#11:5Sでこうなりました


5Sの騎士ドン・キホーテの如く
5Sとは掃除・片付けのことではない.
5Sの目的を正しく理解し,実践すれば業績改善に貢献する.

掃除・片づけをして見栄えを良くすることが5Sの目的ではない.正しい5Sを実践することにより,P(プロセス)Q(品質)C(コスト)D(納期)S(安全)E(環境)M(モチベーション)を改善することができる.この改善を通して業績に貢献することが5Sの目的だ.

中間在庫が半分に
ある工場では,作業現場の見通しが悪くなるほど中間在庫がたくさんあった.これは現場リーダが,納期遅れを恐れ,中間在庫を持ちたがるからだ.最初の工程に作業員を投入して,一日分の中間在庫を作ってしまう.手が空くと順番に後工程に作業員を送り込む.
この現場のリーダに,製品の出荷可能日を尋ねると,必ず○日の朝までに出来ますと答える.お昼までにとか,定時までにとか言わない.間に合わなければ,全員投入して残業で一気に造ろうと考えているからだ.
このようなモノ造りは生産効率が悪い.リードタイムも長くなる.中間在庫が多いので,キャッシュ・フローも悪くなる.
この現場では,まず整理をした.中間在庫を置く移動式の棚を,半分捨てた.リーダはムリだと抵抗したが,棚を半分にしたその日から,生産には何も支障はなかった.あっという間に中間在庫は,半分になった.
その次に工程間に置く移動式棚の置き場所と,数を決めた.これが整頓だ.
作業員には,置き場所がいっぱいになったら,作業を止めて決められた工程へ手伝いに行き,棚がいくつになったら戻るよう教えた.
作業者自身が自律的に動けるようになり,現場のリーダは作業員をあちこちに動かす必要がなくなった.
リーダには空いた時間を改善に当てるように指導した.

整理・整頓で生産性改善
別の工場では,昔からのモノ造りの方法を改善することができていなかった.
この工場ではまずムダな作業を整理した.ムダな作業がどこにあるのか見抜くためには,コツがある.まず作業の流れを見えるようにする.いわば,作業の整頓である.これで簡単にムダな作業を見つけられる.
見つけたムダを捨てる.動作のムダ,取り置きのムダ,運搬のムダなどを整理する.これで生産性が改善できる.
正しい5Sとは,次のような活動により業績に貢献することだ.ムダな作業,ムダな時間を整理・整頓する.清掃により,整理・整頓の維持を確認する.更に改善できるようにすることが清潔だ.そしてこれらの活動を通して従業員の能力を育てることが躾だ.


【今月の一言】
5SでPQCDSEM改善

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2012年5月号に寄稿したコラムです.

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5S実践研修