月別アーカイブ: 2018年10月

JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝

JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝

 衆院国土交通委員会は22日、JR北海道の一連の不祥事を追及するため同社の野島誠社長らを参考人として招き、集中審議を開いた。野島社長は函館保線管理室など9部署でレールの検査データの改ざんがあったことを明らかにした。改ざんが全社的に行われていた疑いが強まった。

 野島社長は冒頭、「国民の多くに多大な迷惑をかけ、おわびします」と陳謝。「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べた。委員からは安全意識の欠如や内部統制の不備を指摘する声が続出し、野島社長は「反省している」と繰り返した。

 JR北海道でレールを点検・補修する保線部署は44カ所あり、これまでに函館保線管理室で検査データの改ざんがあったことが判明していた。

 野島社長は答弁で、新たに8つの保線管理室で改ざんが見つかったことを認め、改ざんの背景には「業務の集中や若手社員の技術不足など様々な問題が絡んでいる」との認識を示した。ただ、動機や組織性は「調査中」と述べるにとどめ、詳細な答弁は避けた。

 同社には経営幹部らが輸送の安全確保を議論する「安全推進委員会」がある。野島社長は「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と述べ、委員会が機能していなかったことを認めた。また、2011年の石勝線の脱線・火災事故を受け安全基本計画を策定した後もトラブルが多発したことには「計画を実行に移したが、スピードが足りなかった」と釈明した。

 同社では9月の国交省の特別保安監査で270カ所でレール異常の放置が発覚。追加監査も踏まえ、同省は2回の改善指示を出した。今月には監査の前に一部現場でレール検査データを改ざんしていたことが発覚し、同省は現在3回目の監査に入っている。

 JR北海道の経営陣が一連の問題で国会に呼ばれるのは初めて。国交省によると、JR幹部の国会招致は05年のJR福知山線脱線事故で、当時のJR西日本社長を呼んで以来。

 太田昭宏国土交通相は22日午前の閣議後の記者会見で「(参考人招致で)JR北海道が率直な報告をすることを期待している」と話した。

(日本経済新聞・電子版より)

 新聞記事だけで判断するのは公平性に欠けるが、野島JR北海道社長の衆院参考人質疑の応答はちょっとお粗末だと思う。

「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べただけでは誰も安心出来ないし、問題の再発が防止出来ると言う確信も持てない。組織のトップが先頭に立って再発防止をするのは当たり前だ。「反省している」では無く、どのような対策を打つのかを明確にする必要がある。

原因の特定も出来ていないようでは、有効な対策など期待出来ない。
「安全推進委員会」が「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と言うのでは、何のための安全推進委員会なのか分からない。トラブル報告一つずつに、きちんと有効な再発防止が出来ている事を確かめて初めて安全推進委員会と言える。
この様な発言をすると言う事は、野島社長は安全推進委員会に出席していたのだろうかと言う疑念も出て来る。安全は経営のトップに掲げて達成しなければならない目的のはずだ。一番優先順位の高いはずの会議に経営トップが出席していないと言う事は、「安全第一」はただのお題目だと、従業員は理解するだろう。

このような問題は、工場の中でもしばしば発生している。
あなたも社内を見直してみてはいかがだろうか。問題が発生してからでは遅いのだ。

私が指導して来た中国工場の現場でも、データの改ざんはしばしばあった。
実例を紹介しよう。

  • 受け入れ検査の偽造
    板金部品の受け入れ検査記録を見てみると、いわゆるAQL検査による抜き取り検査をしているはずだが、各ロット2個分のデータしか記録されていない。
    作業員に理由を聞いてみると、記録用紙に抜き取りサンプルのデータを書くスペースが無いので、代表値(最初のサンプルと最後のサンプル)だけを記録していると言う。
    その説明を聞いて気が付いたが、作業員一人で検査出来る物量以上のサンプルを検査しなければならない様になっていた。作業員は、AQL基準には従わず、各ロット2個だけ検査して作業を間に合わせていた。
  • IPQC(工程内検査)の検査データ捏造
    IPQCは2時間ごとに、半田ごての温度、絶縁抵抗を測定することになっていた。
    しかし現場に巡回して来たIPQC検査員は、絶縁抵抗測定器を持っておらず、全て10MΩ以上と記入していた。検査員に理由を問いただすと、自分が使っている絶縁抵抗計が壊れ修理中だと言う。
  • 安全規定の非遵守
    工程内検査で絶縁耐圧検査(3000Vを印可する検査)は安全のためゴム手袋を着用して作業をする規定になっている。しかし検査作業員は顧客監査時以外は誰もゴム手袋を着用していない。それでも作業チェックリストにはゴム手袋着用の欄にレ点が入っている。
    これは作業員に聞いてみるまでもない、夏期にゴム手袋をして作業をすれば、5分もしないうちに手袋の中は汗まみれとなり、気持ち悪くて作業どころではない。

これらの「不正」に対しどのような対策を打ったら良いだろうか?
「従業員の品質意識を高め、再発防止に努めます」と言う対策で、再発しないと確信出来るだろうか?

勿論従業員の品質意識を高める事は必要だ。しかしこれらの問題は、品質意識が低いから発生したのではない。ちゃんと理由がある。
・時間が足りない
・必要な測定器がない
・汗で気持ちが悪い
これらの理由に対して、きちんと対策を打たねば必ず再発する。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

免震データ改ざん問題

東洋ゴム社長、月内にも「経営責任含め再発防止策」免震データ改ざん問題で衆院参考人招致

 東洋ゴム工業(大阪市)が免震装置に使うゴムの性能データを改ざんしていた問題で、衆院国土交通委員会は8日、同社の山本卓司社長らを参考人招致し、集中審議した。山本社長は再発防止策について、外部に依頼した調査結果を5月中旬にも受け取った後、「経営責任の明確化も含め1~2週間で取りまとめたい」と述べた。自身の進退についても検討する考えを示した。

 同委員会は開発担当の社員が不正に関わった経緯や、性能不足の免震ゴムを製造・出荷し続けた社内の品質管理などについて追及。山本社長は「建物の所有者ら国民の皆様に大変な心配とご迷惑をおかけした。おわび申し上げる」と改めて陳謝し、「企業風土の体質まで踏み込み、会社を立て直すという意欲で取り組みたい」と述べた。

全文

(日本経済新聞電子版より)

 中国で発生した四川汶川大地震の時は、学校が倒壊し多くの子供達が犠牲となった。日本の東日本大地震では被災者が学校で避難生活をしているのをTVで見た中国人達は、日本の耐震建築技術が高いのを羨んでいた。
台湾中部大地震後は、日本の制震・免震技術を導入する建物が増えたと聞く。
「地震大国」日本の技術は各国から尊敬を集めていたのだが、今回の事件で信頼を失ってしまったかも知れない。

今回は製品認可を受ける時に提出したデータに改竄が有った様だ。
同様な問題は、自動車のリコール隠しから期限切れ食材の使用まで色々な業界で発生して来た。そして多分全てのケースで、問題は明るみとなり、企業責任を追及されることになった。

実際には、我々が見聞きしている問題は氷山の一角だけなのかも知れないが、不正を隠したまま経営が繁盛する事はあり得ない。経営者にも従業員にも良心が有り、その後も清々と事業が発展して行く事は無いだろう。

安全、品質に優先する経営指標などは無い。
品質部門の責任者は、経営者と刺し違えても品質を守るくらいの気概が必要だ。

私は前職時代に品質保証部門長をしていた。
品質部長には、品質に疑義があれば出荷を停める権限が有り、それを覆せるのは事業部長だけだった。
当時の会社を今でも誇りに思っているが、全社員が品質に対して真摯な姿勢を持っていた。

当時、新製品の第一ロット生産の後に「出荷判定会議」を実施していた。
この会議の目的は、初回量産の出来映えから継続的に生産が可能かどうか、品質保証が可能かを判定する事に有る。

品質保証部長は、出荷判定を合格とし初期流動管理のフェイズに移行するか、又は不合格とし初回出荷を停めるかの二者択一の判断をしなければならない。
この出荷判定会議で、私は一度だけ出荷停止をしたことがある。
直行率(全ての工程内検査を一発で合格する率)が99.3%であり、合格基準を満たしていたが、0.7%の不良が全て同じ部品の同じモードの不良だった。

出荷判定不合格とし、翌日の初回出荷を停止した。そしてその足でお客様の工場に出向き事情を説明した。お客様に迷惑をかけられないので、該当部品は全てセカンドソース品と交換して再検査し出荷の準備を整えていた。
当然叱られる事は覚悟していた。しかしここまで説明し終えたら、お客様から「良くやった」と褒められた。

その後、部品メーカから不良解析報告があり、不良のトランジスターは設備の不調により、チップがリードフレームにきちんとボンディングされていない物が混入していたと言うロット不良だった。

このトランジスターは、製品の過電流保護回路に使用しており、我々の製品検査合格品の中にも不良のトランジスターは混入しており、環境温度によっては、早めに保護回路が働いてしまうことになる。
安全上は問題ないが、エンドユーザから見ると夏場に空調が壊れたオフィスで製品を長期間稼働させた時に、突然電源が切れた様な動作をすることになる。

出荷判定時には、不良原因もリスクの大きさも不確かだったが、私の出荷停止判断に異を唱える者は一人もいなかった。一番出荷したいはずの工場長も私の判断を支持してくれた。

この愚直さが品質を保証する者の姿勢だと思う。
どうせデータを少しくらい改竄した所で分からないだろう。
少しくらい賞味期限が過ぎていても味は変わらないだろう。
と言う考え方は、絶対に上手く行かない。
お客様は騙せるかも知れないが、自分は騙せないからだ。


このコラムは、2015年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第423号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

仁者安仁,知者利仁。

yuē:“rénzhějiǔchǔyuēchángchǔrénzhěānrénzhìzhěrén。”

《论语 里仁第四-2》

(注)约:贫困

素読文:
子曰わく、不仁者ふじんしゃもっひさしくやくからず。もっながらくからず。仁者じんしゃじんやすんじしゃじんす。

解釈:
孔子曰く:“仁の徳なき者は貧しい苦しさに長くは耐えられない。また長く安楽の境地におられない。仁の徳ある者は心安らかであり、知ある者は仁を生かすことができる。

新幹線緊急停車、1人けが 時速285キロ、部品落ち停電

新幹線緊急停車、1人けが 時速285キロ、部品落ち停電 福岡

 山陽新幹線の小倉(北九州市小倉北区)─博多(福岡市博多区)間で8日、停電が起きて列車が緊急停車し、乗客1人がけがをする事故があり、福岡県警は9日、業務上過失傷害容疑での立件も視野に、車両を実況見分した。JR西日本によると、停電の原因は車両から落下した部品が架線に接近してショートしたためで、部品の固定が不十分だった可能性があるという。

(以下略)

(朝日新聞電子版より)

 事故車輛の写真を見ると、落下した部品が窓のすぐそばにぶつかっている。少し間違えば、落下部品は窓を直撃し乗客に大怪我をさせたかもしれない。

落下した部品は車輛下側に取り付けられたアルミ製カバーの一部。車輛下部のモーターやブレーキを守るため車輛下側を覆っている。カバーが外れ、風圧で車体にぶつかりながら送電線まで舞い上がった様だ。

カバーはネジ2本で固定する構造になっており、ネジは見つかっていない。となりのカバーのネジも1本なくなっており、1本は緩んでいたと言う。

保守点検作業に何らかのミスが有ったのかもしれない。JR北海道では点検作業データ捏造事件が昨年発覚しており、JRの保守点検作業に対する信頼感が揺らぐ事故だ。

事故後の調査で、事故車輛は試験走行に使っている事が判明している。
試験走行後に行われた確認作業でカバーを外し、それが正規の手順で復旧確認されなかったのではないだろうか?

実は工場でも同様の事故はしばしば発生している。
工程内不良品を、班長が修理し正規の工程を通さずに、直接梱包工程に戻した。
開発部門が手造りした、エンジニアリングサンプルをそのまま顧客に出荷した。

上述の2例共に、工程内でQA検査をすると言う正規の手順を外れたため、顧客に不適合品を流出させることになる。

この不適合品の流出は、手順の不適合だけでは発生しない。修理品、サンプルに不適合がなければ何事も起きない。従って手順に不適合が発生していても気が付いていない場合もありうる。

非定常作業にその様な潜在リスクが有る。
対策は「非定常作業を定常作業化する」ことだ。逆説的な言い方だが、例外的作業にリスクが有るので、例外作業を正規作業に乗る様にルール化すれば良いのだ。

工程内不良を修理した場合、再投入する工程を決めておき、工程内QA検査を通る様にする。
顧客に出荷する製品はサンプルと言えど、製造部門で製造する。
この様にルール化しておけば、正常に生産した製品と同等の検査が行われる事になる。


このコラムは、2015年8月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第437号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

続・四川航空機事故

 先週のメルマガで四川航空機の緊急着陸事故をお知らせした。概要は以下のとおり。

中国・重慶からチベット自治区ラサに向かっていた四川航空エアバスA319型機(乗客・乗員計128人)が、高度約10,000m上空を飛行中に操縦室の窓が突然、破損して脱落。副操縦士が外に吸い出されそうになり、成都・双流国際空港に緊急着陸。副操縦士と女性乗務員が軽い怪我、乗客に負傷者なし。

まだ事故原因となった窓ガラス脱落の原因は発表になっていない。先週私はメンテナンス時の問題を推定した。その後のニュースによると、事故機体は11年に同航空が導入。飛行時間はのべ1万9912時間で、落下した窓ガラス周辺を含め、最近15日間に修理した記録はなかったという。それでもメンテナンス時の作業ミスの可能性は残っているだろう。

今回再び取り上げたのは、以下のような記事を見かけたからだ。
米華字メディア『多維新聞』は以下のように指摘している。

“ネット上ではこの出来事を「中国版ハドソン川の奇跡」と称し、乗客乗員の命を守った機長に対する絶賛の嵐が吹き荒れていると紹介。そのうえで「よくよく考えると、恐ろしい。最近の飛行機は手動操縦の機会が少なくなっているからだ。もし機長に空軍での操縦経験がなかったら、大惨事になっていたかもしれない。事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよとの冷静な声は、ネットユーザーの大絶賛の前に隠れてしまっている」と指摘している。”

『多維新聞』は反政府系のメディアなのだろうか(笑)
ネットでの大絶賛が、真の原因追求を阻害している。そしてそれを演出しているのが政府筋だとすると、私が期待する原因調査の公開はないのかも知れない。

しかし上記の記事には承服しかねる。
「事故の原因を究明し、四川航空の責任を追及せよ」というのが冷静な声だとしているが、事故原因がまだ判明していないのに「四川航空の責任を追及」という言葉が出てくるのが奇異だ。こういう声が冷静だとは思えない。事故原因の究明は、事故原因の責任主体を明らかにすることも含まれる。その責任主体をあらかじめ明示して事故原因究明を行う、という点に全く承服できない。

大げさに言えば「魔女狩り」だ。あいつは魔女だ、と決めて証拠を集める。
こういう手法では、有効な再発防止を考えることは不可能だ。

同様に「事故機は天津の工場で組み立てられた」という意見(真実かどうか判定できないので「意見」と表記する)も、原因分析にバイアスをかける作用を持つ。

原因分析に対して、なんら仮説を持たずに立ち向かうことはなかろう。しかしその仮説が「漏れなくダブりなく」で列挙されており、事実に基づいて採否を判断しなければならない。

私たちの製造現場で起きている問題の原因分析や、改善活動の現状把握も同様だ。予断を持って事に当たれば正しい判断や分析はできない。


このコラムは、2018年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第673号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

四川航空機事故

 

「中国機、1万メートル上空で窓脱落 体の半分が外に」

 中国メディアによると、中国・重慶からチベット自治区ラサに向かっていた四川航空のエアバスA319型機(乗客・乗員計128人)が14日、成都に緊急着陸した。高度約9800メートルの上空を飛行中に操縦室の窓が突然、破損して脱落。副操縦士が外に吸い出されそうになり、操縦室内の気温も零下20~30度に急低下したという。

 中国メディアの取材に応じた機長の話によると、窓が割れたのは成都まで100~150キロの地点。副操縦士の体の半分が操縦室の外に吸い出されたが、シートベルトをしていたため、転落せずに済んだ。副操縦士は顔と腰を負傷した。

全文

(朝日デジタル)

 重慶や四川の中国企業の指導で四川航空は何度か利用したことがある。他人ごとではない事故だ。
5月14日に発生した事故なので、まだ事故原因などの発表はない。

最近同種の事故が発生している。
「女性の上半身が機外に、乗客ら引っ張り戻す 米国機事故」

こちらの事故は、1万m上空を航行中のノースウェスト機で客席の窓が割れ女性乗客が吸い出され死亡している。国家運輸安全委員会(NTSB)が調査中だが、エンジンが金属疲労を起こしていた可能性が指摘されている。

四川航空機の場合は操縦席の窓が破損しているので、ノースウェスト機の事故とは違う原因だろう。また1万m上空を航行中だったので、バードストライクも考えにくい。

過去の同様事故を探してみると、1990年6月10日に発生したブリティッシュ・エアウェイズで操縦席の窓が割れ機長が機外に吸い出された事故があった。
この時の事故は、メンテナンス時に規格外のネジ(正規品より短い)で窓枠を固定したことが原因だった。

航空機事故の事故原因は「メンテナンス」に関連するものが多いという印象がある。上記米、英の事例も、御巣鷹山の事故もメンテナンスの問題だった。

我々製造業もメンテナンス直後の事故(災害だけでなく不良発生も含む)発生事例は多くある。この機会にメンテナンス手順、実際の作業、記録方法などを見直してはいかがだろうか。

今回の四川航空機事故は、中国民用航空局が事故原因調査をすると思われる。
公正な調査が行われ、原因が公表されることを期待したい。


このコラムは、2018年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第670号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

改善と改革

 先週のメルマガで、ワインバーグの言葉を紹介した。
今週ももう一つ別の言葉を紹介したい。

「複雑なシステムは選択的に改造するより、破壊する方が楽だ」

参考:「ワインバーグの文章読本」

ワインバーグはシステムエンジニアなので、彼のこの言葉はシステム開発・メンテナンスに当てはめて考えるとすんなり理解できる。

膨大なシステムソフトを小改造することは困難だ。その改造が全体にどのように影響を与えるか、全て洗い出し、悪影響を与えないように改造しなければならない。ならばいっそ捨ててしまえ。というのが本日紹介した言葉の真意だろう(笑)

さすがに破壊したり、捨ててしまうことはできないだろうが、この思いは素人の私にも理解できる。サーバ・クライアント型やアプレト型のシステムが基幹ソフトにも入り込んできたのは、システムソフト業界のジレンマから来るのだろう。

同じことが生産現場の改善にも言えるだろうか?
選択的に改善がうまくゆかないから破壊する、というのは同様に無理だろう。
「選択的改善」がうまくゆかないのは、ソフトウェアの世界と比較すれば、単純だ。全体を見ずに部分を選択的に改善するからうまくいかない。
例えば10人で1時間に100台のサブユニットを生産しているラインの生産能力を10人で1時間120台に改善する。これが改善かどうかは、後工程の生産能力と需要に依存する。

後工程が1時間に100台しか生産できないのならば、10人で1時間に120個生産するのは改善ではない。8人で1時間に100個生産できるようにした方が良い。

改善はどこまで行っても改善であり、改革には至らない。生産改善でよく耳にする言葉だ。改善で20%、30%の効率を上げるより、どんと設備投資をして20倍、30倍の改革を目指したい。そんな要求は理解できるが、需要がないのに生産量を上げても意味はない。

コストを下げるためにたくさん造る。
大量生産により貧乏も大量に生産してしまった。20世紀に犯した我々の蹉跌はここにあるのではなかろうか?

いきなり設備投資で改革を目指すのではなく。金をかけずに改善を繰り返す。
改善をすることにより、見える世界が変わるはずだ。改善を繰り返し成長した視点で設備を検討すれば、より効率の良い設備が設計できるはずだ。


このコラムは、2018年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第675号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

TMP

 このメルマガで「TMP」について書いたことが何度かある。ご記憶の方もあるだろう。念のため再度説明すると「TPM」とはTPM(トータル・プロダクティブ・メインテナンス)のことではない。トータル丸パクリを略して「TMP」と言っている。

他人様のやっていることを丸パクリしよう、と肯定的に使っている。人真似はよくないという風潮があるが、まずは他所でうまく行っている方法をそのまま真似てみる。やって見た上で、自分たちに合うように改善すればよい。
何もしないうちから、できない理由を並べ立てても何も進歩はない。まず真似て、独自のモノを作り上げればよい。そんな考えが「TMP」だ。

今読んでいる文章術の本にこんな言葉が出てきた。
「一箇所から盗めば盗作。いろいろなところから盗めば情報収集」
著者のワインバーグ氏は、石ころをたくさん集めて壁を作るようにして文章を作れと言っている。それでは文章の創作ではなく、文章の盗作ではないか、という読者の疑念に対し先手を打った言葉だ。

参考:「ワインバーグの文章読本」

一冊の書籍、一編の詩歌から石ころ(言葉)を集めて文章創作をすれば盗作。
多くの書籍、多くの詩歌から石ころ(言葉)を集めるのは情報収集である、という主張だ。
ちなみに上記のワインバーグ氏の文章は、ちゃんと出所を記してあるので、盗作ではなく引用だ。

「TMP」に抵抗がある方のために我々業界には都合の良い言葉がある。「ベストプラクティス」と言えば耳障りは良い。しかしやることは「TMP」と同じだ。

全く同じ言葉を使っても文章を書くことができる。盗作かどうかは類似点の全体に対する割合により判断されるのだろう。

マネジメント手法は、そのまま真似しても組織の特性が違えば機能しない事が多いはずだ。それでも丸パクリをしろと言っているのは、あれこれ考えるよりまずやって見てうまくゆかないところを改善せよ、という意味だ。


このコラムは、2018年5月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第672号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

質より量

 武井壮の大人の学校という講義をたまたまyoutubeで見た。

ほとんどTVを見ないので、恥ずかしながら武井壮という方を知らなかった。半ズボンで登壇した姿を見て、見るのをやめようかと逡巡しているすきに、「水は飲みたいと思えば飲める。しかしホームランは打ちたいと思っても打てない」という言葉にヤラレ、最後まで見た(笑)

打ちたい時にホームランが打てない理由は「見えていないからだ」という。
しかし一流の打者は、ボールをしっかり見ているはずだ。あの川上哲治などは、ボールが止まって見えると言っていた。
武井氏が言っているのは、ボールは見えていても、自分の体がどのように動き、バットのヘッドがどのような軌跡をたどっているか見ていないという。

確かに、見えていない体を使い、見えていないバットヘッドの軌跡を制御して時速100km以上で飛んでくるボールにジャストミートすることは困難だろう。
打ちたい時にホームランを打つためには、体を見ていなくてもイメージ通りに動かせるように、バットの先端を見ていなくても思い通りの軌跡を描くように鍛錬する必要がある。

我々も不良が発生する瞬間を見ることができれば、不良発生の原因は簡単にわかるだろう。不良発生の瞬間が見えないので、仮説を立て検証し原因を推定する事になる。仮説検証の能力を鍛錬しなければならない。

さてここからが本日の主題だ。
武井氏は、社会的価値は質(クオリティ)ではなく量(クォンティティ)だと言っている。彼はアスリートの立場として、社会的価値は質より量だという。選手がいくら高いクオリティ(運動能力、瞬時の判断力など)を持っていても、社会的価値は上がらない。そのスポーツを見る観客のクォンティティ(人数)が社会的価値を決定する。
観客動員数が多ければ興行収入が大きくなり、また広告効果などの付帯価値も上がるという事だ。

ここで比較している質と量は、供給者側の質と消費者側の量である。こう理解すれば「質より量」という現代社会にマッチしないキャッチコピーはいきなり当たり前になる(笑)

我々製造業も同じだ。供給と消費のバランスが変わり、同一規格大量生産品の社会的価値が下がった。そして消費者の欲求に応える多品種少量生産品しか売れなくなっている。
一見すると「量より質」、つまりたくさん粗悪品を作るより質の良いものを少量作った方が価値が高い、と解釈できる。

製造業にとって「質」が良いのは当たり前の前提、その上で顧客の需要という「量」が重要となる。
スポーツと同じく製造業も、生産者の質よりも消費者の量が社会的価値を決定する、という事だ。
当然製品の質と量(顧客需要)には相関関係がある。質が悪ければ量は減る。しかし質が良くても量が上がるとは言えない。という片側相関関係だ。
簡単に言ってしまえば、製造業が作っている製品の社会的価値は生産者ではなく、顧客である消費者が決定しているという事だ。製造業以外でも同様だ。

「質より量」心に留め置きたい。


このコラムは、2018年6月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第674号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

子貢仁を為すを問う

gòngwènwéirényuē:“gōngshànshìxiānshìbāngshìzhīxiánzhěyǒushìzhīrénzhě。”

《论语 卫灵公第十五-10》

素読文:
こう、仁をすことを問う。子曰わく、こうの事をくせんとほっせば、必ずまず其のにす。くにに居るや、其の大夫たいふけんなる者につかえ、其のの仁なる者を友とす。

解釈:
子貢が仁を行う道について問うた。孔子曰く:大工は仕事の前にまずノミや鉋を研ぐ。同様に仁を行うためにはまず自分を磨かねばならない。そのためにはどの国にあろうとも、その国の賢者に仕え、仁者を友とすることだ。

「ダイヤはダイヤでしか磨かれない。人は人でしか磨かれない」立派な上司や友人を持つことが重要だということですね。