トヨタ、ヴィッツ8万台リコール 窓開け閉めで不具合


 トヨタ自動車は21日、乗用車ヴィッツ8万2226台(05年1月~8月製造)のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。運転席のドアにある窓を開け閉めする電気スイッチの内部がショートして、窓の開閉が
できなくなる恐れがある。これまでに32件の不具合が報告され、08年11月には、島根県でスイッチから発火した事案もあった。けが人はなかった。

(asahi.comより)

 トヨタがおかしい.
この8月にトヨタは中国市場で窓の開閉スイッチの不具合によりヤリスを含む68.8万台のリコールをしたばかりだ.

「トヨタ、中国で乗用車68万台をリコール 窓の開閉装置に不具合」

ヤリスは名前が違ってもヴィッツそのものだ.中国でリコールを発表して2ヶ月経ってから日本国内で回収を発表している.しかも中国で回収対象となっている他の車種,カムリ,カローラ,ビオスについては記事には何も触れられていない.

市場での発煙事故から14ヶ月かかっての回収発表だ.

国内市場向けの車は国内で生産しているだろうから,問題のスイッチメーカは中国で回収対象となったメーカとは違う可能性もある.しかし68.8万台の回収事故に対して,水平展開が図られなかったのだろうか.

簡単な事だ.
スイッチの故障モードに対してFMEAを全車種に展開すれば良いだけだ.

  • 検査容易度:スイッチベンダー,工程内でのこの不良モード検出度
  • 故障率:この不良モードの予測故障率
  • 影響度:この不良モードが完成車の運転に与える影響度
     パワーウィンドウが開閉できなくなったとしても,重大な影響はないと考えてはだめだ.運転手がパワーウィンドウに気を取られて運転ミスをすれば即人身事故につながる.これは完成車メーカが一番良く知っているはずだ.

この評価を使用しているスイッチの構造,製造方法ごとに実施すれば,どの車種が危ないかすぐに分かったはずだ.

トヨタはモノ造りに関しては自動車産業を超えて世界中の企業から尊敬・研究の対象となっている.
そのモノ造りの根底にあるのが「顧客中心主義」「品質第一の心」だと理解している.
最近立て続けに発生した回収問題が,トヨタ崩壊の予兆でないことを祈るばかりだ.

このような大きな回収問題を発生させても,まだ生き残っているのはトヨタという強い体力を持った大企業だからだ.中堅・中小企業ならばひとたまりもない.

設計段階,生産移行段階から安全レビューを実施するなど予防保全的な仕組みを構築する必要がある.


このコラムは、2009年10月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第122号に掲載した記事に加筆したものです。

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