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そうじの効果

440号のコラムで、「トイレ掃除の効能」について書かせていただいた。
コラムの中で紹介した書籍「そうじ資本主義」を読んだ。

書籍の中に、そうじに関するアンケート調査の結果が紹介されていた。
大阪商工会議所が414社に対して実施したアンケート結果だ。

そうじの効果を直接効果の間接効果の二つに分けている。

  • 直接効果は、そうじによる効果だ。そうじを自社でやる、専門業者に委託するどちらにも同じ様に発生する。
  • 間接効果は、そうじという行為による効果だ。従って自社でそうじに取り組む場合に発生する。

【直接効果】

  • 職場環境の安全、公衆衛生の向上
  • 効率向上
  • 不良、コスト削減

【間接効果】

  • モチベーション、モラルの向上
  • チームワーク、連帯感の向上
  • 設備機械、備品の耐久年数向上
  • 売り上げ向上

そうじを専門業者に委託すると間接効果は発生しない。
経営者、経営幹部のあなたは率先してそうじに取り組む価値が有りそうだ。
効果があれば、ぜひお知らせたただきたい。

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このコラムは、2015年10月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第444号に掲載した記事です。

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5S回帰

 自分の専門性はどこにあるのか考えてみた。
超がつく多品種少量生産のモノ造りをしているメーカで、開発設計をしていた。
その後大量生産製品の品質保証責任者として、国内、海外の子会社や生産委託先で生産・品質指導をしてきた。

独立してからはバネからバスまで、月産数百万台の大量生産から、単品生産の工場まで指導した。少品種大量生産の工場に、1台ずつ生産する生産方式を導入したこともある。

少量生産、大量生産の枠では、自分の専門性を定義することは出来そうもない。

元々電源関連の生産メーカの指導が中心であった。20社近く指導をしたが、今は全くない。民生用、産業用の電子応用製品の組み立て、電気・電子部品の生産、金属製品、プラスチック部品の生産、玩具、衣類の縫製、表面処理などの指導をしており、自分の専門業種を語ることも難しい。

従来は電気電子業界の仕事が多かったが、最近は自動車業界の比率が上がっている。業界も私の専門性を絞ることは出来ない。

いわゆる「現場の改善屋」として仕事をしているが、改善を達成し、それを定着させるためには、企業文化の構築や、リーダの育成も必要になる。幹部やリーダの育成も仕事だが、経営者へのコンサルもやらなければならない。
仕事の対象でも、専門性が絞れない。

ムリに専門性を絞る必要はないのだろうが、「現場の改善屋」という看板では、何が得意なのかぼんやりしてしまうと考えたのだ。

考えが煮詰まって、気分転換に外に出てみた。
夜半の街を歩いているうちに閃いた。自分は「5S」が専門ではないだろうか。検証してみると、顧客から5Sの指導を依頼されたのは10社しかなかった(笑)10社程度では、ダントツの5S専門コンサルトは言い難いだろう。

しかしよく考えてみると、あらゆる仕事の基本は5Sに始まる。
現場の改善指導の仕事を受けても、5Sを指導することになる。そうなると今まで70社近くの企業に5Sを指導したことになる。

前職時に指導した中国電源工場(広東省に4社)では、日本人監査官の監査を受けて、ここまで5Sが出来ていれば安心ですと言っていただいた。今まで日本企業18社、欧米、台湾、韓国。中国企業13社の監査を受けたことがあるが、5Sについて問題指摘を受けたことは一度もない。

中国で発行されている日本語ビジネス雑誌2誌に1年間5S啓蒙のコラムを寄稿したこともある。

2011年12月には、北京の商社経営者(中国人)が5S修行をさせて欲しいと来社され1ヶ月居候をしていった。

これならば、世界一とは言えなくても、華南一くらいにはなれるだろう(笑)

正直に告白をすると、5Sを指導しても結果に納得出来なかった工場が2社だけある。指導先からクレームを付けられた訳ではないが、自分自身が満足できなかった。
私が経営者や経営幹部の「本気」を引き出せなかったのが原因だと考えている。
この経験のおかげで、指導の方法を変更することができた。


このコラムは、2012年9月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第275号に掲載した記事です。

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5Sの見える化

 以前中国企業に5Sの指導をしていて、奇妙な要求を受けたことがある。
工場内をレイアウトに合わせ、床に色を塗りたいと言う。一般的に作業エリアは緑、通路はオレンジ色に塗る事が多い。テープの色などと合わせて教えるが、通路に足跡も表示したいと要求を受けた。歩行方向を指定したいのならば、矢印で十分だが、やはり足跡を表示したいという(笑)
事情を聞き出すと、中国ローカルのコンサル会社に5Sをやるならば、通路に足跡を表示して、従業員がそれに従って歩く様にするのが良いとすすめられたそうだ。

床の色を塗り分けると、レイアウト変更の度に床を塗り直さなければならない。
そのため床の色は一色にして区画表示のテープで通路と作業エリアを表示する。
この方がムダなコストがかからないはずだ。
作業エリアや、部品の一時置き場などに表示するカンバンも簡単に入れ替えが出来る様にする。

足跡を表示する事に反対はしないが、ムダなコストをかけずに、フレキシブルにやる方が良い、と説得するが、経営者はどうしても足跡を表示したい様だ。

くだんのローカル系コンサル会社は、床の色塗りから足跡の表示までセットで請け負ってくれるそうだ。こんな事をしただけで5Sが良くなるとは思えない。元々内装工事業者が、工場の塗装仕事を請け負いたくてコンサルをしているのではと、勘ぐりたくなる(笑)

5Sの整頓を一言で言えば「見える化」だが、このコンサル会社は、5Sをやっている事を見える化してくれる様だ。

お金をかけてでも5Sを一生懸命やろうという決意は買うが、見栄えだけを狙うのでは長続きはしない。

通路をきちんと表示することにより、安全性が高まる、ムダな動きが少なくなる、現場にムダなモノが置けなくなる、などの具体的効果を狙うべきだ。
わざわざ足跡をいくつも表示する事はないだろう。
どうしても足跡を表示したいのであれば、足跡の間隔を90cmにして、テキパキと歩く様にしてはどうか、と提案した(笑)


このコラムは、2013年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第294号に掲載した記事です。

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整理・整頓

 最近5Sに関する研修の引き合いを受けることが多くなって来た。
世の中の5Sに対する認識が変わって来たというわけではないが、中国で発行している日本語雑誌「EMIDAS」「華南マンスリー」で5Sに関するコラムを書き始めたためだと思う。

整理・整頓のことを「2S」ということが良くある。
普通に言えば「片付け」だ。

最近「人生がときめく方付けの魔法」という本を読んだ。

腰帯でにっこり笑っている著者の近藤真理恵さんは、子供の頃から、主婦向け雑誌の「片付け特集」が大好きだったそうだ。今は「片付けコンサル」というちょっと変わった肩書きで仕事をされている。

主婦向けの雑誌と言えど馬鹿には出来ない。5Sを指導する者にとって、参考になることもある。そんな訳でこの本を手にとって見たが、普通の片付け本とは一線を画す内容となっている。

「大切なのは過去の思い出ではありません。その過去の経験を経て存在している今の私たち自身が一番大切だということを、ひとつの物と向き合うことを通じて、片付けは私たちに教えてくれます」

「空間は過去の自分ではなく、未来の自分のために使うべきだと、私は信じています」

という哲学的考察の上で、整理の意義をといています。

また整頓の方法論も、以下のように示唆します。

「散らかるのは「元に戻せない」から。使う時の手間よりしまう時の手間を省くことを考える」

「散らかった状態が、人の心を蝕む理由は、あるのかないのか分からないのに探さなくてはならず、しかも探しても探しても出てこないことにあるのです」

ただ片付けの方法論を語るのではなく、哲学的な考察を持って片付けの真髄に迫っている。

5S実践のバイブルと言ってしまうとちょっと大げさだが、整理・整頓の意義を見失っている人に5S指導をする際に参考になる内容だ。

無論個人生活の片付けに関しては、間違いなくバイブルと言って良い内容だ。著者が提唱するのは、片付けの結果得られる「好きなものだけに囲まれて生活する幸せ」だ。

この幸せな状態とは、工場やオフィスではどう言う状態なのか、その答えを見つけるのが今の私の課題だ。

「人生がときめく方付けの魔法」
書店で探す時は、生活実用書に分類されているので、いつもと違う書棚を探していただきた(笑)


このコラムは、2011年6月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第208号に掲載した記事です。

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続・QCC活動

 先週のメルマガ「QCC活動」に読者様からメッセージをいただいた。

※N様のメッセージ

お疲れ様です。
いやー実にそうなんですね。
中国では QCC活動ができるのは特殊だと思います。
まだ TPM活動のほうが 中国人気質にあっているように思います。
QCC(TPM)活動を実施する前に 5S活動をしておく必要も あるかと思います。そうすることにより 改善活動にスムーズに 入っていけるように 感じます。

中国でTPMを展開出来ている工場を訪問したことが有る。
中国の某総合家電メーカの研修で従業員に優れた日系メーカを見学させたい、と言う要求が有り、友人の工場を紹介した。

QCCとTPMを直接比較することは難しいと思うが、レベルが全然違うと思っている。TPMは設備のメカニズムを理解し、設備の改善が出来るレベルまで到達している必要がある。間接部門を含む全社活動なので、必ずしも設備改善が出来る必要はないが、設備改造・改善なしでは5S活動と大差なくなる。

一方QCCの方は、チームごとの力量に合わせて課題に取り組むので、設備にフォーカスする必要はない。私の指導経験では、QCCの方がやり易いと思っている。

まず5Sありき、と言うご意見には異論はない。私もその通りだと考えている。
5Sの「清潔」は色々な解釈をされている方も有るが、私は整理・整頓・清掃を維持する為の改善が「清潔」だと定義している。つまり、整理するモノが増えない様にする。整頓が乱れない様にする。清掃の時間を短縮出来る様にする。と言う改善活動が「清潔」だ。従って、QCCにしろTPMにしろ5Sが原点となる。

実は今週のコラム「可視化管理」で紹介した工場では、毎週金曜日に全社でQCC活動をされている。今まで指導して来た中で、作業員も含めてQCC活動を全社展開されている中国工場はなかった。5Sや可視化管理ばかりでなく、QCC活動にご興味がおありの方にも、参考になるはずだ。


このコラムは、2015年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第431号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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焼酎と間違え客に漂白剤 高松の焼き肉店

 焼酎のペットボトルに入れていた漂白剤を過って客1人に飲ませたとして、高松市保健所は20日、飲食店を展開するフジファミリーフーズ(松山市、内島朝良社長)の焼き肉店「じゃんじゃか十川店」(高松市十川東町)を22日まで3日間の営業停止処分にした。

 保健所によると、18日午後7時ごろ、店は市内の男性客(41)に、水で薄めた漂白剤を焼酎として提供。男性客は2口飲んで店員に味の異変を訴えたが、気分が悪くなって発熱し、病院に搬送された。手当てを受け、快復しているという。

 漂白剤はまな板などの消毒用に保管していたといい、焼酎のラベルが付いたペットボトルに入れてあったという。

(asahi.comより)

 漂白剤をお客様に飲ませるなんて、想像しただけでも恐ろしいことだ。

わざわざ漂白剤の容器から焼酎のペットボトルに移し替える手間をかけて、事故の潜在要因を作っている。普通ならばこんな馬鹿なことはしない。多分漂白剤のオリジナルの容器が大きすぎて、普段使う時に不便だったのだろう。

この事故の原因は「整頓」がきちんとできていないことにある。
整頓とは、
「決まったモノを、決まった位置に、決まった量だけ、表示をして置く」
である。

漂白剤が入ったペットボトルには、「漂白剤」と書いた表示が必要だ。漂白剤を使用するのは、閉店後の後片付けの時であろう。従って置く場所は、清掃道具を置いてある場所とする。間違っても調理台に置いてはならない。

調理台は、飲食店にとって付加価値を作る場所である。その重要な場所に今使わないモノを置いてはならない。スペースの浪費だ。場所が狭ければ、モノをあちらにやったり、こちらに移したりと、付加価値を生まないムダな作業がどんどん増える。

どんな業種であろうと5Sは仕事の基本だ。

あなたの工場も、このような事故の潜在原因がないか見直しを是非していただきたい。

例えば、複数の接着剤を使用する場合、それぞれの接着剤が誤用されない様に整頓をしなければならない。

機構部品に使用する接着剤を、電子部品の固定に使用すると接着剤の添加物が触媒となり電気化学作用により、電触を起こすことがある。
電界がかかっている部分にハロゲンイオンなどがあると、マイグレーションが発生し回路を形成している導体金属が断線する、または回路間が短絡する等の、信頼性不良が発生する。

この手の不具合が深刻なのは、工場内の検査では不良が見つからないことだ。
市場に出てエンドユーザが使用中に不良が発生し、事故となる。
このような事故は通常波及範囲の特定が困難だ。事故の影響度によっては、安全を見込んで多くのロットを回収することになる。

接着剤の場合オリジナルの容器をそのまま生産現場で使うことは出来ない。ディスペンサーに移す、小袋に入れ替えることになる。
これらの容器に接着剤の型名と、有効期限を明記しておく。紛らわしい場合は○○用としっかり書いた方がよい。

これが整頓である。物をきれいに見栄え良く並べておくことが整頓ではない。


このコラムは、2012年7月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第267号に掲載した記事です。

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スマイル

 先日は大変気持ちの良い工場を訪問させていただいた。

日系中国工場では就業員が、上司やお客様に挨拶をきちんとするところが多い。しかしこの工場では同じように挨拶をされても、なんだかとても気持ちが
良いのだ。挨拶をされるたびにこちらも思わず微笑が出る。

何が違うのだろうかと考えながら工場を案内していただいていた。ふと見やった工場の壁にその答えがあった。

壁には5Sの標語「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「素養(中国語で躾のこと)」の他に「安全」「微笑」「節約」の3つの標語が掲げられていた。

この「微笑(スマイル)」こそがその答えだった。挨拶をしてくる作業員やスタッフたちは女性も男性も皆微笑みながら挨拶をしているのだ。

笑みをたたえながら挨拶をされれば、こちらも思わず微笑みたくなる。
朝顔を合わせたら微笑みながら「おはようございます」と言う。
仕事がつらくても微笑みながら「お疲れ様」と言う。
上司に叱られても微笑みながら「ありがとうございます」と言う。

スマイルの効果は大きい。
スマイルはココロをポジティブにする。
ポジティブなココロは行動をポジティブにする。
ポジティブな行動はポジティブな成果となりスマイルにつながる。

そしてスマイルは周りに伝染して職場全体が明るくなる。

サービス業ではスマイルが直接顧客満足につながる。工場でもスマイルは従業員満足につながり、規律と生産性・品質の向上に役立つだろう。

以前、私はある工場でこんな指導をしたことがある。
クリーンルーム内で作業者の防塵着の着方に乱れが散見された。不良の原因となっている埃は着衣から出る繊維質のものが大半を占めている。彼らには朝礼のときに2名ずつ向かい合い、お互いに微笑みながら着衣の乱れを直しあうように指導した。

母親が子供のボタンをかけるように、妻が夫のネクタイを直すように、笑みをたたえて着衣の乱れを直してやれば、上司から叱られるより何倍も効果があるだろう。

このような活動の成果は、すぐには見えないかもしれない。しかし確実に良い企業風土を作り上げる。


このコラムは、2009年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第132号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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整理とは

 先週お客様の工場で,5Sの指導をしていて気が付いたことがある.
5Sの「整理」とは本来,要るモノと要らないモノを区別し,要らないモノを捨てることだ.その結果,要るモノだけがある職場となる.
要るモノだけがある職場を実現するのが整理の目的だと考えれば,必要なモノが無ければ,準備することも「整理」と言える.

先週訪問した工場は,現在生産を立ち上げようとしている段階であり,まだ不要なモノが散見される状態ではない.むしろ必要なモノが足りていない状況だった.

例えば,会議室にゴミ箱が無かった.
たかがゴミ箱だが,もう少し考えると,会議室に使用済みの会議資料を回収する箱を用意する,と言うアイディアが浮かぶ.これで回収箱に裏紙が自動的に集まる.更に考えれば,本当に会議資料を配付すべきかどうかにまで考えが至る.

こう考えることが「改善」であり.5Sの進化だ.


このコラムは、2012年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第287号に掲載した記事に加筆修正しました。

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雑巾がけ

 私が小学生の頃(コミック「三丁目の夕日」の頃)は、教室の清掃は児童の仕事だった。床は雑巾がけをした。以前中国企業の指導をしたおりに、仲間の中国人コンサルにそんな話をしたことがある。

中国では、学校でも職場でも「清潔工」と呼ばれる専門の清掃担当者がいる。
汚す人と掃除する人の役割分担が明確になっている(笑)
私たちの世代は汚した人が掃除すると躾けられた。

当時指導していた中国企業からは「精益生産系統」(TPS)を指導してくれと依頼されていたが、TPSを実践できるレベルにはなく、これがTPSだといって5Sの指導をしていた(笑)仲間の中国人コンサルも日本の小学校におおいに興味を持ったようだが、今では子供達が教室の雑巾掛けをすることはないのかもしれない。

私の友人の工場は、従業員全員で床の雑巾がけをしている。
1万クラスのクリーンルームの塵埃度を測定すると、千クラスの値となる。多分毎日床を雑巾がけをしているからだと思う。クリーンルームの中は極力歩かない、掃除機をかけない。これは床に堆積した埃が空中に舞い上がるからだ。床を雑巾がけすればクリーン度が上がる、これにはちゃんと因果関係があるように思う。

ところで、当時指導した中国企業は我々に騙されて(笑)TPSの代わりに5Sの指導を受けたわけだが、5Sだけでも生産性は3倍以上になった。


このコラムは、2018年11月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第750号に掲載した記事です。

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完結編・5Sは知っているけど……

今週のメルマガでは,5Sは知っているけど実践できないリーダをどう指導すれば良いかというテーマを提供させていただいた.

【今週のお題】
5Sの知識はある.言うことも立派.
でも彼の職場はごみダメの様になっている.

この班長さんにちゃんと5Sが徹底できるようにするにはどう指導したら良いだろうか.あなたが彼の上司だったらどう指導しますか?

【私のアイディア】
メルマガにはまず現場で率先垂範し手本を見せると書いた.
一種のOJTだ.教えた知識を行動に移すことで知識が能力に変換される.

その前に5Sの目的と基準をきちんと説明する事が重要だと考えている.
何のために整理・整頓・清掃をするのかをきちんと教えなくてはならない.
お客様が来るから整理・整頓・清掃をするわけではなく,それらによるメリットを教えるわけだ.

また整理・整頓・清掃の到達すべき基準を明確にする事が必要だ.
整理・整頓・清掃しなさいといってもどのレベルにしなければ分からなければ対応のしようがない.

例えば清掃をしなさいといっただけでは,どこをどの程度きれいにしなければならないのか分からない.
合格レベルをきちんと示す事が必要だ.

【S様のご意見】
中国で現場指導した経験が無いので、すなおに実施出来るかわかりませんが、次のような手順でしょうか。
(1)現状の作業時間をチェック
(2)ゴミと必要なものを分け、ゴミは捨てる。
(3)赤札作戦で、頻度が低いものを現場から離す
(4)現場にあるものを定置化する。
(5)作業時間の再チェック

を繰り返す。また、一緒に実施していく。
効果が目に見えてくれば、意識が変わってくると思います。

S様がご指摘のように,5Sが習慣になるまでは繰り返し指導が必要だ.

【T様のご意見】
 私は以前“ホテル客室”を管理、製造業の経験はありませんが、「職場での意識」は共通してますね。中国では「管理者」が仕事を管理し、従業員は「指示されたこと」をするという考えが強い。
 整理、整頓と言われても「個人の感覚誤差」があり、管理者がどの程度を求めているのかわからない。管理者は、まず自分が求める「標準形」を示す。中国人従業員は、その「標準形」に沿って仕事をする。
 また、この班長さん、周囲が「ゴミ」などが散乱していたそうですが、彼ら中国人は、「自分は清掃員ではない」という考え。清掃員にやらせろ!という感覚ですね。典型的な中国人ですね。

T様のご意見は典型的な中国人スタッフの行動原理を良く把握されていると思う.このように相手がどのように考えて行動しているかを理解したうえで指導とより効果的であろう.

【H様のご意見】
座学を終えた班長に納得して5Sを推進して貰うために、先ず現場へ行って
設備や治具からありとあらゆるモノに対して、
何のためにそこに有るのか、
いつどのように使うのか、
誰がどこで使うのか
について一つずつリストして行きます。
「赤札作戦」のようなものですね。

それを、日頃必要になる頻度・優先度に則って順位を付けます。

これには間接部門にも参加してもらい、
同じ尺度で現場現物を見て同一の認識に立って全員が知恵を出し合って改善を後押しすると良いと思います。

さらに恒久対策と水平展開として、
他部署の班長など第三者による組織によって、より客観的な水準に基いた評価と不具合箇所の発見に努めると良いと思います。相互の部署への現場査察や改善報告などに結び付けたいと期待します。

最後に、現場の定点観測すると良いと思います。

単に現場に存在する余計なモノをポイポイ捨てるだけでは現場リーダーは付いて来ないと思います。作業合理性や生産性だけ説いてもダメ。
客先品質保証部門へ図面変更を依頼したり、作業標準更新であったり、治具の設計製作をしたり、会社規定や人事評価基準を改めたり、間接的かつ強力なバックアップが欲しいと思います。

H様のご意見は詳細な手順も入っており,皆さんの参考になったのではないだろうか.
5Sをバックアップできるように人事制度を整えるというのは,すばらしい視点だと思う.

【Y.H様】

  1. 整理:いるものといらないものの区別をつけ、いらないものは撤去する
    (一定のスパンでそれを行い、その間ずっと使っていないものは撤去する)
    目的は、誤使用の未然防止
  2. 整頓:必要なものを必要なときに効率よく取り出せるような状態にすること
    (物の置場を決める)
    目的は、物の置場を決めることにより、それを探したりする無駄な作業の低減
  3. 清掃:職場のゴミや汚れなくし、きれいな状態にすること
    目的は、汚れていない状態を維持することにより、汚れたときの異変に気づく

清潔、しつけの前に、上記(1)~(3)を目的をよく説明すること、もし整理整頓清掃をしなかったらどうなるか=失敗事例を交えて説明する。それを理解させたうえで、手法はその班長に考えさせる。
5Sを一気にするより、上記の3Sを徹底させる必要があります。

Y.H様のご意見は目的を理解させたうえで,具体的な方法を考えさせる.
考えさせる手法で,OJTをうまく活用できると思う.
ただ教えてもらっただけではなく具体的に自分で実施してみる,ということにより考える力や応用力がつく.
特に知識偏重の中国人スタッフを鍛えるには良い方法だ.


このコラムは、2008年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第67号に掲載した記事です。

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