中国華南の景気


 よく利用している白タクの運転手さんが「もう金融危機の影響はなくなったよね」と話しかけてきた.

彼は道の混み具合で景気の動向を計っているようだ.
最近はコンテナ車が多くなり道が混んで来たと言うのだ.
それぞれに自分なりの視点で世の中の動向を感じ取っているのだろう.

日本では失業率や有効求人倍率などから見ると,まだまだ不景気から脱しきれていないようだ.

同じ観点で中国華南の景気を見るとちょっと違和感を感じる.
世の中では「世界金融危機」といわれていたころから,作業員を集めにくくなっているという声をいろいろな場所で聞いている.

いま少し景気がよくなってきている時点ではさらにその声が大きくなってきた.
先日も知り合いの経営者から,どこかに作業員は余っていないかと相談を受けた.

作業員を集め切れなくて,人材派遣会社に多額のマージンを支払って集めている工場もあるほどだ.

あれだけたくさんいた工員さんたちはどこへ行ってしまったのか?

景気が悪くなり,田舎に帰った工員さんたちは都会に出てくるのを様子見している.余っていた工員さんの大部分が自動車関連工場に吸収されてしまった.
などなどいろいろな憶測が飛び交っているが,実は第三次産業に人材が流れ始めているというのが正解ではなかろうかと思っている.

内陸部の安くて良質な労働力で世界の工場として発展した華南であるが,ジワリと製造業離れが始まっているような気がしてならない.

先進国の発展過程を見ても,遅かれ早かれその流れは間違いなく来る.少人数でのフレキシブルなモノ造りに早くシフトしてゆかないと苦しくなるだろう.
受注量が増え始めた今を乗り切るために作業員をかき集めることも必要だが,生産改革に向けてまず一歩を踏み出すべき時期だと考えている.


このコラムは、2009年8月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第114号に掲載した記事に加筆したものです。

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