倉庫に物があふれてくると「整理しろ!」と号令をかける.職場が散らかってくると「整頓しろ!」と大きな声を出す.設備に埃や汚れが溜まってくると「清掃をしろ!」と叱る.
5Sを維持・継続するのは,疲れるものだ,と考えている経営者.5Sで重要なのは躾だ,毎日根気強く指導をしなければならない,と言う5S指導者.どちらも,まだ今一歩,5Sの理解が不足している.
先月号の本コラムを読まれた読者は,5Sの維持・継続のためには,「清潔」に力を掛ければよいのだと,気付かれたと思う.つまり,整理・整頓・清掃を維持・改善する仕組みが清潔だ.清潔をしっかりすれば,毎日大きな声を出さずとも済むはずだ.
PDCAと5S
過去5回のコラムにより,整理・整頓・清掃・清潔の単独での意味はご理解いただけたと思う.この整理・整頓・清掃・清潔を,プロジェクトの管理手法・PDCAと同様に,サイクルとして考えてみよう.
PDCAとは,まず計画を立てる(Plan),計画を実行する(Do),実行の成果をチェックする(Check),チェックの結果により改善する(Action),と言う一連のサイクルを何度も回してスパイラルアップすることである.
5SもこのPDCA手法と同じだ.整理によりまず要らないモノを捨てる.残した必要なモノは整頓により,決まった場所に,決まった数だけ置く.清掃により,整理・整頓がきちんと出来ていることを確認する.清潔により整理・整頓・清掃を改善する.この一連のサイクルを何度も回し,管理レベルをスパイラルアップさせるのが5S活動だ.
5Sのスパイラルアップ
まず要らないモノを整理する.要らないモノがたくさんあれば,要らないモノまで整頓しなければならなくなる.モノがたくさんあれば,清掃が行き届かなくなる.
要らないモノを捨てると言うことは,必要なモノだけをしっかり管理するための計画ともいえるだろう.
そして必要なモノを効率よく運用するために,整頓を実行する.
つまり必要なモノが,必要な時に,必要な場所で,すぐ手元に来るようにしておくことが,整頓を実行すると言うことだ.
整理・整頓の結果は,毎日の清掃でチェックする.
清掃の結果見つかった整理・整頓の問題,清掃自身の問題を,改善するのが清潔だ.こうして一巡したサイクルは,更に必要なモノ・不要なモノを峻別し,整理・整頓・清掃・清潔のサイクルを再び回し,スパイラルアップされる.
ところで,PDCAの中に5番目のS・躾が出てきていない.躾の役割は,整理・整頓・清掃・清潔のスパイラルアップに仰角をつけることだ.
詳しくは次回のコラムで.
5SのPDCAを回せ!
こちらもご参考に。
5S実践研修
本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年1月号に寄稿したコラムです.