以前xbar-R(エックスバーアール)管理図についてご紹介した.
今回はX-Rs管理図をご紹介したい.
xbar-R管理図は,計量値データで工程に異常が発生していないことを管理する方法だ.製品からサンプルを数個抜き取り,その測定データの平均値(xbar)とデータの範囲(R)が工程の実力範囲±3σに入っているかどうかで,正常か異常かを判断する.
しかし,サンプルの計測が複数個出来ない場合もありうる.
例えば,サンプルの計測にコストがかかる場合.
または連続生産の様に,サンプルが集まるのを待っているとどんどん製品が完成してしまう場合は,極力早く合否判定をしたい.
このような場合にはサンプル1個だけのデータで,管理図を描きたい.
そこで力を発揮するのが,X-Rs管理図だ.
管理図の作り方は,xbar-R管理図とほぼ同じだが,データが1個しかないために,平均値も範囲も計算が出来ない.
平均値の代わりに,サンプル1個のデータ,範囲の変わりに一つ前のサンプルとの差分Rs(移動範囲)を使う.
データが少ないので感度は低いが,サンプリングにかかるコストは少なくて済む.
また連続プロセスのように製品がどんどん出来てくる場合は,1個のサンプルで直ちに管理状態か否かが判断できるので,異常が見つかった場合に廃棄しなければならない不良が少なくなる.
X-Rs管理図の作成手順は以下のとおり.
【手順1】データを時間順に並べる.
【手順2】移動範囲を求める.
Rsi=|Xi-1-Xi|
【手順3】Xの平均とRsの平均を求める.
【手順4】管理線を求める.
X管理図
Rs管理図
【手順5】グラフ用紙にX管理図とRs管理図を描く.
中心線(実践)と上下の管理限界線(点線)を入れる.(図には管理限界線を赤色線,中心線を黄色線で示した)
X管理図
Rs管理図
月別アーカイブ: 2012年2月
半導体デバイスの信頼性技術
書籍名:半導体デバイスの信頼性技術
松下電子工業 (編集)
出版社: 日科技連出版社 (1988/07)
この本は初版が出てから既に20年以上経っています.
半導体デバイスの世界はこの20年でものすごい進歩をしています.しかしこの本は,未だに重版を続けています.モノゴトの基礎は普遍なんでしょうね.
半導体エンジニアばかりではなく,半導体を応用する人,信頼性エンジニア,不具合解析エンジニアなど多くのエンジニアの「教科書」として,まだまだ現役で活躍していると思います.
私も昔この本のお世話になりました.
当時半導体素子の不良が発生し,その解析方法や不具合のメカニズムなど,本書を何度も読みました.
「水和腐食」と言う言葉も,この本で勉強しました.
本書の内容を,かいつまんでご紹介するのは,ちょっと難しいです(笑)
せめて目次だけでも
第1章 半導体デバイスの特質
第2章 品質保証の実際
第3章 信頼性評価の基本
第4章 信頼性要因と故障解析
第5章 個別デバイスの信頼性の課題
第6章 集積回路デバイスの信頼性の課題
第7章 品質保証に関する規格および認証制度
#09:笑顔の効果
行動が変われば結果が変わる.
東莞のある日系企業を訪問した時のことだ.多くの日系企業と同じように,従業員が来客に対して挨拶をしてくる.しかし何かが違う.とても清々しく,気持ちが良いのだ.暫くその理由が分からなかったが,工場内を案内されて原因が理解できた.
工場の壁には5Sの標語が掲示してあるが,整理・整頓・清掃.清潔.躾の外に「微笑(スマイル)」と書かれていた.これを見て気が付いた.受付の保安係をはじめとして,工場内で挨拶をしてくる従業員が,皆微笑んで挨拶をしていたのだ.
微笑みは人の心を明るくする.私が,この工場に足を一歩踏み入れた瞬間から,好印象を感じていたのは,従業員の微笑だったのだ.
笑顔は人のためならず
笑顔は来訪客のためではない.自分自身のためだ.幸福だからいつも笑顔でいられるわけではない.いつも笑顔でいるから幸福になるのだ.
笑顔がポジティブな心を作る.ネガティブな心理状態の時には,笑顔が出ない.しかしネガティブな時にこそ笑う.笑うことにより,心がポジティブになる.心がポジティブになれば,行動もポジティブになる.
笑うことにより,脳内が快楽物質で満たされる.人間の脳は非常に緻密で高度だが,騙されやすいというメカニズムがあるようだ.騙すとは人聞きが悪いが,言い換えれば,勘違いだ.自分が幸福だと勘違いしていれば,本当に幸福になる.この勘違いは,体内の免疫力も高めるらしい.よく笑う人ほど健康で長生きをする.
笑顔で人と接するということは,相手を受け入れるということだ.人は自分を受け入れてくれる人に心を開く.「笑顔で挨拶」が,信頼関係の基であり,コミュニケーションの基本だ.
笑顔の秘密は朝礼にあり
この工場は,「微笑」を5Sと一緒に企業文化の基礎としている.しかしこれは一夜にして出来上がった文化ではない.毎日の朝礼で,「笑顔で挨拶訓練」をしている.
外部委託をしている保安係も同様だ.彼らも朝礼で「笑顔で挨拶訓練」を繰り返している.企業文化に例外はない.全員参加だ.経営者も,経営幹部も笑顔で挨拶を率先実行する.
継続が習慣を生み出す.笑顔で挨拶と言う行動が,習慣となった時に,ぶれない企業文化となる.笑顔で人と接することにより,仲間を思いやるという行動様式が養われる.
モチベーションが高く,活性化した組織は,内部にたくさんのコミュニケーションが発生している.微笑がこのコミュニケーションを支えている.
リーダーの仕事は,望ましい文化が定着するように,仕組みと仕掛けを準備する.そしてそれを率先垂範実行することだ.
笑顔が毎日組織内にあふれる状況を作る.自分自身も笑顔でいる.困難な時こそ,リーダーは笑顔を絶やしてはいけない.リーダーが困った顔をしていると,組織も沈滞する.いつも笑顔でいるのは,一番高い給料を貰っているリーダーの責務だ.
【今月の一言】
笑顔が経営者の任務
こちらもご参考に。
5S実践研修
本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年3月号に寄稿したコラムです.
「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた
書籍名:
「お客様の幸せ」のために
ディズニーはまず「おそうじ」を考えた
著者:安孫子薫
出版社:小学館
著者の安孫子薫氏は,東京ディズニーランド開業時から,カストーディアル(ディズニーランド内の清掃,安全,安心を維持する部門)の仕事をしておられた方だ.
開業前に本家のディズニーランドでカストーディアル修行をしている.ウォールト・ディズニーと共に本家ディズニーランドを築き上げた,元祖・カストーディアルのチャック・ボヤージャン氏の直弟子である.
5Sで清掃がうまく指導できないのは,いくつか理由があると考えている.
・何のために清掃するのか理解できていない
・清掃の基準が不明確
・掃除をやらされていると感じている
私は5S指導の時に,
・清掃は「予防保全」
・基準は言語データで
・より短時間で,より綺麗になるように工夫をする
と教えているが,本書から更に気付きを得ることが出来た.
・掃除とはお客様や仲間に対する思いやり
・汚れたから掃除をするのではない.汚れる前に掃除をする.
・クリンネスで商売繁盛
5Sが有効なのは製造業ばかりではない.
飲食,ホテル,小売などあらゆる産業で有効だ.
5Sは元々製造業からスタートしたが,本書からレジャーランドの清掃を工場の5Sにベンチマーキングしてみてはいかがだろうか.
こちらの本もどうぞ
「ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと」
ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと
書籍名:
ディズニー
そうじの神様が教えてくれたこと
著者:鎌田洋
出版社:ソフトバンククリエイティブ
著者の鎌田洋氏は,オリエンタルランドに5回挑戦して入社し,東京ディズニーランド開業時に初代のナイトカストーディアル(ディズニーランド内の夜間清掃部隊)として仕事をされていた.
華やかなディズニーランドの仕事に憧れ,会社を辞め転職したのに「夜間のそうじ係」となってしまったことに,落胆したそうだ.
しかし本家ディズニーランドから指導に来ていたカストーディアル教祖・チャック・ボヤージャン氏の指導を受け仕事に対して,誇りと自信を持つようになる.
たぶんそんな著者自身の体験から描かれた4つのエピソードで,本書は構成されている.
清掃を通して,人が如何に仕事に対して誇りと自信を持ってゆくのか,エピソードの中から多くの気付きを得た.これは単なるそうじの本ではなく,従業員のモチベーションを如何に上げるかと言う課題を,小説仕立てで教えてくれる本だ.
本書の取り扱い注意:目を赤くしているのを見られたくない人は,人前で読まないこと(笑)
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「お客様の幸せ」のためにディズニーはまず「おそうじ」を考えた」