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雑巾がけ

 私が小学生の頃(コミック「三丁目の夕日」の頃)は、教室の清掃は児童の仕事だった。床は雑巾がけをした。以前中国企業の指導をしたおりに、仲間の中国人コンサルにそんな話をしたことがある。

中国では、学校でも職場でも「清潔工」と呼ばれる専門の清掃担当者がいる。
汚す人と掃除する人の役割分担が明確になっている(笑)
私たちの世代は汚した人が掃除すると躾けられた。

当時指導していた中国企業からは「精益生産系統」(TPS)を指導してくれと依頼されていたが、TPSを実践できるレベルにはなく、これがTPSだといって5Sの指導をしていた(笑)仲間の中国人コンサルも日本の小学校におおいに興味を持ったようだが、今では子供達が教室の雑巾掛けをすることはないのかもしれない。

私の友人の工場は、従業員全員で床の雑巾がけをしている。
1万クラスのクリーンルームの塵埃度を測定すると、千クラスの値となる。多分毎日床を雑巾がけをしているからだと思う。クリーンルームの中は極力歩かない、掃除機をかけない。これは床に堆積した埃が空中に舞い上がるからだ。床を雑巾がけすればクリーン度が上がる、これにはちゃんと因果関係があるように思う。

ところで、当時指導した中国企業は我々に騙されて(笑)TPSの代わりに5Sの指導を受けたわけだが、5Sだけでも生産性は3倍以上になった。


このコラムは、2018年11月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第750号に掲載した記事です。

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工場診断

 先週は、深センまで無料工場診断に出かけた。自動車関連の中国民営企業だ。到着早々立派なオフィスビル、吹き抜けのエントランスに圧倒された。通された会議室、総経理室も大変立派だった。

相当実力のある企業の様であり、大いに期待した。

総経理、副総経理をはじめとした経営幹部の方々と若干の打ち合わせ後、現場を見せていただいた。

外観は大変すばらしかったが、生産現場は普通の民営企業だった。実力のある企業だという期待は、改善の余地がたくさんある企業だという期待に変わった(笑)

受注生産の割には、膨大な材料在庫がある。たまたま生産の谷間だったようで、前工程の部品加工職場では作業員が手持ち無沙汰にしていた。
最終組み立て工程では、大勢の作業員がよってたかって作業しているため、ムダが散見された。

このような生産をしていても、きっと利益が出ているのだろう。もっと業績を上げるチャンスはいくらでもありそうだ。時間的に詳細な分析は出来なかったが、部品在庫は半分以下、生産効率は30%アップを狙える。

この会社は精益生産(リーン・プロダクション)を導入するために、既にプロジェクトチームを組織していた。
しかし私からのアドバイスは、まず5Sで基礎造りをすることだ。その上で、最終組み立て工程の生産効率を向上する。後行程から改善するのは前行程の生産性だけを上げてしまうと、中間在庫がどんどん増えることになるからだ。

経営幹部の方々は、5Sが出来ていないのにリーン・プロダクションを導入しても砂上に建てた楼閣だと言う説明をすぐに理解してくれた。

彼らは他にもコンサル会社を呼んでいたようで、作業服を着たコンサルが来たのは我々だけだったそうだ(笑)


このコラムは、2012年5月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第258号に掲載した記事を加筆改題したものです。

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