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中国広州市、大量解雇を禁止・労働新法の施行控え

 【広州=阿部将樹】中国広東省広州市は労働者の権利保護を強化する労働契約法が来年1月に施行されるのに伴い、2007年中は企業や団体による従業員の大量解雇を禁止する通知を出した。新法は雇用の長期化などを促すため事業費の増加が予想されており、施行前の「駆け込み」リストラを防止する考えだ。
 20人以上の従業員を解雇、もしくは合計20人未満の企業や団体が10%以上の従業員を解雇する場合、事前に同市の労働社会保障局に報告することを義務付けた。破産寸前のケースや経営状態が悪化していると同市が認定した場合を除き、労働契約を解除できないとしている。
                                        (NIKKEI NETより)
ウォールマートも中国の買い付け部隊の80%100人を解雇したそうだ.
このブログの記事「新労働契約法(期間限定雇用)」でも書いたが,新労働契約法の施行を前に自衛策を考える経営者が出てきている.
これらの動きに対し広州市労働局がリストラ防止に動いた.
広州市労働局の通知は新労働契約法41条に定めた人員削減に関する条項を先行実施する形となっている.
第四十一条〔人員削減〕
以下の状況により、二十名以上の人員削減もしくは二十名には満たないが企業の総従業員数の十パーセント以上に当たる従業員の人員削減が必要な場合、使用者は三十日前までに労働組合もしくは全従業員に状況を説明しなければならず、労働組合もしくは従業員の意見を聴いた後、人員削減案を労働行政部門に報告しなければならず、その後人員削減を行うことができる。
繰り返しになるが,基本は経営と従業員の「信頼関係」である.
●きちんと信頼関係を構築した上で従業員のパフォーマンスを向上する.
●人員の新陳代謝が行われる仕組みと仕掛けを作りこんでおく.
これができていれば,新労働契約法によってぶれることは無いはずだ.
ところでこの新労働契約法は08年1月1日から施行開始だが,予定されている「細則」があと1週間に迫った今も発表されていない.

設計不良

製品の品質は設計段階でほぼ決まってしまうといっても過言では無かろう.
商品企画,設計段階で筋の悪い製品は,どんなに工場が努力しても品質はよくならないものだ.
従って,設計段階での品質の造り込み・レビューが重要である.
 あるメーカの中国工場を指導していて驚いた事がある.
半完成品の最初の通電検査で不良が大量に発生しているのである.数%というオーダーではなく数十%も不良になっている.
訳を聞いて更に驚いた.
回路に使用しているICのばらつきによって,このようなことはしばしば起きる.
その場合検査外れ品は回路中の抵抗を交換してやれば検査は合格し良品となる.
従って工程内に山ほどラインアウトされた半完成品は,後ほど作業者が抵抗を交換してラインに再投入するのである.
私に言わせれば,これは設計不良である.
このような製品はすぐにラインを止めて,設計を変更すべきである.
しかしこの製品は量産開始以来ずっと工場の努力で生産し続けてきたのである.
今更差し戻されても,というのが本社設計部門のいいわけである.
ここは100歩譲って,先にICの特性を測っておきランク別にしておく.出庫するICのランクにあわせて抵抗を変更して生産する.このように部品表と製造基準を変えてもらった.
これで不良は1%未満となり通常の生産が可能となった.
更にこの工場には,試作審査と量産移行審査の制度を導入させた.
試作時の生産性の問題を整理し,これがきちんと解決していなければ量産には移らない.これをこの2回の審査できちんと確認をしてゆくわけである.
審査を通らなければ,本社の設計部門に差し戻しである.
この制度を導入して一番喜んだのが,工場サイドのエンジニアだった.彼らは毎回本社設計部門の言われるがままに生産するしかなかった.それが自分たちで審査をしてだめなら「設計を受け取らない」「作らない」という選択があることを知り,モチベーションがすごく上がった.
もちろん「作らない」という負の対応ばかりではなく,今まで押し付けられていた生産を,自分たちで改善するという意欲が出てきた.
このように製造現場が変わると,本社設計部門も必然的に変わらなければならなくなる.現場の改革が,連鎖して全社を改革してゆくのである.

新労働契約法(期間限定雇用)

 中国にて会社を経営されている経営者・経営幹部の方は既にご存知の通り,2008年1月1日から新労働契約法が施行される.
基本的には新労働契約法は労働者保護の法律であり,雇用コストが上がる方向だ.
以前は期間を限定して雇用することが可能であった.
ほとんどの企業は作業員の給与上昇を抑えるため1年間の期間限定雇用としているのではないだろうか.
しかし新労働契約法では期間限定の雇用は2回までしかできず3回目からは無期限雇用契約を結ぶことを義務付けている.今までの方法では作業員の給与上昇を抑えることはできなくなった.
この法律改正をにらみ中国内資企業もいろいろな手を打っているようである.
中国内資の通信機器関連の有力企業は,勤続8年以上の職員に勤続年数に応じた経済保証金を支給することを条件に辞職手続きを要請したそうだ.辞職後,新労働契約法に対応した契約条件で再雇用.
これは新労働契約法に定める勤続10年以上の職員には,期限を限定した労働契約を結んではならないと言う条項をにらんでのものだ.すなわち勤続10年以上の職員に対する労働契約は定年までの物となる.企業側は,雇用コストの上昇を恐れて,このような「奇策」にでたのであろう.
しかし私には「愚策」にしか思えない.
きちんと社内に,職員の「新陳代謝」が行われる仕組みを準備しておけば,こんなことを考える必要はないはずだ.
ハイアールのように,各職場でパフォーマンスが下位10%になった者は翌年自動的に解雇,と言う大胆な人事制度が新労働契約法でも可能かどうかは定かではないが,方法はある.
せっかく職員を育成し10年も働いてくれているのに,なぜ期限限定の契約にこだわる必要があるのだろうか.
今回の新労働雇用法の施行は,「モノ造りは人造り」を基本としている日系企業には追い風なのではなかろうか.