、営業、設計等、余りQCC活動に積極的に取り組まない部署ばかりを抱えており、上記の様な現象をまさに体験していた。

全社のQCC推進部署も同じ問題を共有しており、再活性化の方策として、管理職のQCC活動への参画をする事とした。

勿論活動そのものは、自主性を尊重する。
しかしテーマ選定には、職場の管理職が積極的に関与する。職場の方針・目標を共有する。テーマ選定時には管理職も参加し意見を言う。こういう方式に変更し、上述の様なメンバー・上司双方の不満の解消をした。

この様な経験もあり、中国でQCC活動をやる時は管理職もテーマ選定までは、積極的に参画する方法をお勧めしている。また全員が初めてQCC活動をする様な状況では、指導者がいなければ何をしたら良いかさえ分からないだろう(笑)

更にQCCを人財育成のOJTとして活用するために、サークルリーダやテーマリーダも経営者・経営幹部が指名した方が良いと考えている。勿論、公平・公明な人財育成計画の元でやらねば、メンバーの反発を買う事になる。

活動そのものは、定期的にリーダ会議などを開催し進捗を確認しアドバイスをする程度にする。経営者・経営幹部が口を出すのは最初だけ、後は自主性に任せるスタイルにするのが良いと考えている。

この様な活動にすれば、活動の成果、メンバーの成長、チームワーク、改善意欲の向上、現場経験技術の蓄積等の結果がすぐにでも見えて来るはずだ。

私たちは、QCC活動を初めてする企業、まだ数回しかしていない企業、相当活動経験がある企業(日本本社の発表会に参加して最優秀賞をとるレベル)ともに、QCC活動の指導経験がある。どのタイプの企業にも、テーマ選定までは上司が参画する方式が有効だった。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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QCC活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、原因がよくわからない問題の改善は、QCC活動に任せるのが良い。複数の部門の協力がなければ達成できないような改善は、複数部門で改善プロジェクトを起こす。単純な改善活動は、日常業務として取り組めば良い。

指導先で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、サンプル不合格となった原因を整理・分析し対策を検討する。さらに顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。したがって、関連部門でチームを作りQCC活動をするのが良さそうだ。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで不合格となった試作サンプルは3件しかないということだ。ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度不良の原因調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証で出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

道具にはそれぞれそれに適した仕事がある。プラスネジをマイナスドライバーで締めることはしない。改善という仕事にも、日常改善、プロジェクト改善、QCC活動を課題に合わせて使い分けるのがよかろう。


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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組織の成長

 組織は、継続的に成長を続けなければならない。停滞は退歩だ。
しかし多くの企業では、優秀な社員の離職によって組織力が落ちてしまう。

以前生産委託していた台湾企業は、8年間で10人の工場長と知り合った(笑)
工場長が替わると、品質が不安定になる事も有った。現場の組長・班長の離職はより直接的に影響が有る。生産ラインを固定し、4M変動の中に組長・班長の変動報告も義務づけていた。しかし組長・班長の離職をくい止める訳にも行かず、変動時に生産現場の指導・確認をすることになる。

工程内直行率を監視していると、人の変動と品質変動が相関関係にあることがよく分かる。当然この様な状況は生産委託先が改善しなければならない。
しかし、相手の努力を期待して品質レベルの変動に一喜一憂するのは堪えられない。生産委託先に出向き、必死に支援することになる。
当時は、自分たちはリーダの育成は出来たが、生産委託先の組織育成が出来なかったと悩んでいた。

中国でハンセン病元患者を支援するボランティア活動をしている「家(JIA)」の代表・原田燎太郎氏の話を聞いていて気が付いた。
彼らのメンバーは学生であり、長くても4年で変わって行く。年間離職率25%の組織で、組織の成長をどうやって維持するのか、疑問に思い質問してみた。

実は原田氏も同じ悩みを持っているそうだ。
人が入れ替わるたびに、活動がぶれてしまう事が有るそうだ。
しかし8カ所ある活動支部のうち、広西省南寧支部のボランティア活動だけがぶれていない。実はその事に気が付いているのだが、原因は今の所分からないそうだ。

原田氏には、ぜひその理由を究明して欲しいとお願いをした。
理由が分かれば「家(JIA)」は、どの活動支部も人の変動に左右されなくなる。
そして私が独立前に悩んでいた「組織の育成」に対して、今考えている仮説と答え合わせが出来るのではないかと期待している。


このコラムは、2015年9月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第441号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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公開講座開催

リーン生産方式(精益生産)とは1980年代に米国マサチューセッツ工科大学のジェームズ・ウォマック、ダニエル・ジョーズが日本の自動車産業(主にトヨタ自動車)の生産方式を研究して、体系化した生産管理手法の一種です。
その手法は、製造工程におけるムダを排除することを目的として、製品および製造工程の全体にわたって、トータルコストを系統的に減らそうとするのが狙いです。

精益生産は自動車産業ばかりでなく、多くの業種で採用され大きな成果を上げています。

その精益生産の核心は何でしょうか?
JITでしょうか?
カンバン方式でしょうか?
七つのムダ削減でしょうか?

多くの書籍で、JIT、かんばん方式、七つの無駄を解説していますが、ほとんどの書籍で解説されていないあることがあります。それが本当の核心なのです。

それは「改善文化」です。
現場の作業者から経営幹部まで日々改善を継続する文化があるから、精益生産が効果を上げるのです。
トヨタも日産もホンダも社内に改善文化があります。

その改善文化をどのようにしたら、あなたの会社に根付かせることができるのでしょうか?今回の公開講座ではその秘密をあなたにお話します。

テーマ:「改善文化」
講師:阔理蒂企业管理咨询 林徹彦
日時:2017年2月15日 15:00~17:00(14:30受付開始)
場所:東莞市南城区(お申し込み者には詳細をお知らせします)
費用:300元(弊社お客様は無料)

ご希望の方には、個別相談を無料で提供いたします。

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答えは現場にある

 以前指導していた台湾資本の中国工場でこんなことが有った。
ここの工場ではQE(品質エンジニア)がお客様からの不良返却品に対し、再発防止などの対策書を作成することになっていた。

しかし彼らは現場はおろか返却された不具合品もあまり見ることがない。返却不具合品は専門の解析チームがあり、彼らが原因解析をする。対策はQEが机の上で作文をする。報告書に必要な写真があれば、解析チームに依頼する。

報告書の作成に手間取っていると、不具合品はすでに廃棄されていたり、修理されていることすらある。

これでは永久に不具合は減らないだろう。

私は彼らに「問題は現場で発生している。答えも現場にある」としょっちゅう発破をかけ、机に座っているQEを現場に追い出していた。毎朝前日発生した工程内不良の会議にもQEを参加させて、現場で不具合発生や対策の効果を確認させた。

彼らをオフィスから追い出し、現場に有る解析チームの横に机を持っていった。

こうすることにより、彼ら自身の改善がスタートしたといって良いだろう。

現物・現場から離れたところの発想では何も生まれない。まさに「問題は現場で発生している。答えも現場にある」

私の友人コンサルタントは「モノは有るから見えるのではない。見ようと思うから見えるのだ」と口癖のようによく言う。これが彼の信条だ。

改善・問題解決のための答えはいつも現場に有る。


このコラムは、2007年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第17号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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品質不良のアフターフォロー

 以前一緒に仕事をした台湾人が久し振りにSkypeでチャットをしてきた。

生産委託工場の品証部経理をしていた人で、お互い職場が変わっても時々連絡をくれる。
中国語でのチャットは正直疲れるのだが(笑)昔一緒に仕事をしていた人から連絡がもらえるのは楽しいものだ。

今彼は蘇州方面にある、医療器具メーカの品証経理をしている。
今回の報告は客先からの不良クレームの件であった。

OEMユーザに出荷した新製品第一ロットの製品の主銘版ラベルの貼り方向が間違っている、というクレームだ。

ちょうど国慶節休暇の最中であったが、彼は休暇中どこにも行くあてがなかったので(笑)即バスと電車を乗り継いで顧客の工場に出向いた。

顧客側はすぐ来てくれるとは考えていなかったようで、休暇中の訪問を大歓迎してくれた。
彼は叱られると覚悟をしていったのが、嬉しい肩透かしであった。しかも帰りには、次のロットからシェアを上げてもらえる、という約束をもらって帰ってきた。

営業がいくら頑張ってももらえなかったシェアをいとも簡単にもらえた。
そんな事を嬉しそうに話してくれた。

しかし喜んでばかりはいられない。
原因の特定と再発防止が必要である。例によって「作業者に注意します」という報告書を書くつもりだったようだが(苦笑)
事情を聞いてみると、最初の仕様決めのときに問題があったようだ。

OEMユーザの図面にはラベルの方向が明示してなかった。

彼には生産開始時に、製品が顧客仕様に合致しているかだけではなく、顧客仕様が生産に十分な情報を持っているかどうかもレビューするようにアドバイスした。

顧客不良に対するアフターフォロー(後始末)も大事だが、
不良を発生させないビフォアフォロー(前始末)はもっと重要だ。

以前開発のエンジニアをしていた時に、新製品に某OEMメーカのCRTディスプレイを採用した事がある。
採用決定後OEMメーカの品証部から最終完成品を見せてくれと申し入れがあった。OEMメーカの品証エンジニアは我々の製品をチェックし、高電圧(25kV)のアノードキャップから25mm以内に金属筐体があるので設計変更をしてくれと申し入れてきた。

アノードキャップは絶縁体でできており、アノード電極(25kV)がむき出しになっているわけではない。従って筐体を設計変更する必要はないと感じたが、OEMメーカの心意気に感心した私は、すぐにメカ設計チームに設計変更を要求した。

こういうのが本当の品質保証活動だと思うのだ。


こちらの記事もご参考に
第八回品質道場「品質改善」


このコラムは、2008年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第59号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

終わりなき改善

 ずいぶん昔のことになるが、シンガポールのハードディスク工場を訪問したことがある。
工場を見せていただいて、工程内不良が多いのがすごく気になった。案内をしていただいた幹部の方に質問すると、歩留まり率が80%を超えたので、もう改善はしていない。改善のリソースは全て新機種の立ち上げに投入している、という説明だった。

当時(1993年)のハードディスク業界は、容量アップの競争が激しく、新機種をどんどん投入しないと、旧機種の売値が即下落してしまうという状況だった。

その話を聞いた時に、合理的な経営判断と感じたが、その後もずっと違和感を感じていた。量産製品の生産指導をするようになって、その違和感の原因が分かって来た。

まず第一に、改善リソースと新機種立ち上げリソースがトレードオフ状態になっている事だ。つまり新機種立ち上げに人を投入してしまうと、旧機種の改善を担当する人がいなくなってしまうという事だ。

私たちは、量産開始時に設計完成度、生産技術完成度が一定の水準に達している事を確かめ、その後は現場のリーダが継続的に改善を進める、というやり方をしていた。そのため、新製品の立ち上げリソースは量産開始後すぐ次の新製品に取りかかることができる。

まれに、生産性や品質を改善するために、設計にさかのぼって変更をかける必要がある事もあったが、それが原因で新機種の立ち上げが遅れる事はほとんどなかった。

第二の原因は以下にある。
旧機種の改善により、設計完成度が量産開始時には相当高いレベルに達する事が出来ていた。量産品の設計完成度とは、作り易く不良が出ない、と言う事だ。旧機種の問題の改善は、新機種の設計にどんどんフィードバックする仕組みを作った。
例えば、設計審査時に製造部のメンバーも参加し、生産性のレビューをする。量産試作時は当然だが、技術試作時にも製造部、生産技術が積極的に参加をするようにした。

これは相当効果が高かった。このシステムを導入した当初は、設計部門は仕事が増えると、陰で反対したモノだ。しかし実際には量産リリース後の手間は激減、しかも試作時に製造部や生産技術が手伝うので、試作にかかる設計部門の作業も軽減出来た。

更に大きな効果は、製造部、生産技術の生産側のメンバーが、開発初期から設計に関わるので、彼らの意欲が向上した。それまでは、出来の悪い機種を「造らさせられている」というネガティブな思いがあったが、造り易い機種にするために、積極的に設計に関わるというポジティブな意欲となった。
当然設計部門と生産側のコミュニケーションが格段に上がった。

こういうレベルとなると、製造部がコツコツと改善する。そしてその成果は次の機種の設計に反映されるという、ポジティブサイクルが出来上がる。

私たちが生産していたのは、電源装置であり、ハードディスクの生産とは直接数字の比較は出来ないが、量産開始後3ヶ月以内に工程内不良を100ppm以下にすることができた。つまり直行率が、99.99%という意味だ。歩留まり率は、修理して良品になった物も良品としてカウントするので、歩留まり率は100%だ。

歩留まり率や直行率の目標を置く事は間違いではない。しかし中途半端な目標に満足するのは勿体ない。

改善を阻害する要因(リソース不足)を排除する。つまり製造現場の改善力を鍛え上げる。それにより生産が続く限り改善が継続するようにする。
過去の設計・生産経験を積み上げる仕組みを作る。
私はこの二つに取り組むことにより、ハードディスク工場で感じた違和感を払拭した。


このコラムは、2012年9月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第276号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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