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二宮尊徳

 私と同じ様な年頃の皆さんは、小学生の頃、二宮金次郎が薪を背負い本を読んでいる銅像や石像が、学校に有ったのを覚えておられると思う。我々は二宮金次郎と覚えているが、大久保忠真から二宮尊徳と言う名を貰っている。「徳を尊ぶ」五常(仁義礼智信)を説き「推譲」を実践した二宮尊徳にぴったりの名前だ。

残念ながら、最近は二宮金次郎の銅像が小学校から撤去されていると聞く。
本を読みながら道を歩くと、交通事故に遭うと言うのがその理由だそうだ。我が子にまともな教育も出来ない親達が、そのような馬鹿な事を言っているのだろう。驚くべき事に、学校側もその意見に組していると言う。

「ゆとり教育」以降日本の教育行政は、目も当てられない状況だと思う。子供達は、我々の未来そのものだ。未来を育てる教育行政が此の様な体たらくでは、先行きが心配だ。

突然二宮尊徳の話が出て来て戸惑われている方も多いかもしれない(笑)
二宮尊徳の「道徳を忘れた経済は罪悪である。経済を忘れた道徳は寝言である」と言う言葉を稲盛和夫氏が引用しておられた。それで二宮尊徳の本を拾い読みなおしたと言うのが、真相だ(笑)

「二宮尊徳の経営学」童門冬二著

私たちは、二宮尊徳を寸暇を惜しんで勉学に励んだ人として記憶し、勤労・勤勉の姿勢を学んだ。しかし彼には、篤農家、財政再建者の側面もある。

二宮尊徳の信条は「利他」であり「推譲」だ。

「利他」と言うのは「利己」の対立概念であり、自分の利益よりは他人の利益を優先すると言う考え方だ。
「ウィン・ウィン関係」などと言う言葉がもてはやされているが、「ロス・ウィン関係」でちょうど良い。まずは相手に利を与える。ずっとそれで良い訳ではない。ずっとロス・ウィン関係であれば、いつかは関係の維持が出来なくなる。いわば「経済なき道徳」だ。経済なき道徳では、継続が出来ない。

先に「利他」を尽くせば、相手との信頼関係が出来る。信頼関係が出来れば、相手は喜んで利をこちらに与えてくれる。

「推譲」も同じ様な概念だ。
譲(ゆずる)に更に「推」がついている。ただ譲るだけではなく、積極的に譲る。

中国では、孔子が『恕』と言っている。
中文
『子贡问曰:“有一言而可以终身行之者乎?” 子曰:“其‘恕’乎!己所不欲,勿施于人。”』
日本語読み下し文
『子貢問とうて日わく、一言にして以て身を終うるまで之を行なうべき者有や。子日わく、其恕か。己の欲せざる所、人に施すこと勿かれ。』

弟子の子貢に「一生涯貫き通す事を一言で言えば何か?」と問われ「恕」であると孔子は答えている。「己の欲せざる事を、人に施してはならない」と解説しているが、ポジティブに言い直せば「人が望む事をして上げなさい」と言うことになる。

二宮尊徳も、我々も「譲」「利他」を中国から学んでいる。
現代中国では、バスで年寄りに席を譲る若者を多く見る。しかし「拝金」や「利己」がはびこっていると言わざるを得ない。他人を騙してでも「利己」を得ようとする。

我々がここで出来る事は微力であっても、無力ではない。自分の周りだけでも「利他」「推譲」の精神で接したい。継続すれば「積小為大」となる。そうなれば、きっと利は自分に返って来るはずだ。


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第372号に掲載した記事に加筆したものです。

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異文化理解より自己理解

 海外で仕事をしていると,その国と日本との違いに対しとても敏感になる.

  • 明らかに間違っていても謝らない.
  • 仕事より個を優先する.
  • 同僚の仕事には関心を払わない.
  • 上司に指示された事はやるが,指示されない事はやらない.
  • 直属の上司に指示された事はやるが,別の上司に指示された事はやらない.

こう言う日本とは違うリアクションを,部下から受ける事が多々ある.
この時に,なぜ彼らが想定外の行動をとるのかと考える.しかしこう考えているとなかなか彼らの行動原理を理解することができない.
日本はどうしてそういう行動をとらないか?と逆のアプローチで考えると,答えを見つけることができる様な気がしている.

そういう訳で,中国人の行動様式について書かれた書籍より,日本人の行動様式がどういう背景で成り立っているのかをテーマとした書籍に目がいく様になった.
海外に出ると日本がより理解出来る,と言うが,こう言う事なのだろう.

先週は「すみませんの国」と言う本を読んだ.
「すみませんの国」著者:榎本博明

私は,日本人の特殊性を「均一性」で説明して来た.
つまり日本民族が世界の中で特異な存在であるのは,日本社会が「均一」である事を要求することにより,日本人の特殊性が何代にも渡って形成された.
それに対して,大方の国は「多様性」が基本となっている.

日本人がすぐに謝るのを「均一性」で説明すると,その場にいる人々との調和を乱さない為に「とりあえず」謝っておく,と言うことになる.

著者の榎本氏は,日本は他国から侵略を受けた事がないから,謝る事に抵抗がない,と説明している.世界で侵略を受けた事がないのは,日本人,アラスカのイヌイット,ニューギニアのニモ族だけだそうだ.

そう考えると,中国は統治者が変わるたびに,侵略を受けて来た様なものだ.いちいち謝っていては,命が危ないと言う意識がDNAに刷り込まれているのだろう.

日本人がその場の調和(均一性)を保とうとする行動を,著者は「状況依存」と説明している.原理原則を通す事より,その場の状況に合わせて,場の雰囲気を乱さない様に行動する事だ.それに対し欧米は「原理原則」を優先する.

例えば,中国人部下に同僚の仕事を手伝う様に指示しても「それは私の仕事ではありません」となる.これは職務分掌と言う契約(原則)が優先であり,「困っている人がいれば助ける」と言う行動にはならない.
日本では職務分掌そのものが曖昧である事もあるが(笑)契約と言う原則より仲間が困っていると言う状況解決の行動をとることになる.

中国人の行動を理解するよりは,日本人の行動原理を理解した方が早い.
中国人部下の行動が理解出来たとしても,それを解決する事にはならない.
日本人の行動原理を理解すれば,どうすれば部下が好ましい行動をとれる様になるのかが分かるだろう.
もしくは自分が好ましいと思い込んでいる行動様式は,非常識だと気が付くかもしれない(笑)

異文化理解より自己理解.一度試されてはいかがだろうか.


このコラムは、2013年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第303号に掲載した記事です。

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企業交流

 毎週配信しているメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】の「今週のニュースから」のコラムでは、他社、他業種、他業界の事例を学び、自社の未然防止対策を考えようとしばしば申し上げている。
しかし「他社の事例を学ぶ」と言っても、そうは簡単ではない。私のコラムもニュース記事からの推測になっている部分も多い。(推測であっても、思考訓練として重要なので、自分なりにケーススタディを続けている)

ではどうすればより深く他社事例から学びを得られるか。多くの企業と交流するチャンスを持てば良いのだ。

私は職業柄、業種・業界を越えて色々な企業を訪問するチャンスがある。元は多品種微量生産の重電メーカの設計者、後に量産電源の品質保証だった私は、職業人生の中で、非常に多くの業種・業界の企業と交流があった。今の仕事になってそれが加速している。

今、顧問先で指導しているQCC活動で総務部門が「従業員満足の向上」と言うテーマで課題達成型のQCC活動に取り組んでいる。サークルメンバーに、まず従業員が満足して働ける理想状態を定義してみよう、と指導しているが、どうにも思い浮かばないそうだ。そこで、私の知り合いの工場にお願いして、工場見学交流会をしていただくことになった。

自社の専業に関わる技術については、そうは簡単に公開出来ないだろうが、従業員満足のためにどんな取り組みをしているのか、お互いに交流する事は可能だ。しかも業界が全く異なるので、お互いの利害関係は、害する所は極小となり、利する所が大きくなるはずだ。

この様な交流を上手くやるコツは、まずこちらから公開出来る情報を先に出す事だ。ジャンケンは後出しが必勝テクニックだが(笑)情報は先に出した方が上手く行く場合が多い。交渉ではないのだ。先方から情報がいただきたいのであれば、先に良質な情報を提供するに限る。

水は高いところから低いところに流れる。しかし情報は低い方から高い方に集まるのだ。私はこれを「逆エントロピー増大の法則」と呼んでいる(笑)(念のために申し上げておくが、熱力学にも、情報工学にも逆エントロピー増大の法則などと言う法則は無い)

現に私の周りにはその様な志しの高い人が集まっており、色々な交流が行われている。


このコラムは、2015年3月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第417号に掲載した記事に加筆したものです。「今週のニュースから」は「失敗から学ぶ」と改題し同じ趣旨で継続執筆しています。

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