月別アーカイブ: 2016年12月

失敗の科学

 顧客クレームを再発させないためには、失敗に学ぶことが必要だ。
まずは失敗からその本質を抽出しなければならない。

例えば、接着が剥がれると言う不良が発生したとする。これを抽象化すると接着力<外力 と言う単純な原理で表現出来る。
ではこの原理が成り立つのは?と考える。
・接着力が想定より小さくなった。
・想定より大きな外力がかかった。
この二つの条件のどちらか、もしくは両方が発生しているはずだ。

更に接着力の大きさはどのように決まるか、と抽象化を繰り返す。

問題解決のためには、抽象化した原理を、三現主義により具体化することで、原因を発見し、対策を検討する。

同様に抽象化した原理を他の事象に合わせ具体化することにより他の事象にも応用が出来る様になる。つまり、今回発生した問題だけではなく、まだ発生していない潜在的な問題を未然に防ぐことが可能になる。

失敗から学ぶために重要なことは、全ての失敗事例を記憶することではない。
失敗事例を抽象化し原理を抽出する。抽象化した原理を事象に合わせ具体化する。と言う思考法を学ぶことだ。


こちらの記事もご参考に
第八回品質道場「品質改善」


このコラムは、2016年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事です。

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顧客クレーム(誤出荷)

 以前、生産委託工場から出荷した製品の中に違う機種が一台混ざっていたというクレームをお客様からいただいた事がある。

クレーム品を調べてみると、製品そのものは同じだがラベル銘版を別機種の物を貼って出荷してしまった事が判明。全く同じ製品なのだが、お客様が仕向け地別に型名の枝番号を変えているので、ラベル違いで3機種ある。ラベルも型名の最後の二桁が違うだけで、他は全く同じである。

したがってラベルを貼り間違えてしまう可能性は、生産開始時点から予測していた。
そのため型番ごとに作業指示書を3セット用意し、ラベル貼り作業、目視検査工程の作業指示書にはラベル現物を表示した。

それでも問題は発生した。

工程の記録によると、内部異物(ケースを振るところころ音がする)不良でラインアウトした物がある。内部異物不良が発しすると、超音波融着してあるプラスチックケースを開けて、中の異物を確認・除去しなければならない。従ってケースは再利用できず交換することになる。ラベルも新たに貼らねばならない。

通常であれば修理完了後ライン復帰しラベル貼り工程、目視検査工程を通るので、不良は発生しないはずである。

更に班長の記憶を調査してみると、修理品のライン復帰時に既に別の機種を生産しており、別の機種が流れているラインで班長が持ち回りで、検査梱包工程を通した事が判明。
このときに班長が作業者に間違ったラベルを渡し、目視検査員も見逃してしまった、というのが真相のようである。

万全を期して不具合が発生しないようにしていても、このように意外な落とし穴があるものである。

注意しなければいけない落とし穴は、修理品のライン復帰、抜き取り検査品の戻し先間違い、など見落としがちなところに潜んでいる物である。


こちらの記事もご参考に
第八回品質道場「品質改善」


このコラムは、2007年11月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第6号に掲載した記事に加筆したものです。

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品質クレーム

 エアーバックの回収問題、杭打ち作業のデータ偽造問題などが、社会的にも大きな問題になっている。過去にも品質クレームがきっかけで廃業した牛乳メーカがあった。

一方、1件の異物混入事故で全数市場回収・生産停止をした焼きそばメーカの事例も記憶に新しい。このメーカは事故発生後すぐに生産設備の刷新を決断している。その間市場からは自社製品が消えてしまう。通常ならば消費者から忘れられてしまい、生産を再開しても売り上げは激減してしまうだろう。
しかし事態は逆だった。生産停止期間中も、消費者から激励のメールや電話があったそうだ。生産再開後は以前よりも市場占有率を上げた。

品質クレームをきっかけとし社会的信頼を失ってしまい、倒産してしまう企業、品質クレームがあっても、顧客が離れない企業との違いは何だろうか。

もちろん熱狂的なファンがいる事も要因だろうが、品質クレームに対する処置・対応の差が重要要因と考えている。この違いで、一方は倒産、一方はシェアアップと雲泥の差が付く。

前職時代にこんな経験をしたことがある。

あるお客様向けの、内蔵電源を受注した。
第一ロットの生産が完了し、出荷判定会議を開催した。出荷判定合格の基準を全て満たしていたが、工程内不良0.7%が全て同一部品による不良であった。しかし不良原因は、部品メーカにて解析中でありまだ不明。このため出荷判定不合格とした。
しかし、出荷を止めれば顧客から納入遅延クレームをいただくことになる。
工場には、該当部品を全て(検査良品も)セカンドソース部品と交換、再検査、全検査データで工程能力の再計算をした上で出荷準備をしておく様に指示をし、翌日顧客に、事情説明とお詫びに訪問した。

当然叱られると思い、技術部長も帯同した(同じ叱られるなら2人の方が若干でも心強いと思った・笑)
しかし出荷停止の説明をした後、腕組みをしていたお客様から信じられないお言葉をいただいた。
「さすが横河さん。御社にお願いして正解でした」

実はこのお客様は、従来から電源は自社設計する事に決めており、外部に設計を含めて委託する事は初めてだったそうだ。しかし電子回路設計者が、ディジタル回路にシフトしてしまい、電源設計者が減少。従来の設計を伝承しながら製品化していたが、基本設計が古くコストダウンが思う様に出来ない。そのため同じ業界の競合他社にも電源を供給している前職の会社にオファーをいただいたようだ。

初めての製品で、第一ロットから納期遅延。当然信頼を失っても仕方がない場面だが、逆に信頼を得る事が出来た。
これは正しい処置と対応が出来たからだと考えている。


実は周辺装置のプロキュアメントエンジニアだった頃から品質保証を担当した期間、相当の修羅場を経験して来ました(笑)
第八回品質道場「品質改善」では顧客クレームに対する処置・対応に関して私の経験をお伝えします。


このコラムは、2015年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第450号に掲載した記事に加筆したものです。

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QCC成果発表交流会

2016年12月16日にQCC成果発表交流会を開催しました。
5チームのサークルから発表をいただき、50名弱の皆さんとその活動成果を共有しました。
その概要をご紹介します。

  • 検査課チームimg_1482s
    テーマ:完成品の運搬効率改善
    活動内容・成果:
    FQC検査時に完成品を運搬する無駄、完成品梱包箱を積み上げる重量物作業を改善するテーマに取り組み成果をあげた。

    • FQC検査を製造現場端で行うことにより、完成品梱包箱の運搬、開梱、再梱包作業をなくした。
    • 運搬台車を自作し、パレットへの積み替えをなくした。

    コメント:自部門の効率改善ばかりでなく、出荷品の保管方法を改善し、出荷作業も改善する素晴らしい活動であった。

  • 活力チームimg_1483s
    テーマ:投資効率450倍!生産性改善活動
    活動内容・成果:
    理論上の生産台数423台/日に対し300台/日しか生産できていない。営業の要求400台/日を目標にして改善活動。
    以下の改善を実施し、目標を達成

    • 作業員の目標意識の向上
    • ライン長の離席者補助の遅延をなくす
    • 作業員の離席管理改善
    • ロット切り替え時間の短縮
    • その他6項目の改善

    コメント:
    対象の生産ライン(U字セルライン)はラインバランス99%とというほぼ理想的なラインだが、理論通りの生産量が上がらない要因15個をあげ優先順位をつけて4項目の重点改善、6項目の改善を実施。
    テーマ選定、対策実施を優先順位をつけて活動できた。
    改善効果を他のセルラインにも展開し、歯止めもよく行っている。

  • 冲锋チームimg_1485s
    テーマ:I042不良率削減
    活動内容・成果:
    加工要因による不良(6.98%)の原因を洗い出し、対策を実施。
    不良率3.01%まで改善。
    コメント:
    サークルメンバーと部門長が問題点としてあげた項目を1項目ごとに議論し、「すぐやる」「今回はやらない」「QCCで解決する」に分類して活動テーマを決定している。このようなやり方により、会社方針、部門方針にマッチした活動が可能になる。
    特性要因図によりあげた不良要因を、EDS分析、FTIR分析などの科学的ツールを活用し検証している。
  • TEAM広東img_1486s
    テーマ:金型交換80%短縮
    活動内容・成果:
    段取り替え時間短縮活動により、金型交換時間81分→16分(80.2%削減)176分→35分(80.1%削減)することができた。これにより少ロット生産が可能となり、中間在庫が削減できた。
    コメント:
    「問題解決型」のQC活動ではなく、課題を設定し現状とのギャップを埋める「課題達成型」で活動すると、ストーリィの展開がスムーズになる。また中間在庫の削減も大きな成果(スペースの削減、運転資金の効率向上)になっているはずなので、成果にカウントするとなお良い。
  • 先鋒サークルimg_1489s
    テーマ:モータ絶縁不良の改善
    活動内容・成果
    工程内で発生した絶縁検査不良をゼロにする活動。6項目の改善対策を実施し、3ヶ月約90万個生産し絶縁不良ゼロを達成した。
    コメント:
    QCサークル活動を開始してまだ1年足らず。初めての活動で立派な成果をあげることができた。
    対策を検討するときは、発生原因と流出原因に分けて検討すると良い。
    絶縁不良の原因となる金属異物の発生を防ぐのが原因対策。金属異物を除去する、検査するのは流出対策。
  • 表彰式
    参加者の採点により、以下のサークルが表彰されました。

    優秀賞第一位:検査課チーム 発表テーマ:完成品の運搬効率改善

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    優秀賞第二位:活力チーム 発表テーマ:投資効率450倍!生産性改善活動

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    優秀賞第三位:冲锋チーム 発表テーマ:I042不良率削減

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    優秀賞:TEAM広東 発表テーマ:金型交換80%短縮

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    優秀賞:先鋒サークル 発表テーマ:モータ絶縁不良の改善

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  • 懇親会
    成果発表交流会後の懇親会で、他社のサークルメンバーと交流できました。
    私は、「金型交換80%短縮」を発表したTEAM広東を派遣してくださった総経理から、こんな話を伺いました。
    金型交換時間が1/5になったことで、少ロット生産が可能になり、生産現場のスペースが節約できた。それ以外にも大きな成果があった。事例発表は成型部門のリーダが担当したが、日本語の通訳を後工程の組み立て工程のリーダが担当した。実はこの二人は仲が悪かった(笑)前後の工程には何かと確執があるモノだ。会社代表として二人が発表する事になり、発表練習でお互いの立場をより理解出来たようだ。特に通訳を担当したリーダが遅くまで練習しており普段とは違う一面を見ることができた、と総経理は話してくださいました。
    QCC活動には、サークルや職場のメンバーのチームワークや人間関係改善の効果があります。サークルや職場を超えて協力関係が構築されるのを、総経理は狙ったのかもしれません。

今回事例発表サークルを派遣してくださった企業様

不良原因分析

 顧客クレームや工程内不良に対する原因分析、再発防止対策検討は日常的に行われていると思う。
顧客クレームは無い方が良いが、工程内不良が無いと改善のチャンスが無くなる。工程内不良の処置(修復、やり直し、在庫の全数再検査)に追いまくられ、改善のチャンスを逃してしまってはもったいない。
本当の原因を特定する事により、有効な再発防止が可能になる。原因分析で手を抜くと、有効な再発防止が出来ずに「慢性不具合」となる。

原因分析のコツについて書いてみたい。

我々の様な凡人が天才と同水準の仕事をするためには、一人ではなく複数で智慧を出し合う。そのための手法がQC手法に代表される管理技術だ。
特性要因図(中国語では『魚骨図』)が原因分析手法としてよく活用される。
しかし特性要因図は、原因分析手法というより原因となりうる要因を沢山列挙する手法と言った方が良い。何も無い所から要因を列挙するより、中骨として、例えば人、物、設備、方法の4Mで分類すると、要因を発想しやすくなる。
他人の発想を図にまとめて可視化する事により、更に新しい発想が出る。
このようにして列挙した要因が、真の原因かどうか検証する。それが原因分析のプロセスだ。

問題の要因を発生原因と流出原因に分けて、再発防止対策を考えるとよい。
発生原因が根本的な原因であり、流出原因は根本問題を見逃してしまう原因だ。

例えば、製品内に金属異物があり絶縁不良発生、という問題を考えてみよう。
金属異物が発生する、というのが根本問題だ。絶縁検査で不良を発見しているので流出問題は無い、と考えてはいけない。発生した金属異物を自工程で発見出来ない、除去出来ない、というのが流出だ。

根本原因、流出原因に対してそれぞれ再発防止対策を考える。
この時に重要な事は、根本原因を根絶させる事が出来れば、流出対策は不要だという事だ。流出対策に重きを置いている再発防止対策をしばしば見かける。

流出防止対策は製品に付加価値を与えない。前出の例で言えば、加工時に発生した金属異物を除去するという作業や、耐圧検査は付加価値を生んでいない。品質を保証するための付帯作業だ。可能であれば削除、出来る限り短縮したい作業だ。しかし全数検査を2度やる等という対策をしばしば見る。
根本原因対策に重きを置けば、従来行っていた付加価値を生まない検査作業を削減出来る事すらある。


こちらの記事もご参考に
第八回品質道場「品質改善」


このコラムは、2016年12月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第507号に掲載した記事に加筆したものです。

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逆転発想

 「逆転発想」とは我ながらへたくそなネーミングだと思う(笑)この「逆転」は一発逆転の逆転ではない。右回りに対する左回り、という意味で正転、逆転という言葉を当ててみた。

例えば、改善活動で誰かが改善案を提案したとする。この時に「○○だからそれは上手く行かない」という考え方を逆転発想すると、「○○という制約を解決すれば上手く行く」となる。

ポジティブシンキングとは少し違う。制約条件により上手く行かないと発想するのではなく、制約条件をアイディアを実現させるための解決課題と考える。
発想の方向を逆にするという意味だ。

設備の可動率を上げるために金型交換時間を短縮する、という改善を考えて見よう。次に使う金型を台車に乗せて事前に準備する、という「外段取り化」を考えたとしよう。段取り替えのエンジニア達は、200kgもある金型を台車に乗せて運ぶのは無理だ,と反対する。しかし金型用の昇降台付きの台車を用意すれば可能となる。

逆転発想が上手く出来ないのは、意外にも経験のある優秀な者だったりする。
長い間「正転」で考える習慣がついているので、発想の転換が難しいのだろう。

市場で発生した発煙事故の原因を検討する時に、電源の過電流保護が働かないと発煙事故につながる、という仮説を立てたとしよう。どのような場合にその様な現象となるか?と設計部門のリーダに質問すると、暫く回路図を睨んで「設計は間違いない。そんなことは起きない。」と正転で考えるので、会話が噛み合ない。どの部品が故障すれば、保護回路が働かなくなるか?という発想で考えて仮説が正しいかどうか検証するのではなく、設計に誤りがない事を先ず考えてしまうのだろう。

QCC活動で改善をしている時も、その改善案には投資が必要だからダメだ、と可能性に自ら蓋をしてしまう事がある。
逆転発想では、先ずはどのくらいの投資が必要なのか見積もり、投資が見合う効果が出るか検討する。更にもっと安く同じ効果が得られる方法がないか検討する,という手順になる。

逆転発想で上手く行く体験をすると、次から逆転発想をする様になる。
この様な体験を「目からウロコが落ちる」というのだろう(笑)


このコラムは、2016年12月5日配信のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第505号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】