月別アーカイブ: 2011年2月

第八章:信用と信頼

伝説の経営者・原田則夫の“声”を聴け!
工場再生指導バイブル

信用とは信じて用いること.
信頼とは信じて頼ること.
上司は部下を信用し,部下は上司を信頼する.この信頼関係が組織を強くする.
犬の散歩
原田氏は,従業員の育成を「犬の散歩」に喩えることがあった.犬と言う動物は,好奇心がとても強い.散歩に行けば,あちこち寄り道をしたがる.「犬の様に働く」「犬死」などというネガティブな喩えは犬に対して大変失礼だ.犬の様に好奇心を持って仕事をすれば楽しいに違いない.
しかし原田氏の喩えは別の趣旨がある.犬が危ない所に行かない様に常にリードを引っ張っていれば,飼い主は疲れるし,犬は不満だ.自分の愛犬を信用してやれば,一歩下がって自由に歩かせることが出来る.本当に危ないときだけ引っ張ってやれば良いのだ.
部下が悪いことをすると思えば,きっとそうなる.部下には出来ないと思えば,きっと出来ない.部下とは,あなた自身を映す鏡だ.まずは部下を信じること.信用とは,信じて用いると書く.部下を信じて仕事を任せることだ.
部下を信用できる上司は,部下から信頼される.立場を変えてみれば,簡単に理解できることだ.あなたは自分を信用してくれない上司を,信頼するだろうか?
信用と信頼の違い
部下は信用すべきだが,信頼してしまってはダメだ.つまり部下は信じて用いる.ただし信じて頼ってはダメ.いわゆる丸投げ状態ではダメと言うことだ.
場合によっては,失敗して痛い目に合うのも成長に必要なことだ.人は成功より失敗から多くを学ぶ.致命的な失敗にならなければ,見守っていた方がよい場合もある.
部下を信用し仕事を任すが,仕事の責任は上司にある.従ってミスが,顧客に影響を与えそうになったら,速やかに対応策を打つ.または,ミスが発生しないようにしておく.ミスの発生がすばやく認知できる様にして置くなど,事前に仕掛けを用意しておかねばならない.
言ってみれば,散歩の時にリードを持っている,リードを引く準備をしておくことが重要だ.
部下を信じる力
「原田則夫指導語録」の一節に原田氏が部下をどの様に信じていたかを示す逸話がある.
原田氏の元秘書は,当時まだ二十歳を超えたばかりの元作業員の女性だ.原田氏は,彼女を山東省にある大手電機メーカに転職させている.転職後ほどなく,この会社の総経理が,SOLID社を見学したいと申し込んできた.この申し入れを原田氏は断っている.
この時原田氏は,元秘書が転職先の問題点を整理し,それを改善できていない,と叱っている.彼女は,ただSOLIDは素晴らしいとしか伝えていない.だから総経理が自分の目で見に来るしかないのだ.まずは自分で行動せよ.それでもダメならば,いつでも相談に戻って来いと指導している.
原田氏の元で仕事をしていたとはいえ,年若い女性に対して,転職先企業の問題点を整理し,改善できていないと叱っている.
原田氏が彼女を信じているから,このような叱責が出る.そしてそれは彼女に対する期待だ.
また,成型部門の部長は,浙江省にある金属加工メーカの改革のために請われて転職している.たった一人で,人事部長として乗り込んだ.当然古株従業員たちの抵抗に遭い,改革は進まない.一ヶ月経って,彼は原田氏に進捗を報告し相談したが,社長と相談しなさいと叱られている.
二人とも,信頼する原田氏から信じられている,期待されていると実感するから,最高のパフォーマンスを発揮する.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年3月号に寄稿したコラムです.
原田式経営哲学勉強会を開催しています.
詳細は,ブログ:原田式経営哲学をご参照ください.

第七章:人材育成を支える仕組みと仕掛け

伝説の経営者・原田則夫の“声”を聴け!
工場再生指導バイブル

前回のコラムでは,原田式人材育成について書かせていただいた.人に知識を与え,それを能力に変換してやる.難しいことではない.しかし継続的に人材育成が回り,2番手3番手のリーダが育つようにするためには工夫が必要だ.
自己成長を促す仕組み
人には皆,自己成長意欲がある.しかし若者の中には,その意欲を発揮する機会がなかったり,自己の意欲に気がついていない人が,少なからずいる.
弟や妹の学費を稼ぐために,農村から出稼ぎに来ている打工妹たちにとって,仕事は家族を支えるための「苦役」であり,成長の機会であるとは捉え難いいだろう.
原田氏が経営していたSOLID社には,作業員を事務職員に登用する制度がある.出稼ぎ労働者にも,昇進の機会を与えることにより成長意欲を引き出すことができる.
しかしこの仕組みは,上位に開き空間が無ければ,とたんに閉塞感を伴い機能しなくなる.そこで成長した者から外に出てゆく仕掛けが用意してあるのだ.
SOLID社の職場には,従業員一人ひとりが3年後5年後の夢を公開する掲示板がある.小金を貯めて,故郷に帰り商売をしたい.更に成長し管理職を目指したい.それぞれの夢を毎日掲示板で確認し,努力をするようになっている.
また管理職になると,職位により2,3年ごとに別の職場に異動する制度がある.この制度により,管理職は,経営幹部として成長してゆく.
この様な制度により成長した職員は,自己の夢を実現するために,更なる機会を求め社外と出てゆく.
モチベーション管理
自己成長モチベーションを維持・向上させ,従業員の能力を150%引き出す.その結果を経営業績に結びつける.モチベーションを管理することは,重要な経営課題である.
モチベーションを上げるために,時折従業員に向かって講和をする,食事会を催す.場当たり的な施策は管理とは言えない.継続的にモチベーションを与える仕組みと仕掛けを用意しなければならない.
指示・命令に従ってやる仕事と,自らの意思でやる仕事では,明らかに後者の方がモチベーションが高く,成果も高くなるはずだ.SOLID社のプロジェクト活動は,社員の自由な意思で,プロジェクトを開始・参加することができる.
設備営繕技師は,手の空いた時に,工場内の生活区に置かれるベンチを手造りしている.材料は梱包廃材だ.職場の壁にペンキ絵を描く.このような創意工夫により個性を発揮するチャンスを与える.
楽器を準備しておき,誕生会などで演奏させる.仕事には直接関係無いが,自分の個性を発揮する場と,仲間からの賞賛・承認を得る機会が与えられる.
このような仕組みや仕掛けで,モチベーションが管理される.
助け合う精神
一人ひとりの成長意欲を高め,モチベーションを高める.更にお互いに助け合い成長する協調性を持たせる.これにより,一人の成長意欲,モチベーションが組織の中に容易に感染するようになる.
他人に迷惑をかけない,他人に関心を持つ.この様な組織風土により助け合う精神が開発される.
組織風土は上から押し付けられるのではなく,新人の時から自ら感じ取る様に工夫されている.
新人研修では,一輪車の練習により,左右から支えてくれる仲間と共に,達成感を学ぶ.
先輩との交換日記では,自分に対し関心を払ってくれる先輩に感謝し,自分もそういう先輩になろうとする.
子供は親の行動を見て,それをまねして育つ.そのような環境を実現する仕組みと仕掛けを用意することにより,組織風土は受け継がれてゆくのだ.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年2月号に寄稿したコラムです.
原田式経営哲学勉強会を開催しています.
詳細は,ブログ:原田式経営哲学をご参照ください.