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整理・整頓

 最近5Sに関する研修の引き合いを受けることが多くなって来た。
世の中の5Sに対する認識が変わって来たというわけではないが、中国で発行している日本語雑誌「EMIDAS」「華南マンスリー」で5Sに関するコラムを書き始めたためだと思う。

整理・整頓のことを「2S」ということが良くある。
普通に言えば「片付け」だ。

最近「人生がときめく方付けの魔法」という本を読んだ。

腰帯でにっこり笑っている著者の近藤真理恵さんは、子供の頃から、主婦向け雑誌の「片付け特集」が大好きだったそうだ。今は「片付けコンサル」というちょっと変わった肩書きで仕事をされている。

主婦向けの雑誌と言えど馬鹿には出来ない。5Sを指導する者にとって、参考になることもある。そんな訳でこの本を手にとって見たが、普通の片付け本とは一線を画す内容となっている。

「大切なのは過去の思い出ではありません。その過去の経験を経て存在している今の私たち自身が一番大切だということを、ひとつの物と向き合うことを通じて、片付けは私たちに教えてくれます」

「空間は過去の自分ではなく、未来の自分のために使うべきだと、私は信じています」

という哲学的考察の上で、整理の意義をといています。

また整頓の方法論も、以下のように示唆します。

「散らかるのは「元に戻せない」から。使う時の手間よりしまう時の手間を省くことを考える」

「散らかった状態が、人の心を蝕む理由は、あるのかないのか分からないのに探さなくてはならず、しかも探しても探しても出てこないことにあるのです」

ただ片付けの方法論を語るのではなく、哲学的な考察を持って片付けの真髄に迫っている。

5S実践のバイブルと言ってしまうとちょっと大げさだが、整理・整頓の意義を見失っている人に5S指導をする際に参考になる内容だ。

無論個人生活の片付けに関しては、間違いなくバイブルと言って良い内容だ。著者が提唱するのは、片付けの結果得られる「好きなものだけに囲まれて生活する幸せ」だ。

この幸せな状態とは、工場やオフィスではどう言う状態なのか、その答えを見つけるのが今の私の課題だ。

「人生がときめく方付けの魔法」
書店で探す時は、生活実用書に分類されているので、いつもと違う書棚を探していただきた(笑)


このコラムは、2011年6月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第208号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

トイレ掃除の効能

 相前後して2人の友人から「そうじ資本主義」と言う本を紹介された。

そうじ資本主義
書籍名:そうじ資本主義
著者:大森信
出版社:日経BP

紹介してくれた友人の一人は、本人も中国工場でトイレ掃除をしている。初めは従業員から『精神病』と言われたそうだ。しかし継続しているうちに、中国人幹部が手伝う様になり、全従業員で掃除をする様になった。
その結果、生産性は4倍となった。最近は、掃除を見せて欲しいと、他の工場から見学に来る人までいる。

トイレ掃除と言えば、イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏が有名だ。
鍵山氏は創業時から社長自らトイレ掃除をしている。最初の10年間はだれも手伝わなかったそうだ。社長がトイレ掃除をしている横で、用を足して行く職員すらいたと言う。それが今では「鍵山トイレ掃除道」は社内のみならず、公衆便所を清掃する会ができ、国内から全世界に広まっている。

鍵山氏は、哲学者・ショーペンハウエルを引用し、物事が成功するまでには3段階あると言っておられる。
第1段階は「嘲笑される」
第2段階は「反対される」
第3段階は「同調する」

初めは従業員から『精神病』とバカにされる。それでも継続しようとすれば反対する。やらない理由を探す方がずっと楽だ。たいていの人はこの辺りで挫けてしまう。それでも継続すると周りから、同調する者が出て来ると言う。

大森氏の「掃除資本主義」では、欧米企業の経営観は「目的志向」と説明している。利益を上げることが企業の目的であり、目的に合致しない作業を減らし、目的に合致する作業を増やすと言う合理主義が貫かれる。従って掃除は外部に委託することになる。
一方日本的経営観は「手段志向」と位置づけている。掃除や5Sを大切にする。
掃除は直接目的に貢献はしないが、大切な事だから一生懸命にやる、と言う姿勢だ。

目的志向の合理的経営は、利益を上げるためにはリストラも辞さない。むしろリストラをすれば、株主から評価され株価が上昇したりする。しかしこの合理主義が万能であるかと言うと、そうでもない。前出の友人の工場は、総経理自らトイレ掃除をすることにより、生産性を4倍にし結果的に利益に貢献している。多くの日本的経営の企業も同様の成果を上げている。この成果は、合理主義では説明がつかない。

では、なぜ手段志向型経営で成果を出すことができるのか?
経営者、経営幹部から末端の作業員までが、掃除と言う一つの作業を毎日共有する。手段を共有することにより、目的を共有する土壌も出来上がっているのではないだろうか。

目的志向型経営が合理的に見えても、全従業員が目的を共有しなければ無意味だ。手段志向型経営で、全従業員が手段を共有していれば、自然と目的の共有が出来るのではないだろうか。

当然企業には、社会的な存在目的や経営理念は必要である。これは「目的志向」だ。しかしそれを支えているのは「手段志向」による経営者と全従業員の連帯と考えれば、日本的経営の素晴らしい側面が見えて来ると思える。

index_s「そうじ資本主義 日本企業の倫理とトイレ掃除の精神」


このコラムは、メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】に掲載した物です。
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儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場の秘密

枚岡合金
書籍名:儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場
著者:古芝保治
出版社:日本実業出版社



倒産寸前だった町工場・枚岡合金工具の,古芝さんはワラにもすがるような気持ちで「3S」を始めた.整理,整頓,清掃の3Sだ.

バブル時代,5,000円の利益を出すために100万円の売り上げが必要だったそうだ.最悪の経営状態から3Sに取り組んで,一気に業績が回復した.

整理,整頓,清潔で社内の空気ががらりと変わり,従業員の行動も変わった.行動が変わり,新しい行動が習慣になる.

その結果,工場見学に訪れる人が増え始め,工場見学に来た人から仕事を受注するようになった.その噂を聞いたパナソニックの人たちが工場見学に来ると,正帰還がかかったように見学者が増え,今までに8,000人の見学人が来ている.

年間3,000個もの金型を造っているのに,図面がキレイさっぱり整理されている.パナソニックからの見学者が感心する.これが元になって社内で使っていた文書管理システムがビジネスになる.

古芝さんは3Sとしか言っていないが,
工具を探す時間に1分掛けていたのを30秒にする,更にその半分にする,といっている.これが「清潔」だ.
整理,整頓,清掃が人間の感性を磨く,と言っている.
これが「躾」に他ならない.

5Sに真剣に取り組んで,倒産の危機から脱したばかりでなく,新ビジネスまで立ち上げることが出来た.

「たかが5S」と思っている方が多いかもしれないが,ホンモノの5Sとはこういう力を持ったモノだ.

儲けとツキを呼ぶ「ゴミゼロ化」工場

「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた

ディズニーはまずお掃除を考えた
書籍名:
「お客様の幸せ」のために
ディズニーはまず「おそうじ」を考えた
著者:安孫子薫
出版社:小学館

著者の安孫子薫氏は,東京ディズニーランド開業時から,カストーディアル(ディズニーランド内の清掃,安全,安心を維持する部門)の仕事をしておられた方だ.
開業前に本家のディズニーランドでカストーディアル修行をしている.ウォールト・ディズニーと共に本家ディズニーランドを築き上げた,元祖・カストーディアルのチャック・ボヤージャン氏の直弟子である.

5Sで清掃がうまく指導できないのは,いくつか理由があると考えている.
・何のために清掃するのか理解できていない
・清掃の基準が不明確
・掃除をやらされていると感じている

私は5S指導の時に,
・清掃は「予防保全」
・基準は言語データで
・より短時間で,より綺麗になるように工夫をする
と教えているが,本書から更に気付きを得ることが出来た.

・掃除とはお客様や仲間に対する思いやり
・汚れたから掃除をするのではない.汚れる前に掃除をする.
・クリンネスで商売繁盛

5Sが有効なのは製造業ばかりではない.
飲食,ホテル,小売などあらゆる産業で有効だ.

5Sは元々製造業からスタートしたが,本書からレジャーランドの清掃を工場の5Sにベンチマーキングしてみてはいかがだろうか.

こちらの本もどうぞ
「ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと」

ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと

掃除の神様が教えてくれたこと
書籍名:
ディズニー
そうじの神様が教えてくれたこと
著者:鎌田洋
出版社:ソフトバンククリエイティブ

著者の鎌田洋氏は,オリエンタルランドに5回挑戦して入社し,東京ディズニーランド開業時に初代のナイトカストーディアル(ディズニーランド内の夜間清掃部隊)として仕事をされていた.

華やかなディズニーランドの仕事に憧れ,会社を辞め転職したのに「夜間のそうじ係」となってしまったことに,落胆したそうだ.
しかし本家ディズニーランドから指導に来ていたカストーディアル教祖・チャック・ボヤージャン氏の指導を受け仕事に対して,誇りと自信を持つようになる.

たぶんそんな著者自身の体験から描かれた4つのエピソードで,本書は構成されている.

清掃を通して,人が如何に仕事に対して誇りと自信を持ってゆくのか,エピソードの中から多くの気付きを得た.これは単なるそうじの本ではなく,従業員のモチベーションを如何に上げるかと言う課題を,小説仕立てで教えてくれる本だ.

本書の取り扱い注意:目を赤くしているのを見られたくない人は,人前で読まないこと(笑)

こちらの本もどうぞ
「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた」

なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?


掃除をするとなぜ人生が変わるのか?

書籍名:なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?
著者:志賀内 泰弘
出版社:ダイヤモンド社



この本,書評を見て是非読みたいと思っていました.日本に帰国した折に大きな書店を何軒か探しましたが,なかなか見つかりません.掃除で人生が変わる
中国に戻る前日,ようやく見つけました.
なんと実用書に分類されていました.隣には「エコで豊かになるヒント」「ひとり暮らしはじめました」と言う生活実用書が並んでいました(笑)
「使い古しのストッキングで蛇口がピカピカ」みたいな,ノウハウ本だと思われたのでしょう.

しかしこの本には,掃除のノウハウではなく,掃除をすることの理念が書いてあります.実用書ではなく,ビジネス書です.
5Sの清掃指導をどうすればよいか分からない方(明日お客様が来るから掃除をしておけ,と言っている方)にお勧めです.
書店でお求めの際は,店員さんにどの棚にあるか聞いた方が良さそうです(笑)

 なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?

人生がときめく方付けの魔法

かたづけの魔法
書籍名:人生がときめく片づけの魔法
著者:近藤 麻理恵
出版社:サンマーク出版

写真上段の中央当たりでにっこりしているのが,著者の近藤麻理恵さんだ.


整理・整頓のことを「2S」ということが良くある.
普通に言えば「片付け」だ.

最近「人生がときめく方付けの魔法」という本を読んだ.

腰帯でにっこり笑っている著者の近藤真理恵さんは,子供の頃から,主婦向け雑誌の「片付け特集」が大好きだったそうだ.今は「片付けコンサル」というちょっと変わった肩書きで仕事をされている.

主婦向けの雑誌と言えど馬鹿には出来ない.5Sを指導する者にとって,参考になることもある.そんな訳でこの本を手にとって見たが,普通の片付け本とは一線を画す内容となっている.

「大切なのは過去の思い出ではありません.その過去の経験を経て存在している今の私たち自身が一番大切だということを,ひとつの物と向き合うことを通じて,片付けは私たちに教えてくれます」

「空間は過去の自分ではなく,未来の自分のために使うべきだと,私は信じています」

という哲学的考察の上で,整理の意義をといています.

また整頓の方法論も,以下のように示唆します.

「散らかるのは「元に戻せない」から.使う時の手間よりしまう時の手間を省くことを考える」

「散らかった状態が,人の心を蝕む理由は,あるのかないのか分からないのに探さなくてはならず,しかも探しても探しても出てこないことにあるのです」

ただ片付けの方法論を語るのではなく,哲学的な考察を持って片付けの真髄に迫っている.

5S実践のバイブルと言ってしまうとちょっと大げさだが,整理・整頓の意義を見失っている人に5S指導をする際に参考になる内容だ.

無論個人生活の片付けに関しては,間違いなくバイブルと言って良い内容だ.
著者が提唱するのは,片付けの結果得られる「好きなものだけに囲まれて生活する幸せ」だ.

この幸せな状態とは,工場やオフィスではどう言う状態なのか,その答えを見つけるのが今の私の課題だ.

人生がときめく方付けの魔法

書店で探す時は,生活実用書に分類されているので,いつもと違う書棚を探していただきたい(笑)

5ゲン主義-5S管理の実践

5S管理の実践
書籍名:5ゲン主義―5S管理の実践
著者:古畑 友三
出版社:日科技連出版社



「明日お客様が来るから5Sをしっかりするように」と部下に言っている方は,5Sの本来の意味をもう一度確認したほうがよいだろう.
こちらのコラムを参考にしていただきたい.

5Sに関する書籍を読むのもよい.
5Sに関する書籍は,腐るほどある.
何冊か読んだが,お勧めできるのは5ゲン主義で有名な古畑友三氏の「5ゲン主義-5S管理の実践」がベストだろう.

「5ゲン主義-5S管理の実践」