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完結編・5Sは知っているけど……

今週のメルマガでは,5Sは知っているけど実践できないリーダをどう指導すれば良いかというテーマを提供させていただいた.

【今週のお題】
5Sの知識はある.言うことも立派.
でも彼の職場はごみダメの様になっている.

この班長さんにちゃんと5Sが徹底できるようにするにはどう指導したら良いだろうか.あなたが彼の上司だったらどう指導しますか?

【私のアイディア】
メルマガにはまず現場で率先垂範し手本を見せると書いた.
一種のOJTだ.教えた知識を行動に移すことで知識が能力に変換される.

その前に5Sの目的と基準をきちんと説明する事が重要だと考えている.
何のために整理・整頓・清掃をするのかをきちんと教えなくてはならない.
お客様が来るから整理・整頓・清掃をするわけではなく,それらによるメリットを教えるわけだ.

また整理・整頓・清掃の到達すべき基準を明確にする事が必要だ.
整理・整頓・清掃しなさいといってもどのレベルにしなければ分からなければ対応のしようがない.

例えば清掃をしなさいといっただけでは,どこをどの程度きれいにしなければならないのか分からない.
合格レベルをきちんと示す事が必要だ.

【S様のご意見】
中国で現場指導した経験が無いので、すなおに実施出来るかわかりませんが、次のような手順でしょうか。
(1)現状の作業時間をチェック
(2)ゴミと必要なものを分け、ゴミは捨てる。
(3)赤札作戦で、頻度が低いものを現場から離す
(4)現場にあるものを定置化する。
(5)作業時間の再チェック

を繰り返す。また、一緒に実施していく。
効果が目に見えてくれば、意識が変わってくると思います。

S様がご指摘のように,5Sが習慣になるまでは繰り返し指導が必要だ.

【T様のご意見】
 私は以前“ホテル客室”を管理、製造業の経験はありませんが、「職場での意識」は共通してますね。中国では「管理者」が仕事を管理し、従業員は「指示されたこと」をするという考えが強い。
 整理、整頓と言われても「個人の感覚誤差」があり、管理者がどの程度を求めているのかわからない。管理者は、まず自分が求める「標準形」を示す。中国人従業員は、その「標準形」に沿って仕事をする。
 また、この班長さん、周囲が「ゴミ」などが散乱していたそうですが、彼ら中国人は、「自分は清掃員ではない」という考え。清掃員にやらせろ!という感覚ですね。典型的な中国人ですね。

T様のご意見は典型的な中国人スタッフの行動原理を良く把握されていると思う.このように相手がどのように考えて行動しているかを理解したうえで指導とより効果的であろう.

【H様のご意見】
座学を終えた班長に納得して5Sを推進して貰うために、先ず現場へ行って
設備や治具からありとあらゆるモノに対して、
何のためにそこに有るのか、
いつどのように使うのか、
誰がどこで使うのか
について一つずつリストして行きます。
「赤札作戦」のようなものですね。

それを、日頃必要になる頻度・優先度に則って順位を付けます。

これには間接部門にも参加してもらい、
同じ尺度で現場現物を見て同一の認識に立って全員が知恵を出し合って改善を後押しすると良いと思います。

さらに恒久対策と水平展開として、
他部署の班長など第三者による組織によって、より客観的な水準に基いた評価と不具合箇所の発見に努めると良いと思います。相互の部署への現場査察や改善報告などに結び付けたいと期待します。

最後に、現場の定点観測すると良いと思います。

単に現場に存在する余計なモノをポイポイ捨てるだけでは現場リーダーは付いて来ないと思います。作業合理性や生産性だけ説いてもダメ。
客先品質保証部門へ図面変更を依頼したり、作業標準更新であったり、治具の設計製作をしたり、会社規定や人事評価基準を改めたり、間接的かつ強力なバックアップが欲しいと思います。

H様のご意見は詳細な手順も入っており,皆さんの参考になったのではないだろうか.
5Sをバックアップできるように人事制度を整えるというのは,すばらしい視点だと思う.

【Y.H様】

  1. 整理:いるものといらないものの区別をつけ、いらないものは撤去する
    (一定のスパンでそれを行い、その間ずっと使っていないものは撤去する)
    目的は、誤使用の未然防止
  2. 整頓:必要なものを必要なときに効率よく取り出せるような状態にすること
    (物の置場を決める)
    目的は、物の置場を決めることにより、それを探したりする無駄な作業の低減
  3. 清掃:職場のゴミや汚れなくし、きれいな状態にすること
    目的は、汚れていない状態を維持することにより、汚れたときの異変に気づく

清潔、しつけの前に、上記(1)~(3)を目的をよく説明すること、もし整理整頓清掃をしなかったらどうなるか=失敗事例を交えて説明する。それを理解させたうえで、手法はその班長に考えさせる。
5Sを一気にするより、上記の3Sを徹底させる必要があります。

Y.H様のご意見は目的を理解させたうえで,具体的な方法を考えさせる.
考えさせる手法で,OJTをうまく活用できると思う.
ただ教えてもらっただけではなく具体的に自分で実施してみる,ということにより考える力や応用力がつく.
特に知識偏重の中国人スタッフを鍛えるには良い方法だ.


このコラムは、2008年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第67号に掲載した記事です。

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5Sは知っているけど……

 先週から新しい改善プロジェクトが始まった.
3000人規模の比較的大きな工場だ.工程内不良削減,生産性改善をする.たぶん30%程度の改善は3ヶ月で達成できるであろう.

初日に改善チームのメンバーを集めキックオフミーティングを行った.
この工場にはまず5Sのうちの「整理」「整頓」を徹底して問題点を見えるようにしようと考えている.そこでキックオフミーティングでは5Sの話をした.

質問はないかと聞くと,一人威勢の良い班長さんが「5Sは知っているけど,どうやれば良いか分からない」と質問してきた.知識だけあって行動に移せない,中国人リーダに良くあるタイプだ.

彼の現場に行ってみると,作業台の上に各種ネジやワッシャが散乱している.
部品を入れたダンボール箱には何も表示がしてないという状態だ.

ただ知識として5Sを知っていても何の役にも立たない.
知識を能力に変えてやるにはOJT(On Job Training)が必要だ.

5Sに関する知識はあるけど,実際に何も出来ていない班長さんをどのように指導したら良いだろうか.
私の場合はまず「率先垂範」で手本を見せることにしている.

さて今週のお題です.
5Sの知識はある.言うことも立派.
でも彼の職場はごみダメの様になっている.

この班長さんにちゃんと5Sが徹底できるようにするにはどう指導したら良いだろうか.あなたが彼の上司だったらどう指導しますか?


このコラムは、2008年12月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第66号に掲載した記事です。

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5Sの寓話

 「頑張れ社長!」の武沢先生のメルマガに面白い寓話が載っていた.

ちょっと長くなるが引用してみよう.
——–
今年満7才になったばかりのよし子ちゃんは掃除が大きらいでした。おにいちゃんと共同で使っている子供部屋はいつもぐちゃぐちゃに散らかり、居間や食堂もよし子ちゃんが使った場所はどこも見事に散らかっていきました。それはお母さんの悩みのタネでもありました。

  • そんなよし子ちゃんがある日、一人で部屋をきれいにしています。
    ビックリしたおかあさんが理由をきいてみると、よし子ちゃんはこう答えました。
    「だってあした山川先生がおうちへきてくれるんだもん」
    そうです。あしたはよし子ちゃんが大好きな山川チヨ先生が家庭訪問にやってくる日だったのです。
  • 家庭訪問が無事に終わった次の日も、よし子ちゃんはひとりで部屋の片づけをしています。
    「きれいにしているほうが気持ちいいもん」とよし子ちゃん。どうやら整理整頓や掃除の喜びを感じ始めたようです。
  • おかあさんはとても喜びました。この機会をとらえてよし子ちゃんにきれい好きな女の子になってもらいたいと心から願いました。
    そこでおかあさんは一計をめぐらすことにしました。
    次の日曜日に親戚のマリエおば様のお宅を訪問することにしたのです。もちろん、よし子ちゃんを連れて。
  • マリエおば様は親戚を代表するきれい好き。よし子ちゃんのおかあさんとマリエおば様は事前に電話で打ち合わせをしていました。
  • いよいよ訪問の日がやってきました。
    よし子ちゃんは一年ぶりにマリエおば様と再会するので、道中は少し緊張している様子でした。
    到着し、ピンポーンと呼び鈴を押しました。マリエおば様がニコヤカに出迎えてくれました。
    「マリエおばちゃまこんにちは、よし子です」元気よくしっかりあいさつができました。
  • 広々とした明るい玄関先で靴を脱ぎました。
    すぐに中へ入ろうとするよし子ちゃんにマリエおば様は言いました。
    「くつをきれいにそろえてから中にはいりましょうね」
    「は~い」
    向きを玄関側にそろえて靴を置くこと、できれば中央ではなく、端っこの方に少しずらして置くことをよし子ちゃんは覚えました。
  • さりげなく、マリエおば様は靴箱の中をあけました。
    そこには、きれいに手入れされた靴やハイヒール、ブーツが整然と並び、お香の心地よい香りが伝わってきました。
    「うわぁきれい」とよし子ちゃん。
  • 靴箱の上には観葉植物がたくさん並んでいて、横にはピカピカに磨かれた大きな鏡がかかっていました。
    よし子ちゃんは「玄関と靴箱はこうやってきれいにしておくものなんだ」ということを知って、とてもためになりました。
  • 次にリビングに通されました。外は暑かったので、ノドがからからに乾いていたよし子ちゃんに向かってマリエおば様が言いました。
    「よし子ちゃんのために今日はジュースを7種類も用意してあるわよ。どれにする?こちらへおいで」とキッチンにある大型冷蔵庫の方へ手招きしました。
    冷蔵庫の中をみてまたビックリ。ここもまたきっちりと整理整頓され、使いやすそうにいろんなものが入っていて、とても美しかったのです。
    「へぇ、すごい冷蔵庫」
  • この日、マリエおば様のお宅を訪問したことで、よし子ちゃんは整理整頓と清掃に関する理想郷を見つけたようでした。
    そればかりでなく、その理想の姿を作るために毎日、どのように掃除したらよいのか、整理整頓にどの程度の時間を割けばよいのかも教わりました。掃除用品についてもレクチャーを受けることができて、よし子ちゃんはお掃除することがワクワクすることのように思えてきました。
  • 毎日掃除すべきところと、曜日を決めて週一回とか二回の掃除で良いところ、半年か一年に一回で良いところなどがあるのだと知って、よし子ちゃんも「おうちでもそうしようよ」とおかあさんに言いました。

●掃除がキライだったよし子ちゃんのターニングポイント

  1. 人を呼んだ
    山川先生という特別なゲストが我が家にやってきたのがきっかけになった。
    ゲストが来ると、きれいにしておきたくなる。特にそのゲストが大切な人であればあるほど入念に準備する。
  2. 理想の姿を実際に見せる
    百聞は一見にしかずというように、マリエおば様宅を訪問し、理想像を見学してカルチャーショックを受けた。
  3. システムを教える
    掃除のやり方、曜日ごとの掃除ローテーションなど、きれいな状態を保ち続ける知恵も教えてあげることで、やがてそれがよし子ちゃんの終生におよぶ習慣になるだろう。

——–

武沢先生はこの寓話を,モノを教える時の例として紹介された.私は5Sをうまく導入するための寓話として読んだ.

すなわち
整理・整頓・清掃の目的を与え(山川先生),
整理・整頓・清掃の到達目標(マリエおば様)を明確にした.
そしてそれをシステム化するというのは5Sで言えば清潔だ.

5Sが尻つぼみになってしまう事が多いのは,目的と目標がきちんと説明できていないからだ.

経営者がいくら5Sをちゃんとするようにといってもその目的が分からなければ,5Sをする必然性が理解でない.
整理・整頓・清掃をきちんとしなさいといっても合格基準が分からなければ,どこまでやれば良いか理解できない.

5Sがうまく行っていない会社は,経営者が5Sの本当の意味を理解していないのではないだろうかと思っている.5Sは見栄えを良くするためではなく生産性向上,不良低減,リードタイム短縮など収益性の改善が目的だ.これが理解できていれば,目的も目標もちゃんと明確にする事が出来るはずだと考えている.


このコラムは、2008年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第72号に掲載した記事です。

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5Sを継続させる方法について

メールマガジンの読者様からご相談のメールをいただきました。

※N様のご相談
 中国工場の総経理として赴任して3年目になります。 日本で仕事をしていた時は、特に5Sと言わなくても、皆がきちんとやっていてくれました。しかし中国では、毎日「5S!」とうるさく言ってもなかなか、思う様に浸透しません。本社の役員が出張に来るたびに、叱られています(苦笑)
中国人に5Sをきちんとやらせる事は不可能なのでしょうか?
上手くやるコツなどがあればぜひご教授ください。

現場を拝見していないのでどの程度なのか分かりませんが、文脈から判断すると日本と比較して悪い、と言う事だろうと思います。

まず一番目のご質問、中国人に5Sをきちんとやらせるのは不可能なのか?

私はそうは思っていません。5SやTPMに力を入れておられる日系工場で、すばらしい工場があります。指導者は日本人ですが、実践しているのは中国人です。
中国人経営者の工場で5Sに取り組んでいる工場もあります。
後者の工場では、頻繁に工場を見学に来る人があるようで、現場の班長さんが自信を持って自分たちの5Sの取り組みを説明していたのが印象的でした。

きちんと指導すれば、中国人にも5Sは理解出来るし、実践出来るはずです。

5Sをきちんとやるコツをお話する前に,なぜ5Sが上手く浸透しないのかを考えてみましょう。

上手く行かない典型的な例は、以下の三つのパターンです。

  • 経営トップや経営幹部が、自ら5Sに取り組んでいない。
     従業員は経営トップや幹部の事をよく見ています。上層部が本気でないと感じると、従業員は真剣に取り組みません。経営トップが本気である事を示し、幹部が率先して5Sに取り組む姿勢を見せる事が大切です。
    例えば、5Sを導入宣言したその月に,倉庫にある不動在庫をごっそり捨てる、位の事をやらなければなりません。
    当然、不動在庫の廃棄はコッソリやるのではなく、従業員全員が見ている所で、セレモニーとしてやります。廃棄の痛みと、それでも廃棄する意義をしっかり教えて,それを見せるためです。
  • 5Sの意義をきちんと説明していない。
     よくある例ですが、「掃除なんかしている時間があったら、仕事をします」と言う従業員がいます。または「今は忙しいので5Sは後回し」と言う幹部がいます。これは5Sの意義を理解していないからです。だらだらと時間をかけて掃除をするのが5Sではありません。
    5Sの意義と、それが自分にどんなメリットになるのかを、きちんと理解してもらわねばなりません。
  • 5Sの基準を示していない。
     作業も仕事も,基準が示してあるはずです。何処までやれば合格なのかを示さずに仕事を依頼すれば、仕事を受けた方は勝手に判断するしかありません。掃除をしろ、と指示をしても合格レベルを示さなければ、何処までキレイにすれば良いか判断出来ません。「掃除をしたつもり」で終わってしまいます。

5Sが上手く行かないのは、この三つのパターンに当てはまる事が、あるのではないでしょうか?これを排除しておけば、良いのです。

そして最後にもう一つ重要なコツをお伝えします。
簡単な事ですが、ここを見落としている人が多くいる様に思います。
それは「楽しくやる」ことです。

なんだぁ、と思われるかもしれません。しかしすべての事は人のココロから始まっています。楽しくなければ継続出来ません。
5Sとは整理・整頓・清掃・清潔を通して躾をする事です。
躾とは、正しい行動が出来る様にココロを整える事です。そうすれば行動は習慣となり、習慣が文化を創ります。これが5Sの目指す所です。だから5Sをやっている人たちのココロを忘れてはいけません。強制だけでは躾は出来ません。楽しみがなければ上手く行きません。

これはすべての「組織運営」に共通の事だと考えています。


このコラムは、2013年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第328号に掲載した記事に加筆したものです。

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機械油漏れ

 中国の工場を見て驚く事がたびたびある。プラスチック成型工場で床に油のしみ込んだウェスが敷き詰めてある。聞くと金型の温度コントロールに使っている油が、温調機から漏れているので広がらない様にウェスで防波堤を作ったと言う。
シリコンラバーの成形工場では、おがくずで漏洩油の防波堤が作ってあった。
日系工場でも温調機の下にオイルパンをしいて漏洩油が床に広がるのを防いでいるのを見た事がある。

こういう応急処置をそのまま放置するのは大変危険だ。
油が漏れているのだから、油漏れを止めるのが修理だ。
そして油漏れの原因を突き止め、油漏れの再発を止めて初めて改善と言える。
油が広がるのを防ぐ(ウェスやおがくずを防波堤にする、オイルパンをしく)のは応急処置でしかない。放置すればウェスやおがくずの交換、オイルパンの油を捨てる、等のムダな作業が発生する。

最悪の場合おがくずやウェスに火の粉が入れば工場が火事となる。

そんな事はないだろうと言う油断が、災害を招く事になる。
全く同様の事例もある。
「失敗百選」の著者である中尾教授は、ご自身の研究室でのボヤ事件を書籍の中で紹介されている。上記の事例と全く同様におがくずで漏洩油の堤防を作り、そのおがくずに溶接の火花が入ってぼやが発生。消化器で消し止めた。その後研究室の学生はそのまま帰宅した。しかしおがくずの中でまだ火種が残っていれば、翌日研究室に出勤した時は全て消失と言う事もあり得る。

「失敗百選」中尾政之著

おがくずは、油がなくても爆発する事があり得る。
おがくずが舞っている室内で、静電気放電や、電動機、スイッチから発生する火花により爆発する事がある。「粉塵爆発」だ。
粉塵爆発は2014年7月28日配信のメルマガ第373号でご紹介した。アルミニウム、小麦粉、綿、紙粉でも粉塵爆発は発生する。

5Sの基本は、汚れをきれいにする事ではない。汚れない様にする事だ。


このコラムは、2017年8月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第547号に掲載した記事に加筆しました。

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「三あ」の精神

 先週の雑感:「違いを認識する」に,I様からメッセージをいただいた.

※I様のメッセージ

 『民族性が違うのだから,と諦めればその先はない.違いを認め,共通点を見出す.その先に解決策があるはずだ』・・・この言葉に共感を覚えます。そうですよね、諦めたらそこで終わりなんですから。小生は、あせらず、あわてず、あきらめずの『3あ』の精神で改善をやってきました。時間はかかりますが、強い情熱と信念があれば大丈夫です。

「三あ」の精神を,私も再認識しないといけないと気付いた.

最近,日系顧客に「5Sが良くなってきた」といわれ喜んでいるいる香港人経営者の工場に指導に行った.
しかし典型的な「見せ掛けの5S」だ.きれいにしてあっても,機械の後ろは油漏れで汚れている.綺麗にする場所を間違えているのだ.

こういう人に「5Sをもう一度やり直し」といいにくくて(笑)「作業者も参加して清掃点検をしましょう」と指導した.

今の彼らが到達している位置を曖昧にし,ゴールを明確にしなかった.
彼らは,一度指導をしただけでもう自分たちで出来ると思ったようだ.
当然こちらは,次回以降の指導計画を準備していたが,次回の訪問日程を決めようとすると言葉を,濁されてしまった(苦笑)

今回は私の方に「あせり」と「あわて」が出てしまったようだ.
「清掃点検」の次にやらなければならないステップがいくつもあったのだが,これでは「あきらめず」のところには行けないかもしれない.


このコラムは、2010年10月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第173号に掲載した記事です。

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品質管理の形骸化

 少し古いが日経テクノロジーに「不良品が減らないのは、品質管理が形骸化しているから」と題するコラムがあった。

リーマンショック以降、日本の国内市場が縮小し、工場が海外シフトした事により「現場力」が低下したことで品質管理が形骸化し、不良が減らない、と言うのがコラム筆者の主張だ。彼が取り組んだ改善事例が二件紹介してあった。

一つはISO9001対応に成り下がり、形骸化したQC工程図の運用を元に戻した。
もう一つの事例は、5Sを徹底することにより現場の問題を見える化した。

確かにこれで一定の効果はあるだろう。しかし本当にこれだけで良いのだろうか?と言う違和感を持った。

ほとんどの日系工場にはQC工程図は有るだろう。
しかし新規工程を作らなければ、QC工程図にはほとんど変化はない。新機種を生産投入しても、QC工程図の改訂は無く、以前のQC工程図をコピペして新機種のQC工程図を作成する場合がほとんどだろう。
リーマンショック以前から、この様な対応で済ませていた工場が大半だろう。
リーマンショック以前から、ある意味ではQC工程図は形骸化していたと思う。

誤解を恐れずに言えば、元々QC工程図はレベルの低い工場を一定の品質レベルに揃えるための手法でしかない。QC工程図の運用を変えた所で、最低基準の品質レベルにしか到達しない。

日本製品の品質に定評が有ったのは、QC工程図の運用ではなく「現場力」の強さに有った、と考えた方が良いだろう。具体的に言えば、QC工程図には工程内検査を実施すると言う事は書いてあるが、検査規格をどう設定するかは書いてない。

例えば、電源装置の仕様に電圧保持時間の規定が有る。電圧保持時間とは、入力電源が切れてから出力電圧が保証される時間の規定だ。通常製品仕様は電源OFF後○○msは出力電圧を保証するとなっている。従って設計者は、電源保持時間が○○ms以上となる様に設計している。そのため生産技術者は工程検査の仕様を○○+αms以上と規定し、検査装置をプログラミングする。ここのαは、実使用環境と検査環境の差異を吸収するためのマージンだ。

しかしこの様な検査仕様を作成すると、ベテランの技術者から指導を受ける事になる。正しくは△△±□msと検査仕様を設定する。なぜならば、製品仕様が○○ms以上であっても、設計仕様は△△±□msにしかならないからだ。電圧保持時間に影響を与えるのはコンデンサーの容量であり、コンデンサー容量の仕様は±□%で規定されている。そのため設計者は△△ー□msが製品仕様の○○ms以上となる様に設計している。
製造が設計通りに作っているかどうかを確認するために上限も検査しなければならない、と言う理屈だ。
こういう「感性」が現場力であり、これを新人の生産技術者に教えて行く事が、現場力を維持することになる。QC工程図だけでは、現場力は取り戻せない。

5Sを維持改善するのも現場力だ。

現場力が低下してしまった原因は、リーマンショックでも国内市場の縮小でもない。バブル崩壊後、日本的経営に自信を持てなくなった経営者が、米国流の短期成果主義経営を盲目的に取り入れたのが原因だと考えている。つまり生産現場を要員化し、人的コストを変動比化した事で現場力が下がった、と考えるのが妥当だと思う。

景気の後退や国内市場の縮小が問題であれば、一経営者には解決方法はない。
人的資源を「リソース」と考えればコストになる。人的資源を「キャピタル」と考えれば、人財育成は必須の投資だ。

以前、バブル崩壊後の日本工場を訪問して驚いたことがある。
変種変量生産が可能な先進的な工場だ。しかしその工程で働いていたポニーテールの男性作業員は、手待ち時間に扇子を使って涼んでいた。その工程の責任者に問うと、派遣作業員なので直接指導が出来ないとの答えだった。私には言い訳にしか聞こえなかったが、この様な状況では、現場力を上げる事は出来ない。

不良を減らし、生産性を改善するためには、QC工程図の運用や5Sの取り組みを小手先で考えても効果は限定的だろう。自ら考え改善を継続する現場力を育成するのが本道だと考えている。


このコラムは、2015年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第424号に掲載した記事です。

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割れ窓理論

 建物の窓ガラスが割れている、壁面や地下鉄の落書き、ゴミのポイ捨てなどがあると、犯罪が増加し治安が悪化するというのが「割れ窓理論」だ。1980年代アメリカ有数の犯罪多発都市ニューヨークの治安回復に、割れ窓理論を取り入れたルドルフ・ジュリアーニ市長が治安回復を果たした事で有名になっている。

それ以前は、犯罪者の人格、性格、環境要因が原因となって犯罪を起こすという「犯罪原因論」や犯罪の機会を減らす事で犯罪を減らそうという「犯罪機会論」が主流であった。
人の性格や人格、貧困などの経済状態を短期間に変えることは困難である。犯罪機会を減らすために警察官のパトロールを増やす、銀行に警備員を置く、などの対策もコストがかかる。

それらに代わり窓ガラスの修繕や路上の清掃などにより犯罪を減らそうとした。その結果5年間で犯罪の認知件数は殺人が67.5%、強盗が54.2%、婦女暴行が27.4%減少し、治安が回復した。コミュニティの縄張り意識、当事者意識などにより住民が街の秩序を高めた結果、犯罪を抑止出来たと考えられている。

10年ほど前に指導していた日系工場では、従業員が製品を不正に持ち出さないように、生産ラインの出入り口に常時保安係がいて、出入りする従業員の身体チェックをしていた。
別の工場は、廃品回収業者とグルになり、梱包材料に製品や部材を混入させて廃棄することを心配し、保安係が立ち会って検査していた。

いずれも、人は悪さをするという「犯罪原因論」に基づき、監視・管理を強化する「犯罪機会論」で対応していたと言えるだろう。

では工場にとって「割れ窓理論」とは5Sであると考えてみてはどうだろう。
整理・整頓・清掃が整っていれば、何がどこにいくつあるか明確となる。上記のような不正を働くことは難しい。従業員の躾が徹底していれば、不正を働こうという気持ちにならないだろう。


このコラムは、2019年1月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第774号に掲載した記事です。

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続・5Sの力

 先週のコラム「5Sの力」に読者さまからメッセージをいただいた.

※H様からのメッセージ

 5Sは総論賛成、各論反対・消極・煩わしいで、達成は容易でない。だから、5S推進担当者はご推薦の本が求めたい気持ちに、なる。
 拾っても拾ってもまだまだあるゴミ工場、長年慣れ親しんだ汚くても感じない適応能力を持つ従業員の意識改革をトップは費用をかけず、精神力だけで大幅改善できるなら、こんなに良い話はない。まして、給与を1/3にする気のないトップには。
 <気持ちの変革(給与水準との関連:民度の高さ)、知恵の出方、投資金額、>の実例、実績を知りたいところです。

難しいお題をいただいてしまった(笑)私なりに考えた事を,お伝えしたい.

5Sを定着させるには,やはり経営トップの真剣な思いが必要だ.

枚岡合金工具の古芝兄弟もはじめは疑心暗鬼たったそうだ.
本当に整理・整頓・清掃をやっていれば,業績が回復するのか?そんな気持ちで取り組んでいる時は,反対派がどんどん各論反対を言って来る.しかし他に何をすれば良いか分からない.藁にもすがる思いで,反対派を説得した.

まだ使える機械を捨てようとすると,どっと反対意見が上がって来る.説得により,本当は捨てる事がもったいないのではなく,ろくに使わない機械を買ってしまった事がもったいなかったと,理解してもらえる.その結果,本当に必要な設備しか買わなくなり,設備を使い倒す文化が出来上がって来る.

今指導している工場も同様だ.
完成品倉庫にある不動在庫を整理してもらった.捨てるのがもったいない.当然経営者はそう思う.しかし本当にもったいないのは,売れない物を作ってしまった事だ.整理してみれば,完成品倉庫にスペースができる.その結果先入先出が容易にできる様になった.それまでは,先入先出のために完成品をムダに移動させていた.このムダが無くなれば,業績が上がらないはずはない.

中間在庫も減らしてもらっている.
7日分あったのが,3日分となった.中間在庫を減らすために,今まで加工機ごとにまとめ造りをしていたが,加工機のレイアウトを変え,流れ生産にした.今使わない物を作らない.中間在庫を減らすために,モノ造りの方法も改善できた.
これで生産リードタイムと,キャッシュフローが改善できている.

別の工場では,加工ごとに職場を分けて,まとめ造りをしていた.
これを真っすぐに並べてもらった.15日かかっていたリードタイムが,並べただけで1.5日になった.

まとめ造りを止めると,機種変更の段取り替えが多くなり,効率が悪くなるとさんざん抵抗された.しかしまとめ造りを続けていれば,段取り替えを短縮する改善チャンスは無くなる.

段取り替え時間を短縮するために,工具や金型を整頓する.必要な物が10秒以内に手に取れる様にする.これが整頓だ.
ただモノをきれいに並べておく事が整頓ではない.

清掃がしやすい様に,ゴミが散らからない様にする.ゴミが出る所にゴミ箱をおく.ゴミが飛散しない様にカバーを付ける.
清掃は作業そのものが,各自の感性を磨くモノだ.一種の躾けと考えてよい.しかし掃除に時間をかけても,何ら付加価値を生まない.掃除時間が短くなる様に改善する事が,5S活動だ.

これらの改善にコストはかかっていない.
積み上がった完成品を捨てる事により,ムダな資産を処理し節税になる.工具の移動台車などは,自分たちで作る.ゴミが散らからない様に作ったゴミ箱は,廃棄品置き場にあった段ボール箱だ.

枚岡合金の古芝会長は,先週紹介した著書で「ゴミゼロ工場を達成すればツキが回って来る」と言っている.これは単なるツキではない.工場は最高の営業マンだ.6000人も見学者が来て,5Sがしっかりできているのを見れば,当然仕事の話も入ってくるはずだ.

失礼ながら,枚岡合金の従業員が高給取りとは思えない.
給与の額よりは,仕事の達成感,仲間との信頼関係などの方が,士気を高める.そういう企業文化を創るのが5S活動の最終目的だと考えている.

枚岡合金・古芝会長の著書↓
「儲けとツキを呼ぶ『ゴミゼロ化』工場の秘密」


このコラムは、2012年6月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第253号に掲載した記事に加筆、修正しました。

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5Sの力

 5SでPQCDSEMが改善できる.PQCDSEMとは,生産性(Productivity),品質(Quality),コスト(Cost),納期(Delivery),安全(Safety),環境(Environment),モチベーション(Motivation)の頭文字だ.

5Sを部下の仕事と考えている経営者,お客様が工場訪問に来た時に見栄えを良くするために5Sをやらなければと考えている経営者には,この境地には到達できない.

以前このメルマガでご紹介した枚岡合金工具はバブル崩壊で売り上げが減り,赤字転落.古芝保治会長(当時は社長)は経費の節減に取り組んだが効果がなく,自らの給料を1/3に減らたが,改善の兆しも無かった.

藁をも掴む気持ちで参加した勉強会で,5Sを知る.
そして自社に整理,整頓,清掃の3Sを導入.従業員の不信感を,率先垂範で説得し続けた.

その結果,松下電器の社員が工場見学に来る,NHKが取材に来るなどをきっかけにして,黒字化を達成している.

またこの話をメルマガに書いているのは,Youtubeで枚岡合金工具の動画を見つけたからだ.
毎月2回開催している工場見学会は,6000人の見学者に達したそうだ.
赤字に喘ぐ町工場をどうやって建て直したのか,古芝保治会長,古芝義巳社長の言葉を聞く事ができた.

古芝兄弟は,整理,整頓,清掃の3Sしか言っていないが,「従業員の感性を磨く」のが3Sと言っている.これが躾けに他ならない.

本物の5SはPQCDSEMを改善し,倒産寸前の会社をも蘇らせる力を持っている.

Youtubeで枚岡合金工具を検索を検索すると動画が見つかる.是非ご覧いただきたい.
古芝保治会長の書籍も併せて読む事をお勧めする.
「儲けとツキを呼ぶ『ゴミゼロ化』工場の秘密」


このコラムは、2012年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第262号に掲載した記事に加筆しました。

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