月別アーカイブ: 2012年1月

#08:躾は異次元

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
躾はまず挨拶.おはようございます,ありがとう,と言わせる.
言葉が変われば心が変わる.心が変われば行動が変わる.

5Sでの躾の定義は,人がきちんと決りを守るよう,よい習慣を身につけさせること.つまり人の行動規範を養うことだ.
日本人の行動規範には,「世間様に申し訳がない」と言う心理がある.躾により養われた「世間様」が日本人の道徳を支えている.
一方,欧米人は「神」が行動規範の根底にある.信仰が欧米人の道徳を支えている.その躾の中心となっているのは「神」であろう.
中国人の行動規範の根底にあるのは「世間様」でも「神」でもない.中国人の道徳を支えているのは「自分と家人の利益」のように見える.「家人」とは血縁,地縁でつながった人たちである.
では中国人に対する躾はどのように行われるべきか.「信仰」や「世間様」ではない.自分自身のため,仲間のためが中心となった躾だ.つまり,自己成長のため,仲間に迷惑をかけないための躾でなければ,理解しにくいだろう.

誰が躾をするのか
子供の躾をするのは両親.学生の躾をするのは教師.部下の躾をするのは上司だ.子供が自分自身で自分を躾るというのは考えにくい.子供は躾を守るもの.弟子が師匠の教えを守るのと同じだ.これは作法と言う.
5Sでは整理・整頓・清掃・清潔と並んで躾があるが,躾は次元が違う.新人には先輩が,部下には上司が躾をする.究極的には,躾をするのは社長だ.
家庭では,夫が妻に,妻は子供に,兄姉は弟妹に躾をすることにより,家風と言う行動規範ができ,代々受け継がれてゆく.
企業も同様にして,社長が原点となり,企業文化を築かなければならない.それが躾だ.

躾で行動開発
躾とは知識を与えることでも,能力を付けることでもない.好ましい行動を習慣にすることだ.
「おはよう」と言うことで,コミュニケーション行動も活発になる.「ありがとう」と言うことで,感謝の気持ちが生まれ,人に感謝される行動を起こそうとする.
挨拶をすることを,習熟していても何も始まらない.挨拶が出来るようになり,それが習慣となるまで躾ける.そしてそれが習性となれば,行動が起こる.
整理・整頓・清掃・清潔の4Sも同様に,まず習熟させる.どうやるかを教えるだけでは,足りない.なぜやるかを教える.なぜは「神様が見ているから」でもなく「世間様が見ているから」でもない.「自己成長のため」「仲間のため」だ.
毎日4Sをやれと大きな声を出すのが躾ではない.命令・服従型の推進では,士気は上がらない.
部下と一緒に整理・整頓・清掃をする.そしてそれらの問題点を改善する(清潔).上司の率先垂範が部下の士気を上げる.士気が上がれば,部下は自ら行動を起こす.
躾とは,相手の成長を願う思いやりと,模範を示すことだ.躾で部下の士気を上げ,自発行動により5SのPDCAがスパイラルアップする.


【今月の一言】
躾で5Sに仰角をつけよ!

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年2月号に寄稿したコラムです.

#07:5Sのスパイラルアップ

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
整理・整頓・清掃・清潔はPDCA

倉庫に物があふれてくると「整理しろ!」と号令をかける.職場が散らかってくると「整頓しろ!」と大きな声を出す.設備に埃や汚れが溜まってくると「清掃をしろ!」と叱る.
5Sを維持・継続するのは,疲れるものだ,と考えている経営者.5Sで重要なのは躾だ,毎日根気強く指導をしなければならない,と言う5S指導者.どちらも,まだ今一歩,5Sの理解が不足している.
先月号の本コラムを読まれた読者は,5Sの維持・継続のためには,「清潔」に力を掛ければよいのだと,気付かれたと思う.つまり,整理・整頓・清掃を維持・改善する仕組みが清潔だ.清潔をしっかりすれば,毎日大きな声を出さずとも済むはずだ.

PDCAと5S
過去5回のコラムにより,整理・整頓・清掃・清潔の単独での意味はご理解いただけたと思う.この整理・整頓・清掃・清潔を,プロジェクトの管理手法・PDCAと同様に,サイクルとして考えてみよう.
PDCAとは,まず計画を立てる(Plan),計画を実行する(Do),実行の成果をチェックする(Check),チェックの結果により改善する(Action),と言う一連のサイクルを何度も回してスパイラルアップすることである.
5SもこのPDCA手法と同じだ.整理によりまず要らないモノを捨てる.残した必要なモノは整頓により,決まった場所に,決まった数だけ置く.清掃により,整理・整頓がきちんと出来ていることを確認する.清潔により整理・整頓・清掃を改善する.この一連のサイクルを何度も回し,管理レベルをスパイラルアップさせるのが5S活動だ.

5Sのスパイラルアップ
まず要らないモノを整理する.要らないモノがたくさんあれば,要らないモノまで整頓しなければならなくなる.モノがたくさんあれば,清掃が行き届かなくなる.
要らないモノを捨てると言うことは,必要なモノだけをしっかり管理するための計画ともいえるだろう.
そして必要なモノを効率よく運用するために,整頓を実行する.
つまり必要なモノが,必要な時に,必要な場所で,すぐ手元に来るようにしておくことが,整頓を実行すると言うことだ.
整理・整頓の結果は,毎日の清掃でチェックする.
清掃の結果見つかった整理・整頓の問題,清掃自身の問題を,改善するのが清潔だ.こうして一巡したサイクルは,更に必要なモノ・不要なモノを峻別し,整理・整頓・清掃・清潔のサイクルを再び回し,スパイラルアップされる.
ところで,PDCAの中に5番目のS・躾が出てきていない.躾の役割は,整理・整頓・清掃・清潔のスパイラルアップに仰角をつけることだ.
詳しくは次回のコラムで.

【今月の一言】
5SのPDCAを回せ!

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年1月号に寄稿したコラムです.