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FMEAプログラム開発中

 先週は、TWIに関する説明・相談会、第一期QCC道場のキックオフなどあり、少し忙しくしていた。更にその時間の合間を縫って、FMEAの研修資料を作っていた。お客様の自社課題でFMEAの実践をするので、事例を準備する必要は必須ではないが、講義の時に実例があった方が分かりやすいと思い、事前に汎用の事例を作成している。

問題解決手法の研修にPM分析手法(現象を物理メカニズムで定義して故障原因を解析する手法)のプログラムがある。このプログラムでは事例として、使い捨てライターの機能不良をPM分析する演習課題を準備してある。

この課題を設計FMEAの事例に転用しようと、設計FMEAをやってみた。
35年程前に駆け出しの設計者として、工業用コンピュータの設計FMEAを実施したことがある。当時は訳が分からず「やらされている」感が強かった(笑)

その後品質保証部門の仕事をへて、FMEAの意義(故障・不適合の予防保全、潜在故障の発見による未然予防対策など)と効果(設計ノウハウの蓄積)に気がついた。

目的や意義をきちんと理解しないでFMEAを実践した時は、半ば嫌々やっていた。
しかし目的や意義を理解し、それが自組織に貢献すると分かれば、やりがいはあがる。

私は既に設計業務を引退しているが、技術者だった頃を思い出し熱中した(笑)
今まで何度もFMEAを教えて来たが、問題解決手法の一つとして教えていたので、簡単な事例だけだった。今回は、未知の故障・不適合を洗い出す所までやってみた。(私自身は使い捨てライターの設計をした事がないので、全てが未知の故障・不適合だ・笑)

私の仕事は、人を育成する事により組織を育成し、業績を上げる事だ。
この仕事は、やりがいがあり楽しい。しかも準備も熱中出来る。
一粒で二度おいしいキャラメルと同じだ(笑)


このコラムは、2017年5月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第527号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

18年前に電源喪失対策検討 「重大性低い」安全委結論

 東京電力福島第一原子力発電所が東日本大震災時に全ての電源を失い炉心溶融を起こした問題で、国の原子力安全委員会の作業部会が1993年に、全電源喪失対策を検討しながらも「重大な事態に至る可能性は低い」と結論づけていたことがわかった。安全委は13日、当時の報告書をウェブで初めて公開した。今後詳しい経緯を調べるという。

 報告書は安全委の「全交流電源喪失事象検討ワーキング・グループ」が作った。専門家5人のほか東電や関西電力の社員も参加。安全委の作業部会はどれも当時は非公開で、今回は情報公開請求されたため、公表した。

 米国で発生した全電源喪失の例や規制内容を調査した。その結果、国内では例がなく、米国と比較して外部電源の復旧が30分と短いことや、非常用ディーゼル発電機の起動が失敗する確率が低いなどとした。「全交流電源喪失の発生確率は小さい」「短時間で外部電源等の復旧が期待できるので原子炉が重大な事態に至る可能性は低い」と結論づけていた。ただし明確な根拠は示されていない。

(asahi.conより)

 FMEA(故障モード影響分析)についてはこのメルマガでも何度も紹介した。

FMEA

原子力発電所の設備用交流電源が失われるという、潜在故障に関して18年前に対策を検討したという。これがFMEAだ。

FMEAでは、潜在故障を、故障の発見容易度、故障の発生頻度、故障の影響度を評価する。
18年前の検討では、

  • 発見容易度:
    これは記事には書かれていないが、電源が失われればすぐに分かるはずだ。これはリスク点数は低いと判断しただろう。
  • 発生頻度:
    非常用のディーゼル発電機の起動が失敗する確率は低い、と判断している。
  • 影響度:
    外部電源の復旧が早いので影響は少ない、と判断している。

18年前の検討が不十分だったため、大事に至っている。
その内容を再検討してみたい。

発見容易度に関しては、異論はない。

  • 発生頻度に関して:
    故障モードを発電機の起動失敗だけ上げているところに問題がある。
    非常用発電機の故障、非常用発電機の水没、発電機燃料の喪失、電源配線系統の故障などもっと想定しなければならない潜在故障があったはずだ。
  • 影響度に関して:
    外部電源の復旧にかかる時間の絶対値が記載されていないが、外部電源が復帰するまでには、原子炉が危機的な状況(炉心溶融)には至らないと判断したのだろう。
    これも外部電源喪失の潜在故障検討が不十分といわざるを得ない。

潜在故障をきちんと列挙していれば、過去のデータ(米国と比較して外部電源の復旧が30分早い)が役に立たないのは明白だったはずだ。

FMEAではこれらの三つの指標を掛け算し、PRN(危険優先指数)を求める。PRN値が高いものから優先的に事前対策を講じておくというのが、FMEA手法だ。

しかし自動車業界などではPRN値が低くても、影響度の高い潜在故障モードには事前対策を施すようにしている。
「非常用電力の喪失」という潜在故障モードは、炉心溶融という最高レベルの故障影響度を持っていたはずだ。

最大の問題点は「米国で発生した全電源喪失の例や規制内容を調査した」というアプローチの間違いだと考える。米国の原子力発電と日本の原子力発電はその方式も、立地条件も異なる。安易に他の事例を、そのまま取り入れてOKとするべきではないだろう。

米国と比較して外部電力の復旧が(平均?)30分早いなどという過去のデータが論拠となるはずがない。

事故には莫大な授業料がかかる。
今回の東日本震災でも、かけがえのない人命を含む莫大な授業料を払っている。この中から、教訓を得ることが必要だ。

潜在故障モードとして不足しているところはないか、潜在故障モード発生原因の推定に不足はないか、総点検をしなければならない。

我々は常に進化している。
18年前の結論をどれだけ高く超えられるかが、次世代に継ぐ我々の責任だろう。

あなたの会社ではFMEAは常に進化していますか?


このコラムは、2011年7月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第214号に掲載した記事です。

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伊丹空港保安検査

 全日空(ANA)によると、26日午前7時すぎ、大阪(伊丹)空港の全日空便の保安検査場で、女性係員が手荷物にナイフを持ち込んだ乗客を見つけたが、誤って乗客に返却した。係員が誤った対応に気付き、約2時間40分後の同9時40分ごろから、搭乗待合室にいた他の乗客も含めて全ての手荷物検査をやり直し、空港ターミナルが混乱している。

 保安検査場を約2時間にわたって閉鎖し、検査場を通過した乗客らもいったん外に出すなどして安全を確認した。同社によると、この影響で午前9時40分以降の全便の運航を見合わせ、遅延や欠航が相次いだ。午前11時50分現在、到着便を含めて計14便の欠航が決まった。

 捜査関係者によると、40~50代男性が折りたたみナイフを1本所持し、係員が誤って「この長さなら大丈夫」と通したという。

(神戸新聞より)

 この事故により、南側ターミナルは午前9時30分ごろから午前11時59分まで約2時間30分にわたり閉鎖となった。伊丹発着の28便が欠航となった。
男性が持っていたのはアーミーナイフ。航空法第86条では、刃物などの危険物の機内持ち込みを原則禁止している。保安検査員は男から持ち込んで問題ない旨の説明を鵜呑みとし、保安検査を通過させた。

 ANAは保安検査場の入場を停止後、搭乗済みの乗客も降ろして再検査を実施。午前11時44分までに、南側保安検査場を通過したすべての乗客を一般エリアに誘導し、正午から保安検査を再開した。

問題の男は特定されず、事態収拾前にナイフを持ったままANA機に乗って伊丹空港を離れた様だ。

何が起きたのかは想像の域は出ないが、この事例をどう学ぶかを考えたい。

この事故の根本原因は、保安検査でナイフを男に返却した係員の「判断ミス」だ。保安検査では、ハサミでさえ機内持ち込みを禁止されることもある。

判断ミスに対する対策は、更に分析しなぜ判断を誤ったかを特定しなければならない。

係員のミスさえなければ、問題は発生していない。
しかし問題の影響がここまで拡大したのは、係員のミス発生後の対応に問題があったと考えられる。

我々製造業に馴染みのある表現で言えば、不良発生後の修復処置が適切でなく問題の波及範囲が拡大してしまった、ということになろう。

この様な事態が発生した場合の修復処置手順は以下の様になるだろう。

  1. 保安検査を通過した乗客(搭乗済みの乗客を含む)全員を保安検査前に戻す。
  2. 保安検査後のエリア、搭乗開始済みの機内で問題のナイフを捜索する。
  3. 捜索終了後再度保安検査を実施。

今回の事件の影響が拡大したのは、修復処置に手間取った、且つ乗客への情報提供が不十分だったからだろう。

しかも問題のナイフとそれを持った男は、発見されていない。

7時から9時40分まで修復処置に手をつけられなかったのは、この様な事態が想定できていなかったためと考えられる。今回の問題は保安検査で100%食い止めるめるべき問題ではあるが、この関門が破られたら、という想定をするのが未然防止だ。
「関門が破られたら」という想定をFMEAでは「潜在不良」と定義している。


このコラムは、2019年10月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第883号に掲載した記事に修正加筆しました。

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トヨタ、ヴィッツ8万台リコール 窓開け閉めで不具合

 トヨタ自動車は21日、乗用車ヴィッツ8万2226台(05年1月~8月製造)のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。運転席のドアにある窓を開け閉めする電気スイッチの内部がショートして、窓の開閉が
できなくなる恐れがある。これまでに32件の不具合が報告され、08年11月には、島根県でスイッチから発火した事案もあった。けが人はなかった。

(asahi.comより)

 トヨタがおかしい.
この8月にトヨタは中国市場で窓の開閉スイッチの不具合によりヤリスを含む68.8万台のリコールをしたばかりだ.

「トヨタ、中国で乗用車68万台をリコール 窓の開閉装置に不具合」

ヤリスは名前が違ってもヴィッツそのものだ.中国でリコールを発表して2ヶ月経ってから日本国内で回収を発表している.しかも中国で回収対象となっている他の車種,カムリ,カローラ,ビオスについては記事には何も触れられていない.

市場での発煙事故から14ヶ月かかっての回収発表だ.

国内市場向けの車は国内で生産しているだろうから,問題のスイッチメーカは中国で回収対象となったメーカとは違う可能性もある.しかし68.8万台の回収事故に対して,水平展開が図られなかったのだろうか.

簡単な事だ.
スイッチの故障モードに対してFMEAを全車種に展開すれば良いだけだ.

  • 検査容易度:スイッチベンダー,工程内でのこの不良モード検出度
  • 故障率:この不良モードの予測故障率
  • 影響度:この不良モードが完成車の運転に与える影響度
     パワーウィンドウが開閉できなくなったとしても,重大な影響はないと考えてはだめだ.運転手がパワーウィンドウに気を取られて運転ミスをすれば即人身事故につながる.これは完成車メーカが一番良く知っているはずだ.

この評価を使用しているスイッチの構造,製造方法ごとに実施すれば,どの車種が危ないかすぐに分かったはずだ.

トヨタはモノ造りに関しては自動車産業を超えて世界中の企業から尊敬・研究の対象となっている.
そのモノ造りの根底にあるのが「顧客中心主義」「品質第一の心」だと理解している.
最近立て続けに発生した回収問題が,トヨタ崩壊の予兆でないことを祈るばかりだ.

このような大きな回収問題を発生させても,まだ生き残っているのはトヨタという強い体力を持った大企業だからだ.中堅・中小企業ならばひとたまりもない.

設計段階,生産移行段階から安全レビューを実施するなど予防保全的な仕組みを構築する必要がある.


このコラムは、2009年10月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第122号に掲載した記事に加筆したものです。

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横浜市大口病院点滴殺人事件

 昨年9月に入院患者2人が連続して死亡する事件が発生。捜査の結果点滴に消毒用の界面活性剤が入っており、界面活性剤による中毒死と断定。この事件は既に半年以上経過しているが、いまだに犯人が分かっていない。

点滴に使用しない消毒液が死因である事から、過誤による死亡事件ではなく、意図を持った殺人事件と判断されている。

犯人は誰かを考えるのは、このコラムの趣旨と反する。
失敗から学び自社で同様な失敗の発生を未然に防ぐ、という立場でこの事件を考えてみよう。

当然製造業で同様な事故が発生する事はない。
しかし悪意を持った者によって発生する事故はあり得る。
会社に不満を持った作業員が、不良品を出荷品に混ぜる。
設備の設定を変更し、大量の不良損失、又は設備の故障を発生させる。

この様な悪意による事故は、残念ながらあり得る。
こういう事故が発生する組織に共通するのは、従業員の職場に対する満足度が低いことだ。

過去に指導した工場で経験した事例は、春節前に退職を願い出たが、繁忙期のために退職を却下した事例だ。退職が認められればその月の給与は支払われる。しかし故郷に戻らねばならない事情がある者は、1ヶ月分の給与を諦め自主退社する事になる。そのような従業員が故意に不良品を出荷品に混入させた事がある。検査が終わった後で不良品を混入させれば、FQCの抜き取り検査で偶然サンプリングされなければ、そのまま出荷してしまう。

この様な悪意による事故を防止するには、職場の人間関係を改善するのが根本対策だと考えている。しかしそれだけでは不十分だ。人には弱い心を持った者もいれば、正しい心を見失う状況もあり得る。

悪い事が出来ない状態を作っておく事が大切だ。
作業の見える化とトレーサビリティが対策のキーワードとなる。

不良品混入の事例で言えば、検査合格品が工程内に滞留している状況をなくす。
不良品の員数管理、識別・隔離管理を徹底すれば、不良品を混入させる事が困難になるはずだ。

点滴事故の場合は、作業記録として録画をしておけば「抑止力」となる。
事故が発生した病院では、消毒液を有色のモノに変更したそうだが、これでは消毒液の混入は防げても、他の薬剤の混入は防げない。真の再発防止対策とはいえない。
薬局からの出庫記録、ナースセンターでの受け入れ記録および作業記録が、トレーサビリティの記録となる。

薬剤の発注、受け入れ、出庫、ナースセンターでの受け入れ、調合作業、患者への処置と工程を分割し、それぞれの工程で発生しうる不適合(潜在不良)を列挙し、それを防止する方法を検討する。
製造業の我々は、工程FMEAとして活用している手法だ。

こういう検討を事前にしておけば、「点滴の調合中にナースコールが発生する」ことにより作業を中断、作業再開時に間違える、という潜在問題が見つかる。このようは潜在問題に対して、事前に対応策を検討しておくことが可能となる。


このコラムは、2017年5月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第527号に掲載した記事に加筆修正しました。

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失敗ノウハウの蓄積

 メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】の「ニュースから」のコーナーは、ニュースの中から教訓となる不適合事例をピックアップして、その再発防止を考えるコラムとしてスタートした。
事例として取り上げた不適合事例・再発防止を抽象化することにより、自社に適用すれば同類の不適合事故を未然に防止することが出来るだろう。そんな思いで、市場回収事案、鉄道事故、不祥事事案などを取り上げ、原因を推定し再発防止対策を考えて来た。実際には当事者ではない私には真の原因を知る機会はなく、原因がこうならばこんな再発防止対策が有効になるのでは?と言うシミュレーションだ。こういう訓練を繰り返すことにより、現実に発生した不適合に対応する能力も高まると考えている。

自分自身の訓練になるとともに、読者様にも気付きの機会を提供出来たのではと自己肯定している(笑)

しかし問題も有る。
ニュースからそのような事例を探すのに非常に時間がかかる。メルマガのネタを探しているはずが、途中からネットサーフィンになってしまったりする(笑)

そこで次週から「ニュースから」のコーナーを「失敗から学ぶ」とタイトルを変え、ニュースにこだわらず、広く失敗事例から題材を選んで、記事を書こうと考えている。

もちろん読者様から事例をご提供いただくのも大歓迎だ。

痛い目に遭って学ぶ、と言うのは効果がある。人の行動モチベーションは痛みを避ける、快楽を求める、の二通りが有ると言う。当然痛い目にあった経験は二度と繰り返さない様に再発防止の努力する。こういう経験が失敗ノウハウの蓄積となる。

しかしこの学びには失敗によるコストがかかっている。他人が経験した失敗から学ぶことが出来れば、コストをかけずに未然防止が出来る。人の痛みから学ぶと言うことは、不謹慎だが快楽と言っても良かろう(笑)

しかし痛みの経験がない分、身にしみない。
他人の失敗から学んだ失敗ノウハウを蓄積する方法を持たねばならない。

私は自ら経験した失敗、他人の失敗から学んだことをFMEAの潜在不良の項目に追加すると言う方法をとっている。設計FMEAでも工程FMEAでもこの方法は活用できる。

FMEAを単なる飾りにしない様に、ノウハウをどんどん蓄積する器にしたら良いと考えている。このコラムが、読者様の失敗ノウハウ蓄積のヒントになれば本望だ。


このコラムは、2016年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第467号に掲載した記事に加筆修正しました。

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