月別アーカイブ: 2005年8月

トランス業者の指導(その2)

トランス業者の指導の続きです。
前回は半田ボールの話をしましたが、今回は線屑がコイルに巻き込まれていた不良について、どのように品質とコストを同時に改善する指導をしたかお話します。
トランスの不良と言うのは電源メーカにとっては致命的故障です。電源の特性に重要な影響を持っている。不良が絶縁不良(安全故障)につながる可能性がある。
したがってAQLで受け入れ検査をしていますが、1個でも不良があっては困るわけです。
抜き取り検査では100%良品(少なくとも絶縁不良ゼロ)を保証することはできません。業者さんの工程が100%良品を保証できる工程になっていることを確認しないといけません。
今回のような線屑がコイルに巻き込まれているような不良は容易に絶縁不良につながるので、1個でも発生を許してはいけません。
この業者さんの工場は見かけは比較的きれいに整理整頓ができている工場でした。
しかし巻き線工程の作業台を良く見ると、そこここに線屑が散らかっています。品証担当の説明によると、巻き線工程ではワイヤを切らないから線屑は発生しないはずだと言います。しかし現実に線屑がある。
作業台のうえにある線屑はトランスの絶縁テープの粘着部分に付着してコイルに巻き込まれる可能性があります。これを見逃してはいけません。
ここの工程は1次巻き線、2次巻き線、1次巻き線と一層ずつ一人の作業者がまいて、最後にリードにからげたワイヤをカットすると言う4人一組のラインになっています。このワイヤカットの工程で発生した線屑が飛び散ったり、半完成品を入れているトレーに入って巻き線工程に散らかっているわけです。
ワイヤカット工程を巻き線工程からはなれたところにおけば、線屑混入の危険性は減らせます。幸いなことにこの4人の工程は、巻き線工程が遅いため、ワイヤカットの工程が閑です。巻き線工程2組に対してワイヤカットを1にしてワイヤカット工程を離れた場所におけば、作業者は1人減らせる上に線屑混入の危険性も減ります。
すなわち品質をよくして、コストも安くできるわけです。
またトレーに入ってくる線屑は、空いたトレーをひっくり返しておく習慣をつけてやれば、うんと減らせます。これはコストをかけずに品質が向上します。
このような観点で作業現場を良く見てゆくと、不良を作りこまない工程が出来上がります。

突然の水害

私の住んでいる広東省東莞市石龍のあたりは、排水設備が脆弱な為雨がたくさん降るとすぐに水溜りがそこここにできてしまいます。
8月19日に雷を伴った大雨が降りここいらも1mほど冠水しました。冠水したところに車がエンコしていたり、腰まで冠水しているところなどがありそこいらじゅうが大渋滞になります。
中国の車はスパークプラグの高圧ケーブルが水にかぶると、簡単に絶縁不良となり動かなくなるのだと言っていました。
結局その夜はアパートに戻るのを断念しなければなりませんでした。
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あれから一週間経ちましたが、まだ水害の爪あとが見られます。各商店がぬれてしまった商品を道端に持ち出して乾かしています。

IMG_2363sねじや継電器など、ぬれると品質に影響が出そうなものも堂々と干してあります。
こういうものはちょっと買う気がしません。

店の前に歩道ばかりか車道まで盛大に並べてある中で、お茶屋さんだけは何も干していません。さすがにお茶の葉が干してあると、誰も買う気がしないので、きっと誰知らぬところにもっていって干していくのだろうと噂しています(笑)
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なぜかティッシュペーパの箱が大量に干してあったりします。
謎です。

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バイクもマフラーから水が入ったり、電気系統がいかれたりで、バイク修理店の前は修理を待っているバイクで一杯でした。一週間たった今でもまだ修理待ちのバイクが並んでいます。水害で唯一儲かっているのがバイク修理屋さんのようです。

トランス業者の指導(その1)

先日受け入れの抜き取り検査で、トランスに半田ボールが付いている、巻き線の中に線屑が入っているのが見える、などという不良が見つかったのでロットアウトの処置をしました。
しかしトランスの業者さんは逆切れして、それなら納入しないと言い出しました。
困ったものですが、台湾系の部品業者さんは値上げ交渉(または値下げ交渉防止)の為にしばしばこの手を使ってきます。またいつものことだと取り合いませんでした。
しかし購買担当の経理、工場長からいっせいにクレームが来ました。曰く、品質とコストのバランスを考えないといけない。受け入れ品質基準を緩めるべきだと言うのです。
私からは品質とコストのトレードオフが発生するような状況を作ってはいけない、品質とコストは同時に改善できる、と主張しました。残念ながら私の中国語の問題か、相手の考え方の問題かわかりませんが、理解していただけませんでした。
ならばと即そのトランス業者さんの工場に出向き、現場指導をしました。
彼らの言い分は、半田ボールを除去するのにたくさんの工数がかかる、今の納入価格では耐えられない、と言うものです。
こういう考え方だから、品質とコストのトレードオフになるのです。
現場では、半田ボールを除去する努力をするのではなく、半田ボールが発生しないように工夫しましょう、と指導をしました。
現場を見ると案の定、半田ボール発生の影響因子に対し何も管理していません。フラックスの濃度、吸湿などどのように管理するのか一つ一つ指導をしました。
このようにして半田ボールの発生を抑えることができれば、半田ボール除去の作業員を減らすことができます。また半田ボール除去の為のツールも一工夫すると効率よく半田ボールが除去できます。(彼らは歯ブラシで一生懸命磨いていました)
結果として品質とコストは同時に改善できるわけです。