月別アーカイブ: 2012年4月

#11:5Sでこうなりました

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
5Sとは掃除・片付けのことではない.
5Sの目的を正しく理解し,実践すれば業績改善に貢献する.

掃除・片づけをして見栄えを良くすることが5Sの目的ではない.正しい5Sを実践することにより,P(プロセス)Q(品質)C(コスト)D(納期)S(安全)E(環境)M(モチベーション)を改善することができる.この改善を通して業績に貢献することが5Sの目的だ.

中間在庫が半分に
ある工場では,作業現場の見通しが悪くなるほど中間在庫がたくさんあった.これは現場リーダが,納期遅れを恐れ,中間在庫を持ちたがるからだ.最初の工程に作業員を投入して,一日分の中間在庫を作ってしまう.手が空くと順番に後工程に作業員を送り込む.
この現場のリーダに,製品の出荷可能日を尋ねると,必ず○日の朝までに出来ますと答える.お昼までにとか,定時までにとか言わない.間に合わなければ,全員投入して残業で一気に造ろうと考えているからだ.
このようなモノ造りは生産効率が悪い.リードタイムも長くなる.中間在庫が多いので,キャッシュ・フローも悪くなる.
この現場では,まず整理をした.中間在庫を置く移動式の棚を,半分捨てた.リーダはムリだと抵抗したが,棚を半分にしたその日から,生産には何も支障はなかった.あっという間に中間在庫は,半分になった.
その次に工程間に置く移動式棚の置き場所と,数を決めた.これが整頓だ.
作業員には,置き場所がいっぱいになったら,作業を止めて決められた工程へ手伝いに行き,棚がいくつになったら戻るよう教えた.
作業者自身が自律的に動けるようになり,現場のリーダは作業員をあちこちに動かす必要がなくなった.
リーダには空いた時間を改善に当てるように指導した.

整理・整頓で生産性改善
別の工場では,昔からのモノ造りの方法を改善することができていなかった.
この工場ではまずムダな作業を整理した.ムダな作業がどこにあるのか見抜くためには,コツがある.まず作業の流れを見えるようにする.いわば,作業の整頓である.これで簡単にムダな作業を見つけられる.
見つけたムダを捨てる.動作のムダ,取り置きのムダ,運搬のムダなどを整理する.これで生産性が改善できる.
正しい5Sとは,次のような活動により業績に貢献することだ.ムダな作業,ムダな時間を整理・整頓する.清掃により,整理・整頓の維持を確認する.更に改善できるようにすることが清潔だ.そしてこれらの活動を通して従業員の能力を育てることが躾だ.


【今月の一言】
5SでPQCDSEM改善

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年5月号に寄稿したコラムです.

こちらもご参考に。
5S実践研修

#10:5Sで企業文化

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
三流企業は生産性を強化する.
二流企業は品質を強化する.
一流企業は企業文化を強化する.

中国は既にローコスト生産国ではない.未だに人海戦術のモノ造りをしている工場は,早晩淘汰されるだろう.生産量よりは生産性を強化しなければ生き残れない.その上で品質が良くなければならない.
企業が存在・存続を許されるのは,社会や顧客に必要なモノやサービスを供給できるからだ.そして社会や顧客から受け入れられる企業文化を持っていなければならない.
例えば社会に必要な電気を供給している会社が,地域住民の犠牲の上で発電をしているとすれば,存続が許されるはずはない.
企業文化とは,企業の「目的」と「ありよう」を定義するものだ.これが企業活動のぶれない軸となり,従業員の行動のよりどころとなる.

5Sで企業文化構築
経営理念に「顧客第一」「品質第一」と書いておいても,それだけでは文化にはならない.ただのスローガンだ.企業文化とは,従業員一人ひとりの行動規範の基となるものだ.
ある企業は,M&Aを繰り返して大きくなった.買収して傘下に納めた企業に,5S活動を導入している.これにより異なる企業文化を,一つに統一しようとしている.
別の企業は,日本国内,欧米,アジアに生産工場を展開している.グローバル生産工場のモノ造り文化を統一するために,各国の工場で5Sの指導を強化しようとしている.
二社とも日本を代表する大手企業だ.全員で5Sに取り組むことにより,それぞれの企業理念が実現可能となる.

企業文化は掃除から
まずは全員で取り組める掃除から始める.清掃の効能は,

  • 予防保全
    床や設備をぴかぴかにしておけば,油漏れ,水漏れにすぐに気が付く.拭き掃除そのものが点検作業だ.
  • 顧客,仲間への思いやり
    掃除をして店舗や職場を綺麗に保つことは,お客様や働く仲間への思いやりだ.
  • 躾け
    汚したら,汚した本人が綺麗にする.汚れる前に掃除をする.汚さないようにする.これは躾けに他ならない.

掃除をさせるのではない.掃除がしたくなるようする.言われてやるのと,自らやるのではモチベーションが違う.モチベーションが高ければ,工夫や改善が出てくる.
文化とは,その集団に属する人々の心から始まる.5S活動を通してその心を養う.製造業ばかりではなく,あらゆる産業で応用可能だ.


【今月の一言】
5S文化で一流企業

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年4月号に寄稿したコラムです.