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#12:5Sの継続

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
5Sを継続するのは従業員だ.
5Sを継続するには,従業員をその気にさせなければならない.それが経営者の仕事だ.

5Sを始めたが,継続が難しいと経営者・幹部が嘆く.5Sを始めた当初は,皆張り切って取り組み,見違えるほど工場の現場もオフィスも綺麗になった.
しかし一,二年で元の木阿弥.お客様の工場訪問のたびに「5Sをやれ!」と大声を出さなければならない.
5S巡視をすると,職員の机は綺麗に片付いている.しかし翌日には,机の周りにファイルが散乱している.
コピー機の横に置いてあるはずのホッチキスが見当たらず,いつも探し回らなければならない.正しく5Sを実践すれば,こうはならないはずだ.

続かない理由
5Sが継続しないと嘆いても始まらない.継続しないのは,理由があるからだ.理由が分かれば,対策を考えることが出来るはずだ.
第一の理由は,5Sの目的を明確にしていないこと.5Sは自分たちのためにやるモノだ.要らないモノは持たない.必要なモノがいつも手を伸ばせばある.職場はいつも掃除が行き届いている.こういう環境で仕事をすれば,気分が良いだけではなく,効率も良いはずだ.「お客様が来るから5Sをしろ!」と言うのは,5Sの目的を正しく伝えていることにはならない.
第二の理由は,5Sの基準が明確になっていないこと.例えば,掃除の基準が決まっているだろうか?基準がなければ,何処までやれば良いのか分からない.
毎日就業時間中に1時間も掃除をするのでは,経営者も心穏やかではないだろう.掃除をする理由の他に,何処をどの程度綺麗にしなければならないのか,基準を示さなければならない.
第三の理由は,清潔を正しく理解していないこと.子供の頃,母親から「後片付けをしなさい」と毎日叱られたものだ.叱られてしぶしぶ片付けるが,翌日はまた叱られることになる.
叱られて後片付けをするのは楽しくない.「散らからない方法を考えなさい」と言えば,自発的に考えることになる.「清潔」とは自発的な創意工夫のことだ.

コト造りによる躾
命令・服従型の躾は,楽しくない.命令されるより,自発的に取り組んだ方が楽しいし,士気が揚がる.自発的に楽しく取り組める「コト」を作り出す.
5S巡視で最下位となった職場には,罰金を課す.これでは楽しくはない.
逆に「5S貢献賞」を設け,人知れず5Sに取り組んでいる人に光を当てる.業績で英雄になれなくても,5Sヒーローならば,誰にでもチャンスはある.チャンスを造って人をやる気にさせる.それがコト造りだ.


【今月の一言】
コト造りでヒト造り

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年6月号に寄稿したコラムです.

こちらもご参考に。
5S実践研修

#11:5Sでこうなりました

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
5Sとは掃除・片付けのことではない.
5Sの目的を正しく理解し,実践すれば業績改善に貢献する.

掃除・片づけをして見栄えを良くすることが5Sの目的ではない.正しい5Sを実践することにより,P(プロセス)Q(品質)C(コスト)D(納期)S(安全)E(環境)M(モチベーション)を改善することができる.この改善を通して業績に貢献することが5Sの目的だ.

中間在庫が半分に
ある工場では,作業現場の見通しが悪くなるほど中間在庫がたくさんあった.これは現場リーダが,納期遅れを恐れ,中間在庫を持ちたがるからだ.最初の工程に作業員を投入して,一日分の中間在庫を作ってしまう.手が空くと順番に後工程に作業員を送り込む.
この現場のリーダに,製品の出荷可能日を尋ねると,必ず○日の朝までに出来ますと答える.お昼までにとか,定時までにとか言わない.間に合わなければ,全員投入して残業で一気に造ろうと考えているからだ.
このようなモノ造りは生産効率が悪い.リードタイムも長くなる.中間在庫が多いので,キャッシュ・フローも悪くなる.
この現場では,まず整理をした.中間在庫を置く移動式の棚を,半分捨てた.リーダはムリだと抵抗したが,棚を半分にしたその日から,生産には何も支障はなかった.あっという間に中間在庫は,半分になった.
その次に工程間に置く移動式棚の置き場所と,数を決めた.これが整頓だ.
作業員には,置き場所がいっぱいになったら,作業を止めて決められた工程へ手伝いに行き,棚がいくつになったら戻るよう教えた.
作業者自身が自律的に動けるようになり,現場のリーダは作業員をあちこちに動かす必要がなくなった.
リーダには空いた時間を改善に当てるように指導した.

整理・整頓で生産性改善
別の工場では,昔からのモノ造りの方法を改善することができていなかった.
この工場ではまずムダな作業を整理した.ムダな作業がどこにあるのか見抜くためには,コツがある.まず作業の流れを見えるようにする.いわば,作業の整頓である.これで簡単にムダな作業を見つけられる.
見つけたムダを捨てる.動作のムダ,取り置きのムダ,運搬のムダなどを整理する.これで生産性が改善できる.
正しい5Sとは,次のような活動により業績に貢献することだ.ムダな作業,ムダな時間を整理・整頓する.清掃により,整理・整頓の維持を確認する.更に改善できるようにすることが清潔だ.そしてこれらの活動を通して従業員の能力を育てることが躾だ.


【今月の一言】
5SでPQCDSEM改善

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年5月号に寄稿したコラムです.

こちらもご参考に。
5S実践研修

#10:5Sで企業文化

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
三流企業は生産性を強化する.
二流企業は品質を強化する.
一流企業は企業文化を強化する.

中国は既にローコスト生産国ではない.未だに人海戦術のモノ造りをしている工場は,早晩淘汰されるだろう.生産量よりは生産性を強化しなければ生き残れない.その上で品質が良くなければならない.
企業が存在・存続を許されるのは,社会や顧客に必要なモノやサービスを供給できるからだ.そして社会や顧客から受け入れられる企業文化を持っていなければならない.
例えば社会に必要な電気を供給している会社が,地域住民の犠牲の上で発電をしているとすれば,存続が許されるはずはない.
企業文化とは,企業の「目的」と「ありよう」を定義するものだ.これが企業活動のぶれない軸となり,従業員の行動のよりどころとなる.

5Sで企業文化構築
経営理念に「顧客第一」「品質第一」と書いておいても,それだけでは文化にはならない.ただのスローガンだ.企業文化とは,従業員一人ひとりの行動規範の基となるものだ.
ある企業は,M&Aを繰り返して大きくなった.買収して傘下に納めた企業に,5S活動を導入している.これにより異なる企業文化を,一つに統一しようとしている.
別の企業は,日本国内,欧米,アジアに生産工場を展開している.グローバル生産工場のモノ造り文化を統一するために,各国の工場で5Sの指導を強化しようとしている.
二社とも日本を代表する大手企業だ.全員で5Sに取り組むことにより,それぞれの企業理念が実現可能となる.

企業文化は掃除から
まずは全員で取り組める掃除から始める.清掃の効能は,

  • 予防保全
    床や設備をぴかぴかにしておけば,油漏れ,水漏れにすぐに気が付く.拭き掃除そのものが点検作業だ.
  • 顧客,仲間への思いやり
    掃除をして店舗や職場を綺麗に保つことは,お客様や働く仲間への思いやりだ.
  • 躾け
    汚したら,汚した本人が綺麗にする.汚れる前に掃除をする.汚さないようにする.これは躾けに他ならない.

掃除をさせるのではない.掃除がしたくなるようする.言われてやるのと,自らやるのではモチベーションが違う.モチベーションが高ければ,工夫や改善が出てくる.
文化とは,その集団に属する人々の心から始まる.5S活動を通してその心を養う.製造業ばかりではなく,あらゆる産業で応用可能だ.


【今月の一言】
5S文化で一流企業

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年4月号に寄稿したコラムです.

#09:笑顔の効果

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
笑顔が心を変える.心が変われば行動が変わる.
行動が変われば結果が変わる.

東莞のある日系企業を訪問した時のことだ.多くの日系企業と同じように,従業員が来客に対して挨拶をしてくる.しかし何かが違う.とても清々しく,気持ちが良いのだ.暫くその理由が分からなかったが,工場内を案内されて原因が理解できた.
工場の壁には5Sの標語が掲示してあるが,整理・整頓・清掃.清潔.躾の外に「微笑(スマイル)」と書かれていた.これを見て気が付いた.受付の保安係をはじめとして,工場内で挨拶をしてくる従業員が,皆微笑んで挨拶をしていたのだ.
微笑みは人の心を明るくする.私が,この工場に足を一歩踏み入れた瞬間から,好印象を感じていたのは,従業員の微笑だったのだ.

笑顔は人のためならず
笑顔は来訪客のためではない.自分自身のためだ.幸福だからいつも笑顔でいられるわけではない.いつも笑顔でいるから幸福になるのだ.
笑顔がポジティブな心を作る.ネガティブな心理状態の時には,笑顔が出ない.しかしネガティブな時にこそ笑う.笑うことにより,心がポジティブになる.心がポジティブになれば,行動もポジティブになる.
笑うことにより,脳内が快楽物質で満たされる.人間の脳は非常に緻密で高度だが,騙されやすいというメカニズムがあるようだ.騙すとは人聞きが悪いが,言い換えれば,勘違いだ.自分が幸福だと勘違いしていれば,本当に幸福になる.この勘違いは,体内の免疫力も高めるらしい.よく笑う人ほど健康で長生きをする.
笑顔で人と接するということは,相手を受け入れるということだ.人は自分を受け入れてくれる人に心を開く.「笑顔で挨拶」が,信頼関係の基であり,コミュニケーションの基本だ.

笑顔の秘密は朝礼にあり
この工場は,「微笑」を5Sと一緒に企業文化の基礎としている.しかしこれは一夜にして出来上がった文化ではない.毎日の朝礼で,「笑顔で挨拶訓練」をしている.
外部委託をしている保安係も同様だ.彼らも朝礼で「笑顔で挨拶訓練」を繰り返している.企業文化に例外はない.全員参加だ.経営者も,経営幹部も笑顔で挨拶を率先実行する.
継続が習慣を生み出す.笑顔で挨拶と言う行動が,習慣となった時に,ぶれない企業文化となる.笑顔で人と接することにより,仲間を思いやるという行動様式が養われる.
モチベーションが高く,活性化した組織は,内部にたくさんのコミュニケーションが発生している.微笑がこのコミュニケーションを支えている.
リーダーの仕事は,望ましい文化が定着するように,仕組みと仕掛けを準備する.そしてそれを率先垂範実行することだ.
笑顔が毎日組織内にあふれる状況を作る.自分自身も笑顔でいる.困難な時こそ,リーダーは笑顔を絶やしてはいけない.リーダーが困った顔をしていると,組織も沈滞する.いつも笑顔でいるのは,一番高い給料を貰っているリーダーの責務だ.


【今月の一言】
笑顔が経営者の任務

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年3月号に寄稿したコラムです.

#08:躾は異次元

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
躾はまず挨拶.おはようございます,ありがとう,と言わせる.
言葉が変われば心が変わる.心が変われば行動が変わる.

5Sでの躾の定義は,人がきちんと決りを守るよう,よい習慣を身につけさせること.つまり人の行動規範を養うことだ.
日本人の行動規範には,「世間様に申し訳がない」と言う心理がある.躾により養われた「世間様」が日本人の道徳を支えている.
一方,欧米人は「神」が行動規範の根底にある.信仰が欧米人の道徳を支えている.その躾の中心となっているのは「神」であろう.
中国人の行動規範の根底にあるのは「世間様」でも「神」でもない.中国人の道徳を支えているのは「自分と家人の利益」のように見える.「家人」とは血縁,地縁でつながった人たちである.
では中国人に対する躾はどのように行われるべきか.「信仰」や「世間様」ではない.自分自身のため,仲間のためが中心となった躾だ.つまり,自己成長のため,仲間に迷惑をかけないための躾でなければ,理解しにくいだろう.

誰が躾をするのか
子供の躾をするのは両親.学生の躾をするのは教師.部下の躾をするのは上司だ.子供が自分自身で自分を躾るというのは考えにくい.子供は躾を守るもの.弟子が師匠の教えを守るのと同じだ.これは作法と言う.
5Sでは整理・整頓・清掃・清潔と並んで躾があるが,躾は次元が違う.新人には先輩が,部下には上司が躾をする.究極的には,躾をするのは社長だ.
家庭では,夫が妻に,妻は子供に,兄姉は弟妹に躾をすることにより,家風と言う行動規範ができ,代々受け継がれてゆく.
企業も同様にして,社長が原点となり,企業文化を築かなければならない.それが躾だ.

躾で行動開発
躾とは知識を与えることでも,能力を付けることでもない.好ましい行動を習慣にすることだ.
「おはよう」と言うことで,コミュニケーション行動も活発になる.「ありがとう」と言うことで,感謝の気持ちが生まれ,人に感謝される行動を起こそうとする.
挨拶をすることを,習熟していても何も始まらない.挨拶が出来るようになり,それが習慣となるまで躾ける.そしてそれが習性となれば,行動が起こる.
整理・整頓・清掃・清潔の4Sも同様に,まず習熟させる.どうやるかを教えるだけでは,足りない.なぜやるかを教える.なぜは「神様が見ているから」でもなく「世間様が見ているから」でもない.「自己成長のため」「仲間のため」だ.
毎日4Sをやれと大きな声を出すのが躾ではない.命令・服従型の推進では,士気は上がらない.
部下と一緒に整理・整頓・清掃をする.そしてそれらの問題点を改善する(清潔).上司の率先垂範が部下の士気を上げる.士気が上がれば,部下は自ら行動を起こす.
躾とは,相手の成長を願う思いやりと,模範を示すことだ.躾で部下の士気を上げ,自発行動により5SのPDCAがスパイラルアップする.


【今月の一言】
躾で5Sに仰角をつけよ!

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年2月号に寄稿したコラムです.

#07:5Sのスパイラルアップ

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
整理・整頓・清掃・清潔はPDCA

倉庫に物があふれてくると「整理しろ!」と号令をかける.職場が散らかってくると「整頓しろ!」と大きな声を出す.設備に埃や汚れが溜まってくると「清掃をしろ!」と叱る.
5Sを維持・継続するのは,疲れるものだ,と考えている経営者.5Sで重要なのは躾だ,毎日根気強く指導をしなければならない,と言う5S指導者.どちらも,まだ今一歩,5Sの理解が不足している.
先月号の本コラムを読まれた読者は,5Sの維持・継続のためには,「清潔」に力を掛ければよいのだと,気付かれたと思う.つまり,整理・整頓・清掃を維持・改善する仕組みが清潔だ.清潔をしっかりすれば,毎日大きな声を出さずとも済むはずだ.

PDCAと5S
過去5回のコラムにより,整理・整頓・清掃・清潔の単独での意味はご理解いただけたと思う.この整理・整頓・清掃・清潔を,プロジェクトの管理手法・PDCAと同様に,サイクルとして考えてみよう.
PDCAとは,まず計画を立てる(Plan),計画を実行する(Do),実行の成果をチェックする(Check),チェックの結果により改善する(Action),と言う一連のサイクルを何度も回してスパイラルアップすることである.
5SもこのPDCA手法と同じだ.整理によりまず要らないモノを捨てる.残した必要なモノは整頓により,決まった場所に,決まった数だけ置く.清掃により,整理・整頓がきちんと出来ていることを確認する.清潔により整理・整頓・清掃を改善する.この一連のサイクルを何度も回し,管理レベルをスパイラルアップさせるのが5S活動だ.

5Sのスパイラルアップ
まず要らないモノを整理する.要らないモノがたくさんあれば,要らないモノまで整頓しなければならなくなる.モノがたくさんあれば,清掃が行き届かなくなる.
要らないモノを捨てると言うことは,必要なモノだけをしっかり管理するための計画ともいえるだろう.
そして必要なモノを効率よく運用するために,整頓を実行する.
つまり必要なモノが,必要な時に,必要な場所で,すぐ手元に来るようにしておくことが,整頓を実行すると言うことだ.
整理・整頓の結果は,毎日の清掃でチェックする.
清掃の結果見つかった整理・整頓の問題,清掃自身の問題を,改善するのが清潔だ.こうして一巡したサイクルは,更に必要なモノ・不要なモノを峻別し,整理・整頓・清掃・清潔のサイクルを再び回し,スパイラルアップされる.
ところで,PDCAの中に5番目のS・躾が出てきていない.躾の役割は,整理・整頓・清掃・清潔のスパイラルアップに仰角をつけることだ.
詳しくは次回のコラムで.

【今月の一言】
5SのPDCAを回せ!

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年1月号に寄稿したコラムです.

#06:清潔の本当の意味とは

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
通常「清潔」という言葉は,清潔な身なりとか清潔な人柄という意味で使われる.しかし5Sで清潔という場合は,意味が違う.

5Sにおける清潔の本当の意味は,整理・整頓・清掃の状態を維持改善することだ.
もちろん清潔な身なりも重要だ.着衣の乱れは心の乱れ.心が乱れると,行動も乱れる.
以前スノーボードのオリンピック選手の着衣がだらしないと,世論に叩かれたことがある.しかしこれは原則の違いだ.だらしないと批判した世代の原則は,ここぞという時には,グイッとズボンを引き上げて気合を入れる.一方スノーボード選手の原則は,気合を入れる時に,グイッとズボンを引き下げる.異なる原則を無理に押し付けてもうまくはゆかない.
しかしクリーンルーム内では,防塵着の着用が乱れると,クリーン度の低下を招く.これは原理だ.原理は価値観が異なっても守らねばならない.
いずれにせよ,清潔な身なりは,「躾」「作法」と考えた方が良い.5Sの清潔にはもっと重要な役割があるからだ.

清潔の役割
整理とは,要らないモノを捨てること.要らないモノが発生する原因を突き止め,整理をしなくても良くすることが清潔だ.
整頓とは,モノが乱れないようにすること.モノが乱れる原因を突き止め,整頓しなくても良くすることが清潔だ.
清掃とは,汚れを綺麗にすること.汚れが発生する原因を突き止め,清掃しなくても良くすることが清潔だ.
毎日30分かけて清掃するのは,時間の無駄だ.昨日30分かかっていたのを明日は20分で出来るようにする.この改善が清潔である.
ファーストフード店のテーブルには,足が1本しかないのにお気づきだろうか?四本足では,足を拭き掃除する時に4倍の時間がかかるからだ.こういう工夫をすることが清潔なのだ.

清潔は5Sの継続エンジン
5Sが維持できないという悩みを良く聞く.その最大の原因が,清潔を理解していないからだと考えている.
毎日整理・整頓・清掃を維持するために,与えられた作業を繰り返す.自主性もなく,意欲も湧かない.達成感も得られないだろう.
例えば完成品倉庫に完成品が増えてくる.倉庫が狭くなり,整理をしなければなくなる.これは意欲の湧く仕事ではない.特に経営者にとっては苦痛を伴う仕事だ.
完成品が倉庫に増えるのは,出荷量より多く作るのが原因だ.更にそこには,不良が多いので,余分に生産投入する,段取り換えに手間がかかるので,生産効率を上げるためにまとめ造りをする,などの真因があるはずだ.
これらの問題を解決して,出荷量と同じだけ作れるように改善する.改善の仕事は,自主性に富み,意欲が湧く.達成感も大きい.
こういう取り組みこそが,本来の5Sの仕事だ.表面的な5Sに終始していては,このような成果は得られない.業績に貢献するからこそ,経営者も,従業員も5Sに対する意欲が湧き,継続できる.

【今月の一言】
清潔とは継続エンジンなり

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年12月号に寄稿したコラムです.

#05:雨の日も屋外ベンチに雑巾がけをする理由わけ

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
東京ディズニーランドでは,雨の日にも屋外ベンチに雑巾がけをしている.その理由わけは?

夢と魔法の王国・東京ディズニーランドには,ゴミひとつ落ちていない.園内では,カストーディアルと呼ばれる清掃スタッフが活躍している.
彼らの清掃作業は,マニュアルによって標準化されている.屋外のベンチは雑巾で拭き掃除をする.これは雨の日でも行われる.
雨の日には,屋外のベンチを利用するゲストはいない.それでも雑巾がけをするのは,意味がある.
雑巾がけにより,ベンチにガタが無いか,座面にささくれが無いか,点検確認をしているのだ.
一つ一つの作業が,全てはゲストの感動のために,という東京ディズニーランドのポリシーに基づいて成り立っている.これを理解しているカストーディアルたちは,アルバイトといえ立派な戦力として清掃作業に取り組んでいる.

一滴の油漏れを知る
職場が綺麗に清掃されていると,職員の気持ちが晴れやかになる.気持ちが晴れやかになれば,行動が溌溂とする.結果として生産性も上がる.
汚れた生産現場では,製品も汚れる可能性がある.外観不良が多発し,検査をかいくぐり不良を出荷してしまうこともありうる.
床にゴミや部品が落ちている工場では,不良が多発しているはずだ.床が綺麗に清掃されていれば,ネジが一本落ちていても即座に気が付く.気が付かなければ,ネジ締めを忘れた製品がそのまま次工程に行ってしまう.
油にまみれた生産設備では,油漏れが発生していても分からない.生産設備をピカピカに磨いておけば,一滴の油漏れでもすぐに気が付く.ちょっとした油漏れを放置しておけば,重大な故障に至ることもある.
床を綺麗にしておけば,一適の水滴でもすぐ気が付く.雨漏りもすぐに処置をしておけば,大事にはならない.

清掃の基準を明確に
会議室のホワイトボード.拭き掃除をしてあるようだが,前に書いた文字が残っている.気分が悪いだけではない.前の文字が気になり会議に集中できない.文字が不鮮明で,議事の内容を間違うこともありうる.ホワイトボードの清掃が行き届いていないと,生産性,品質にも影響を与える.
しかし毎回一時間かけて,真っ白になるまで拭き上げたのでは,時間の無駄だ.どこまで綺麗にしなければならないのか基準を明確にしなければならない.
そして,清掃の方法を明確にする.汚れた黒板消しを使うと,拭けば拭くほど汚れる.どのように清掃すれば効率よく,綺麗にできるのか決めておく必要がある.
ある社長さんと応接室で打ち合わせをしていた時のことだ.会議室の隅が汚れていることに気が付いた彼は,すぐに総務の担当者と掃除係のおばさんを呼んだ.そして自分で,モップを使い綺麗にして見せた.これで清掃の基準と,方法を教えた事になる.これが標準となるような仕掛けを用意しておけば良いのだ.

【今月の一言】
清掃とは予防保全なり

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年11月号に寄稿したコラムです.

#06:清潔の本当の意味とは

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
通常「清潔」という言葉は,清潔な身なりとか清潔な人柄という意味で使われる.しかし5Sで清潔という場合は,意味が違う.

5Sにおける清潔の本当の意味は,整理・整頓・清掃の状態を維持改善することだ.
もちろん清潔な身なりも重要だ.着衣の乱れは心の乱れ.心が乱れると,行動も乱れる.
以前スノーボードのオリンピック選手の着衣がだらしないと,世論に叩かれたことがある.しかしこれは原則の違いだ.だらしないと批判した世代の原則は,ここぞという時には,グイッとズボンを引き上げて気合を入れる.一方スノーボード選手の原則は,気合を入れる時に,グイッとズボンを引き下げる.異なる原則を無理に押し付けてもうまくはゆかない.
しかしクリーンルーム内では,防塵着の着用が乱れると,クリーン度の低下を招く.これは原理だ.原理は価値観が異なっても守らねばならない.
いずれにせよ,清潔な身なりは,「躾」「作法」と考えた方が良い.5Sの清潔にはもっと重要な役割があるからだ.

清潔の役割
整理とは,要らないモノを捨てること.要らないモノが発生する原因を突き止め,整理をしなくても良くすることが清潔だ.
整頓とは,モノが乱れないようにすること.モノが乱れる原因を突き止め,整頓しなくても良くすることが清潔だ.
清掃とは,汚れを綺麗にすること.汚れが発生する原因を突き止め,清掃しなくても良くすることが清潔だ.
毎日30分かけて清掃するのは,時間の無駄だ.昨日30分かかっていたのを明日は20分で出来るようにする.この改善が清潔である.
ファーストフード店のテーブルには,足が1本しかないのにお気づきだろうか?四本足では,足を拭き掃除する時に4倍の時間がかかるからだ.こういう工夫をすることが清潔なのだ.

清潔は5Sの継続エンジン
5Sが維持できないという悩みを良く聞く.その最大の原因が,清潔を理解していないからだと考えている.
毎日整理・整頓・清掃を維持するために,与えられた作業を繰り返す.自主性もなく,意欲も湧かない.達成感も得られないだろう.
例えば完成品倉庫に完成品が増えてくる.倉庫が狭くなり,整理をしなければなくなる.これは意欲の湧く仕事ではない.特に経営者にとっては苦痛を伴う仕事だ.
完成品が倉庫に増えるのは,出荷量より多く作るのが原因だ.更にそこには,不良が多いので,余分に生産投入する,段取り換えに手間がかかるので,生産効率を上げるためにまとめ造りをする,などの真因があるはずだ.
これらの問題を解決して,出荷量と同じだけ作れるように改善する.改善の仕事は,自主性に富み,意欲が湧く.達成感も大きい.
こういう取り組みこそが,本来の5Sの仕事だ.表面的な5Sに終始していては,このような成果は得られない.業績に貢献するからこそ,経営者も,従業員も5Sに対する意欲が湧き,継続できる.

【今月の一言】
清潔とは継続エンジンなり

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年12月号に寄稿したコラムです.

#04:整理・整頓の対象は物だけではない

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5Sの騎士ドン・キホーテの如く
整理・整頓しなければならないのは物だけではない。
時間、方法、戦略など物以外も整理。整頓の対象となる。

前回までのコラムで整理と整頓の説明をした。整理とは必要なモノと不要なモノを区別し、不要なモノを捨てること。整頓とは、決まったモノを決まった場所に、決まった量だけ、表示をして置くこと。以上が整理・整頓の定義だ。
ここで「物」ではなく「モノ」と表記している点にご注意いただきたい。整理・整頓の対象が「物」だけではないので「モノ」と表記している。ここでいう「モノ」とは、製品、部材、サービス、人、時間、技術、方法、情報、資金など、顧客に価値を提供するために必要なすべてのモノである。

時間を整理・整頓
一日の仕事をしている時間は、作業をしている時間とムダな時間に分けることができる。ムダな時間とは作業をしていない時間。次の作業に取り掛かるまでの空き時間、ボーっとしている時間のことだ。この時間が整理の対象である。
更に作業をしている時間は、顧客に提供する付加価値を生む時間と。付加価値を生まない時間に分けられる。
つまり、段取り換えなどの準備は、必要な作業ではあるが、顧客に提供する付加価値は生んでいない。会議の準備、企画のアイディア出しなどが、必要だが付加価値を生んでいない作業だ。
しかし、この必要だが付加価値を生んでいない作業が、仕事の出来栄えを決定する。従ってこの時間は捨ててしまうわけには行かない。効率を上げなければならない。
効率を上げるためには、現状と理想状態を見える化する必要がある。ここで整頓の登場だ。
例えば、企画を検討しているのか、それともぼんやりタバコを吸っているのか、分かるようにする。つまり「考える」ことに行き詰まって「悩んでいる」状態にならないようにすればよいのだ。
生産現場も同様だ。未検査品と検査済み品の区別はつかない。整頓により、未検査品と検査済み品の置き場所を明確にすることで、区別がつくようになる。

戦略とは捨てること
かのピーター・ドラッカーは「改革の戦略とは捨てることなり」と言い切っている。改革する組織は、明日のために昨日をも捨てる。陳腐化した方法、過去の栄光など、改革に不要なモノは捨てる。5S で言えば整理だ。
捨てるためには、必要なモノと不要なモノが常に見えるようになっていなければならない。それが整頓である。
必要な作業と不要な作業を区別して、不要な作業を整理する。そのためには、作業がどうあるべきか整頓しておく必要がある。何を、どんな方法で、どんな道具を使って、どれだけの時間で、どのようにするのか、明確にしなければならない。作業の標準化である。
必要な事業と不要な事業を区別して、不要な事業は整理する。そのためには、それぞれのビジネスの状態を整頓し、見える化が出来ていなければ判断は出来ない。
同様に経営理念、経営ビジョンも整理・整頓をする。

【今月の一言】
経営とは整理・整頓なり

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年10月号に寄稿したコラムです.