カテゴリー別アーカイブ: 経営

続・内部監査

 先週のメールマガジンで、ISO9001の認証維持のために内部監査を「お義理」でやらずに、有効利用してはどうかと提案した。
その方法の一つとして部門間で相互監査をすると、部門間でベンチマーキング・ベストプラクティスを促進する事が出来ると書いた。

このコラムに対して、読者様からベンチマーキング・ベストプラクティスの例を教えて欲しいと言う要望をいただいたので、先週の続編としてお答えしたい。

相互監査をしたら良いと思い付いたのは、品証部門長として各部門の内部監査を実施していた時だ。

営業部門の内部監査を実施した時に、年度品質目標の説明を受けた。
その営業部門は、売り上げ目標などの業務目標も品質目標の中に入れていた。品質目標の中に売り上げ目標が入っているのに違和感を感じ、営業部長になぜ売り上げ目標を品質目標の中に入れたのか尋ねた。
彼の答えは、
「部内の月例会議で業務目標の管理をしている。品質目標の中に売り上げ目標や利益目標を入れておけば、その他の品質目標も自動的に月例会議で進捗を管理出来る」
と言う事だった。

つまり、品質目標の管理がお座なりになりがちなので、自部門の業務目標も品質目標の中に入れてしまった訳だ。
このアイディアにいたく感銘し(笑)他の営業部門にも、○○部長は業務目標をISOの品質目標に入れている、と教えこのやり方を推奨した。
その発展で、相互に監査し合えば、もっと気付きがあるだろうと考えて、部門間の相互内部監査をする様になった。

各部の部門長が内部監査員の資格を持っていれば良いが、そうでない場合は、有資格者が監査員となり、部門長はオブザーバとして参加していただく方式で運用した。


このコラムは、2014年3月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第351号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

百聞は一見に如かず

 随分昔の事だが、指導していた工場で工程内のムダを何度説明しても分からなかったが、ビデオに撮って見せたら一発で理解し、改善出来た事例がある。
「百聞は一見に如かず」パワーだ。

先週末は、お手伝いしている工場で交流会を実施した。この工場は5Sにしっかり取り組んでおり、5S工場のベストプラクティスといって良いレベルだ。

以前お手伝いしていた企業の幹部に、5Sベストプラクティス工場を見学して貰う事が目的だ。この企業の経営者は、お客様から5Sが素晴らしい工場だと言う評価を受け、工場見学で受注がとれる工場にしたいと考えているが、幹部が「事の重要性」に気が付いておらず、5Sの指導をしても、そこそこのレベルにしか到達しなかった。経営者と幹部間の5Sに対する認識ギャップを、5Sベストプラクティス工場を見せ、可視化しようとした訳だ。

実は、ビデオの百聞は一見に如かずパワーに気が付いていたので、5Sベストプラクティス工場の活動をDVDにして以前見てもらっていた。しかし「生」で見る効果が圧倒的だった。

経営者も5Sの成果をしっかり語ってくれたが、幹部職員が自分の言葉で語り、現場を案内する。これが訪問側の幹部の腑に落ちた様だ。
やはり「百聞は一見に如かず」パワーは絶大だと再認識した。

ホスト側の工場も、案内役となった幹部のモチベーションが上がる。見学者が来ているのを目にする一般作業員も、自分の工場が注目されている事に誇りを感じることができれば、モチベーションが上がる。

どちらにもプラスの効果がある。
今後こういう機会を増やして行くつもりだ。

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日本のモノ造りはトヨタ生産方式などの高度な生産システムばかりが紹介されてるが、5Sが社内の基礎的文化となっているから、トヨタ生産方式がきちんと機能する事を見逃していると言う事実に、多くの人が気が付いていない。

5Sを徹底したことにより生産性が4倍になった。
倒産寸前の会社が3S(整理・整頓・清掃)をやっただけで高収益企業となった。
等の事例がいくつでもある。


このコラムは、2015年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第436号に掲載した記事に加筆したものです。

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知識より経験

 10年ほど前までは、日系企業と言えども中国人従業員に教育訓練を施すのはムダだと考えている経営者がいた。せっかく教えても転職してしまう。そんな徒労感から、ムダだと考える経営者がいたのだろう。

台湾企業は、初めから割り切っている様に感じていた。朝採用試験に合格した作業者は、午後には生産現場に上がって来る。導入教育をしていると言っているが、2時間ほどでは社内や寮生活の決まりを説明しただけで終わりだろう。
工程を細分して作業を単純にしているので、生産現場でも短期間の訓練で作業が出来る様になる。一見問題は無い様に思えるが、仕事に対する意欲や、問題発生時に対応する能力はおぼつかない。問題が発生すれば班長が対応するが、班長も作業者として雇用され、ろくな教育訓練も受けずに昇格しているので、同じ事だ。

さすがに最近は、教育訓練がムダだと言う経営者に会う事は無くなった。
しかし教育訓練の成果が見えないと嘆いている経営者は相変わらず多い。

私なりに分析してみると、「知識偏重の研修」に問題が有りそうだ。
教育訓練の目的は、対象者の好ましい行動の強化だ。
知識を与えても行動には結びつかない。
知識を能力に変換し、行動を促す。そして行動が習慣になればゴールだ。

このプロセスで重要なのは、知識の習得ではない。知識の習得は初めの一歩だ。その後の能力、行動、習慣のプロセスは「経験」により達成される。

稲盛和夫氏は「知識より体得を重視する」と言っておられる。

「京セラフィロソフィ」

私の仮説だが、中国人はこの「体得」が苦手なのではなかろうか?
仮説というより、妄想といったほうがいいかもしれないが、「漢字」が学校教育を記憶偏重型にしているように思う。日本も同じように漢字を使うが、日本の子供たちは最初に「さいた、さいた、さくらがさいた」とひらがなで習う。しかし中国の子供はいきなり漢字だ。しかも覚える数は、日本の当用漢字の数を、はるかに上回っている。

記憶偏重の学校教育を受けた人達が、教育訓練をすれば知識偏重にならざるを得ないだろう。教育訓練を受ける側も、記憶偏重型の学校教育で育っている。
その結果、以下のような課題を持ったリーダが多くなる。

教えた事は出来るが、応用が出来ない。
知識はあり評論できるが、自ら課題解決が出来ない。
自ら問題を発見し、解決課題を設定出来ない。

そんな課題を抱えたリーダも、経験を通して体得させることにより、成長するはずだ。


このコラムは、2014年10月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第382号に掲載した記事に加筆したものです。

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作業員の離職率

 毎年日本の明治大学で、経営学部の学生さんに講義をしている。
毎週日替わりで現役の著名経営者が講義をする。私から見ると、大変羨ましい授業だ。その特別講義のトップバッターとして登壇させていただいた。

その講義の後に、中国人留学生からご相談を受けた。
彼女のお父様は、中国で300人規模の工場を経営されているが、従業員の離職率が高くて困っている。どうすれば作業員を定着させることができるか、と言うのがご相談の趣旨だ。

非常に問題意識の高い現実的なご質問だと感心した。
自分が20代の頃は、経営的な問題意識は微塵もなかったが、まだ20代前半の彼女は、経営者としての問題意識をしっかり持っている様に思えた。

「離職率が高い」と言う現象に対して、解決課題をどう定義するかを、まず考える。

「離職率を下げる」と言うのも解決課題になるが、他にも解決課題は設定可能だ。つまり離職率が高くて問題になるのは、作業員の熟練度が不足する、人員の確保が難しい、などの原因により、生産性、品質、納期などを、望む範囲にコントロール出来ない事だ。

従って「離職率を下げる」以外にも、「少人数で生産出来る様にする」という解決課題も出て来るはずだ。
又は「作業員の教育・訓練の質と効率を上げる」という解決課題とする事も出来る。
この解決課題に関しては、こちらの記事をご参照いただきたい。

「班長の仕事」

今回はとりあえず、「離職率を下げる」と言う解決課題に関して、根源的なアドバイスをさし上げた。

まず従業員が辞める理由を理解しなければ、離職率を下げる事は出来ない。
ここで多くの経営者や経営幹部が犯す間違いは、最近の若者は理解出来ない、と考える所に有る。

「違い」に着目すれば、当然理解出来ない。
たとえ「違い」を見つけることができたとしても、それがどうマネジメントの役に立つのか考えてみると良い。
今の若者は、上からの指示に従うことに慣れていない。では指示をせずに仕事をしてもらうことができるだろうか?
多くの一人っ子は、両親祖父母に大事に育てられたから、叱るとすねる。では全く叱らずに仕事を教えることができるだろうか?

「違い」を理解してもマネジメントの役には立たない。
「違い」に着目すれば、このように矛盾する事ばかり列挙することになる。

「違い」ではなく「共通点」に着目すべきだ。
70后、80后、90后どの世代にも、経営者でも作業者でも、人間としての共通点があるはずだ。その共通点に着目すれば、年代の差、職位の差は無くなる。
その共通点は、幸せになる事だ。幸せになる事は、人として共通の人生の目的と言って良いだろう。

仕事を通して成長することにより、幸せになる。これが実感出来れば、人は簡単には離職しなくなる。なぜなら、仕事と人生の目的が一致するからだ。
逆に言えば「仕事を通して成長することにより、幸せになる」と言う理念に納得出来ない人は、辞めてもらった方が企業にとって好結果となるはずだ。


このコラムは、2014年10月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第382号に掲載した記事です。

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究極の教え方

 先週土曜日に第一期TWI導入サポート企業様のキックオフミーティングを開催した。何度でも再現できる教え方を習得し、教え方を標準化することにより、指導者が変わっても、作業員が変わっても、作業がバラつかない様にする。これがTWI-JIの目指すところだ。「科学的職業訓練」と言う名前を付けてみた。
これと対極の位置に有るのが「伝統的職業訓練」だと考えている。伝統的職業訓練とは「徒弟制度」の事だ。

TWIの導入を推薦している私は、徒弟制度を否定しているかと言うと、実は逆で徒弟制度は究極の職業訓練だと考えている。師匠の元に住み込み、弟子として、便所掃除からお茶汲みまで仕事と関係のない事から叩き込まれる。効率は非常に悪い。しかし徒弟制度で受継がれるのは、仕事の技術ではなく「魂」なのだ。師匠の命は限りが有る。いつかは亡くなる。しかし師匠の魂は弟子達によって次の世代へと受継がれる。そしてそのまた次世代の弟子へと受継がれて行く。

徒弟制度は、師匠の「業」をその魂と一緒に、大河の如く未来に受継いで行くためのシステムなのだ。

しかし我々の様に、工場でのモノ造りに関わっている者にとっては、徒弟制度は効率が悪すぎる。ほとんどの従業員が出稼ぎであり、3年で全員入れ替わる様な職場で「匠の業」を人生をかけて受継いで行く訳にはいかない。科学的職業訓練に頼ることになる。

私には、中国人の弟子がある。さすがに寝起きまで共にする訳には行かないが、そういう人達には、自分の全てを伝えたいと考えている。そうすれば、私が死んだ後も、私が先輩から受継いだ経験や考え方が人々の役に立つはずだ。

こちらの本は、家具職人の秋山利輝氏の弟子の育て方が書いてある。
「一流を育てる 秋山木工の職人心得」秋山利輝著

書籍中にある秋山氏の言葉を以下に紹介する。
「技術がいくら一流でも、技術だけではすぐ追いつかれてしまいます。でも 心はすぐには真似できません。……
 感動してもらうモノ造りは、心が一流でないと出来ないのです。……
 「できる職人」ではなく、一流の心と技術を持った「できた職人」を育て たいのです。」


このコラムは、2015年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第414号に掲載した記事です。

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TQCを捨てたツケ

 

TQCを捨てたツケ

日本メーカーの高品質を支えてきたTQC(統合的品質管理)や、TQCに欧米のマネジメント要素を取り込んだTQM(総合的品質管理)をやめてしまったからでしょう。1990年代、いわゆる「バブル景気」の崩壊により、日本メーカーは全体的に自信を失いました。そこから脱するために、米国式の経営管理手法を日本メーカーは積極的に導入しました。MRP(資材所要量計画)やERP(統合業務パッケージ)、SCM(サプライチェーン・マネジメント)といったものです。
ところが、これらは主に財務管理を強化するためのもので、品質については後回しになってしまった。そして結果的に、多くの日本メーカーはTQCやTQMをやめてしまったのです。実際、この頃、日科技連などでも品質関連の講座の受講者が大幅に減ったと聞いています。

(以下略)

 自動車業界で大規模リコールが何件も発生している。日本メーカの品質力は落ちてしまったのだろうか?と言う問いに対し、日野三十四氏(モノづくり経営研究所イマジン所長)は、品質が落ちていると言うよりも停滞しているとしながら、その原因をバブル崩壊以降自信をなくした日本人経営者が安直に、米国の合理的経営手法を真似したために、手を広げ過ぎ忙しくなりすぎたからと分析しておられる。

私も、バブル崩壊後に米国式経営に飛びついたのが、日本の品質力を落とした原因と考えている。しかし日野先生の分析とは少し違っている。

米国式の株主至上主義経営が、短期の利益を追求するあまり「現場力」を落としてしまったため、日本の品質力が落ちたと考えている。つまり現場の作業者を、派遣要員、契約社員に置き換えることにより短期的な経営数字改善を狙う経営をした。その結果現場にあった「暗黙智」が霧散してしまったのだ。

米国式のMRP、ERP、SCMを導入すれば、導入当初は手が回らなくなるのは理解できる。しかしこれらのツールは、オフィスワーカの生産性を上げる物であり、程なく余裕が出て来るはずだ。
現場力が失われたと言う私の分析の方が、的を射ている様に思うがいかがだろうか。

現場力が失われた結果TQC、TQMなど現場改善の活動が下火になって来た。
TQC、TQM活動の総本山である日本科学連盟(日科技連)に登録されているQCサークル数が年々減少傾向にある。以前は登録QCサークル数の年間推移グラフが公表されていたが、それが「累積登録数」となり、最近は日科技連のHPを探しても、単年度の登録QCサークル数しか見当たらなくなった(苦笑)

もう一度「現場力」を取り戻すためにQCサークル活動を活性化すべきだと考えている。QCサークル活動停滞の歴史を教訓とすれば、以下の様な活動方針に変えてゆくのがよいと思う。

・管理職が積極的に参加する。
 QCサークル活動は「ボトムアップ」活動として、一般従業員の自主性に任せられていた。自主性に任せる、と言えば聞こえはよいが、現実には「丸投げ」状態となっており、業務からかけ離れた活動となってしまった。活動はサークルメンバーの自主性に任せるが、活動テーマ選定時には、経営幹部、管理職も一緒に議論する。活動の成果が業務に直結すれば、サークルメンバーの達成感も経営側の満足度も上がる。

・QCサークルメンバーの自己実現の場とする。
 QCサークル活動による、メンバー個人の知識・経験の成長実感、達成感を重視する。チームワークを通して感動共有を計る。

・楽しくやる
 QCサークル活動を通して、仕事の楽しさを実感する。

この様な方針で活動をすれば、QCサークル活動がまた活性化すると考えている。社内のQCサークル活動の成果発表会や、他社との成果発表交流会がより活性化を高めるだろう。


このコラムは、2015年9月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第442号に掲載した記事です。

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品質意識

 昔台湾人経営者から、ISO9001を取得したいので指導して欲しい、と依頼を受けたことがある。ISO9001を取得するだけならば、指導をパッケージ化して低価格で取得サポートしてくれるコンサル企業が有るから、そういう会社を探しなさいとアドバイスした。しかし彼は、ウチが必要なのは「ペーパーISOではありません」とおっしゃった。つまり認証が欲しいだけではなく、ISOを組織運営の基礎にしたいと考えておられた。大変意識の高い方だと感心し、工場を訪問した。経営者より先に、会議室に集まっていた品質部門の幹部と雑談していると、幹部からは「ウチの経営幹部は品質意識が低い」と愚痴を聞かされた。残念ながらこの会社の品質部門の幹部には、組織の品質意識を高めるのは自分の仕事である、と言う意識が低い様だ。

ここで「意識の高い経営者」「品質意識が低い経営幹部」と言う時の「意識」とは一体何を指すのだろうか、考えてみたい。

意識とは「起きている状態にあること」または「自分がおかれている状況を認識出来る状態にある事」と言う定義が有る。つまり覚醒している状態を意識がある、と表現する。昏睡状態に陥っている時は「意識が無い」外界の状況を認識出来る状態を「意識が有る」と言う定義だ。
この定義では「意識が有る・無い」を表すことができるが、冒頭の事例の様に「意識が高い・低い」を表現しようとすると違和感が有る。

あなたはどのように定義されるだろうか?
続きを読む前に、少し考えてみていただきたい。

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ホウレンソウ

 最近、現場リーダクラスの従業員(中国人)に「ホウレンソウ」を教えて欲しいというご要求が多くて、悩んでいる。なぜなら「ホウレンソウ」を教えなければならないのは部下ではなく、教えて欲しいと言っている上司の方だからだ。

以前、このメルマガで「ホウレンソウ」について書かせていただいた。
ホウレンソウ
続・ホウレンソウ

いささか古い本だが、「ホウレンソウ」の創始者といわれる山崎富治氏の「ほうれんそうが会社を強くする」という本を読んでみた。

 既に絶版となっている様だが、アマゾンでは古本が買える。
「ほうれんそうが会社を強くする」

山崎氏は駄洒落が好きと見えて、大変面白い比喩がたくさん出てくる。

読後も私の考えかたは、以前と変わっていない。
部下がホウレンソウ出来ないのは上司の責任である。ホウレンソウは部下がするものではなく、上司がするものである。という考えかただ。

もちろん、報告したり、連絡したり、相談するのは部下だろう。しかし、報告、連絡、相談が行われるようにするのは、上司の仕事だ。「ウチの部下はホウレンソウが出来なくて」と嘆く上司は「自分の指導が足りません」と公言しているのと同じだ。

仕事の指示をして、どのタイミングで報告をしなければならないかきちんとスケジュールに入れておく。どのような状況になったら、連絡や相談をしなければならないか決めておく。
これだけするだけでも、格段に「ホウレンソウ」は良くなるはずだ。

つまり「ホウレンソウ」は上司がするという言い方より、「ホウレンソウ」は上司が仕掛ける、という言い方のほうが分かりやすいかもしれない。

一見手間がかかるように見えるが、仕事を任せる時は、先に手間隙をかけておく方が結果的に楽になる。
また毎回こういう仕事の仕方をしていれば、部下の方から報告のタイミングと、連絡・相談が必要な状況を判断できるようになる。

もう一つ重要なことは、挨拶だ。
挨拶もしない人に相談をするなどありえないと思うが、いかがだろうか。部下があなたに挨拶をしないと嘆いてはいけない。あなたがまず笑顔で挨拶をすればよいのだ。

更にもう一つ。「ホウレンソウ」をしない場合の罰則規定を作る、という意見もあり驚いた。就業規定にこのような条文を入れるべきだという。

欠勤、遅刻、早退及び休暇の連絡等の届出事項、並びにその他職務に関連するすべての事項について、従業員は、ほうれんそう(日常的に行うべき報告、連絡、相談並びにあいさつ、合図等をいう。)を徹底しなければならない。これに違反した場合は、懲戒処分を行うことがある。

日本人的な感覚では、ここまで就業規定に書かなくとも、と考えてしまう。しかし決まりを全て明文化しておく方が、中国人には分かりやすくて良いのかもしれない。


このコラムは、2010年10月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第175号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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市場を理解する

 友人の紹介で、日本から出張で来られた工具メーカの方のご相談を受けた。
「中国の生の声を聞きたい」と言う曖昧なご要求での面談だった。

この会社は、工場で使用する工具の専業メーカであり、それなりのシェアを持っている。海外販売は、全て商社を経由したチャネル販売だ。中国向けの受注が3月から急増しており、中国で代理販売をしている会社から呼ばれて、展示会に参加する事になった。

社内には、中国市場への展開に反対する幹部も有り、市場実態調査のため出張に来られた。現地代理販売会社からの情報で、シェアトップ企業が中国撤退を決め顧客に撤退を内示をしたため、受注が急増している事が判明した。

中国からアセアン地区への日系企業転出など色々質問を受けた。私にはそんな事は重要ではないと思えた。

彼らには、二つのアドバイスをさし上げた。

一つ目は、エンドユーザの工場に行くこと。
商社に任せきりで、顧客接点を持たないと、顧客情報、市場情報が分からなくなる。

「私の話など聞いている場合ではない。あなた達の知りたい事は全てお客様が知っている」と檄を飛ばした(笑)

二つ目は、修理センターを現地に作る。
修理センターが近くに有れば、顧客は安心して製品を使ってくれる。しかし修理センターを立ち上げる目的はそれだけではない。
どのような不良が返って来るのかを知れば、顧客がどのように使っているのか分かる。修理センターに集まる修理品の声に耳を澄ませる。それが新製品開発や現行品改良のアイディアにつながるはずだ。

商社や代理店にマージンを支払って販売をしてもらっている。余分な販売経費をかけたくない、と言うのは理解出来る。しかし市場や顧客から遠ざかっては、チャンスは見えなくなる。
例えば3月から受注が急増していると言うのは、ビッグチャンスだ。もし現地の情報を事前に知っていれば、増産体制は既に完成しており、業績に結びついているはずだ。
チャンスを業績に変えるためには準備が必要となる。そのためには顧客・市場を知らなくては行けない。

経営・営業も「現場主義」が重要だ。会議室で商社や代理店の注文台数を検討するよりも、顧客の所に話を聞きに行く。
研究開発も同様だ。頭の中であれこれ新商品を考えるよりは、顧客工場や修理センターに行く。
そこには新製品のアイディアが多くあるはずだ。

投資が不可能ならば、方法を考えれば良い。
お客様の所に行くのが目的ではない。お客様の情報が集まれば良い。
修理センターを作るのが目的ではない。現地修理でお客様に喜ばれ、故障情報が集まれば良い。
本来の目的を達成するためにどうすれば良いか考える。


このコラムは、2014年6月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第367号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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雇用の未来

 『電脳化』によって今後20年で74%の仕事は自動化される、という衝撃的な研究結果があるそうだ。

工場労働者の大部分の仕事は、既にロボットによって代替え可能だ。

自動運転技術の完成度は相当高いレベルになっていると言う。高速道路を先行車に追従するくらいならば既に自動運転が実用可能のレベルらしい。この様な技術により、運転手という職業は無くなる。

既にアマゾンが実証試験をしているドローンによる宅配が一般化すれば宅配業という仕事に関与する人の大半は職を失う。

この様な「ガテン系」の職種ばかりではない。
AI(人工智能)技術の進歩により、株式・為替取引,投資・融資等の金融業界の職業もなくなる。

人との関わりが大きな比重を占めるサービス業も、同様な方法で計算機化が可能だ。ビッグデータから得た会話データを顧客に投げ、表情を分析する。表情分析で得られた情報、相手の応答をフィードバックして次の会話を選択すれば、KYな(雰囲気を読めない)人間よりよほどスムーズな会話をする事が出来るだろう。
バーテンダーの仕事が計算機化される確率は77%だそうだ。

ではコンピュータにそのようなアルゴリズムをプログラミングする職業は残るか?しかしコンピュータエンジニアも楽観は出来ない。
AI技術の一つのキモが、ディープラーニングだ。膨大なデータから自動学習し、得たい結果と原因の相関を一瞬に計算し、望ましい答えを出す。
従ってアルゴリズムを見つけ出すのも計算機化されてしまう。

私の様なコンサルタントの仕事もなくなるだろう。
では人は何をして暮らして行けばいいのだろう。する事が無くなれば、多分人類は退化し滅びるだろう。そしてコンピュータだけが残り,既に滅んだ人類にサービスする目的で世界を制御し続ける。

まるでSFの世界だ。
60年後の私は、コンピュータ支配と戦う革命戦士か、コンピュータにサービスを提供する服務員だろう(笑)


このコラムは、2016年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第505号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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