昔日本国内(長野県)でキーボードを生産していただいていたことがあります.
このキーボード量産開始後にちょくちょく変な不良品が納入されました.キーボードのアルファベットの位置が間違っていたりするのです.例えば「A」と「S」の位置が違っていたりする.
実はキートップのアルファベットはキーボードを組み立てた後に印刷されます.
タンポ印刷といって平面でないところに印刷する技術を使っています.従ってこういう不良は発生するはずがない.
よ~く工程を見てみると,キートップの印刷がかすれたりしたものは,キートップを交換して修理しているのです.
印刷用のタンポを印刷機に装着した後多少微調整が必要で,印刷開始後のいくつかは,印刷が鮮明でない部分が発生してしまう.
こういうものは修理されるわけですが,当時,この工場のおばちゃんたちはひらがなが印刷されていないキートップにあまりなじみがなく,配列を間違えてしまうのです.
そこで修理用のキートップの置き方,交換したキートップとの数量の突合せの方法,チェック用の透明シートなどの改善をしました.
実際こういう不良が事前に想定できるかどうかが,腕の見せ所です.いわゆる工程FMEAの不良モードをどれだけたくさん上げられるかということです.
上記のような経験を通して学び,それを水平展開して考える.今回の例も「キートップの間違い」という理解をしないで,修理中にどんな間違いが発生しうるのか,と抽象化して考えるのです.
そしてこうして得られた経験智は,工程FMEAなどの表に埋め込まれて後輩に伝えられる.
不良が発生した時の「後始末」だけではなく,不良が発生する前に「前始末」がどれだけできるかが重要です.