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#06:清潔の本当の意味とは

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
通常「清潔」という言葉は,清潔な身なりとか清潔な人柄という意味で使われる.しかし5Sで清潔という場合は,意味が違う.

5Sにおける清潔の本当の意味は,整理・整頓・清掃の状態を維持改善することだ.
もちろん清潔な身なりも重要だ.着衣の乱れは心の乱れ.心が乱れると,行動も乱れる.
以前スノーボードのオリンピック選手の着衣がだらしないと,世論に叩かれたことがある.しかしこれは原則の違いだ.だらしないと批判した世代の原則は,ここぞという時には,グイッとズボンを引き上げて気合を入れる.一方スノーボード選手の原則は,気合を入れる時に,グイッとズボンを引き下げる.異なる原則を無理に押し付けてもうまくはゆかない.
しかしクリーンルーム内では,防塵着の着用が乱れると,クリーン度の低下を招く.これは原理だ.原理は価値観が異なっても守らねばならない.
いずれにせよ,清潔な身なりは,「躾」「作法」と考えた方が良い.5Sの清潔にはもっと重要な役割があるからだ.

清潔の役割
整理とは,要らないモノを捨てること.要らないモノが発生する原因を突き止め,整理をしなくても良くすることが清潔だ.
整頓とは,モノが乱れないようにすること.モノが乱れる原因を突き止め,整頓しなくても良くすることが清潔だ.
清掃とは,汚れを綺麗にすること.汚れが発生する原因を突き止め,清掃しなくても良くすることが清潔だ.
毎日30分かけて清掃するのは,時間の無駄だ.昨日30分かかっていたのを明日は20分で出来るようにする.この改善が清潔である.
ファーストフード店のテーブルには,足が1本しかないのにお気づきだろうか?四本足では,足を拭き掃除する時に4倍の時間がかかるからだ.こういう工夫をすることが清潔なのだ.

清潔は5Sの継続エンジン
5Sが維持できないという悩みを良く聞く.その最大の原因が,清潔を理解していないからだと考えている.
毎日整理・整頓・清掃を維持するために,与えられた作業を繰り返す.自主性もなく,意欲も湧かない.達成感も得られないだろう.
例えば完成品倉庫に完成品が増えてくる.倉庫が狭くなり,整理をしなければなくなる.これは意欲の湧く仕事ではない.特に経営者にとっては苦痛を伴う仕事だ.
完成品が倉庫に増えるのは,出荷量より多く作るのが原因だ.更にそこには,不良が多いので,余分に生産投入する,段取り換えに手間がかかるので,生産効率を上げるためにまとめ造りをする,などの真因があるはずだ.
これらの問題を解決して,出荷量と同じだけ作れるように改善する.改善の仕事は,自主性に富み,意欲が湧く.達成感も大きい.
こういう取り組みこそが,本来の5Sの仕事だ.表面的な5Sに終始していては,このような成果は得られない.業績に貢献するからこそ,経営者も,従業員も5Sに対する意欲が湧き,継続できる.

【今月の一言】
清潔とは継続エンジンなり

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年12月号に寄稿したコラムです.