モノ造りのホコリ


 ある中国企業の生産現場で指導をしていて大変驚いた事がある。
製品がひっくり返らない様に組み込む金属製の「重石」が大変に汚れている。「泥だらけ」という表現はちょっと言い過ぎかも知れないが、土ぼこりや蜘蛛の巣で汚れている。素手で触るのがためらわれるほどだ。

きれいにしてから組み込んだほうが良いだろうと製造部門のリーダに指摘をすると、ユーザには見えないところにあるのでかまわないという。外観には気を使っているが目に付かないところには余分なコストをかけない、という考えかただ。

また金属シャーシに取り付けたタブが加工ミスで曲がってしまっている。ペンチでぐいと位置強制して使うという。これもまたユーザの目には触れない場所だ。さすがにこれは不良としてリジェクトさせた。

別のラインでは、量販店から製品の仕様変更依頼(内部部品の交換)で返却された商品の改造作業をしていた。驚くことに返却されたボロボロの化粧箱に再梱包をしている。量販店が化粧箱交換のコストアップを納得しなかったので、破損の激しいものだけ交換するように白箱を100個だけ用意してあるという。これは現場のリーダを責めてもかわいそうだが、こんなモノを店頭に陳列すれば売れないばかりではなく、自社のブランドにまで傷が付きそうだ。

コストを重要視する考え方を間違っているというつもりはない。
しかしこの工場は床や作業台にネジが散乱していても平気な工場だ。ブランドに関わるコストを敏感に削減しているのに、部品の遺失コストには無頓着だ。

こういうモノ造りをしていれば、仕事や自分達が生産した製品に対する現場のホコリはなくなってしまうだろう。モノ造りにホコリを持っていない現場に高品質・低コストのモノ造りができるはずがない。更にこういうモノ造りを続けていれば、最も重要な顧客の信用やブランド力がどんどん低下してゆくだろう。

知り合いの縫製工場の経営者は、安物の仕事は請けないと言い切っていた。安物なりの縫い方を作業員にさせてしまえば、本来の品質を維持できなくなる。高級なモノは目に見えないところにもコストをしっかりかけてあるものだ。

その考え方ををモノ造りのホコリとして作業員にきちんと伝える必要がある。これは一介のコンサルが現場で指導できる話ではない。
この工場に対しては現場指導よりも、経営者指導が必要だ。


このコラムは、2009年6月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第102号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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