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21世紀型企業経営

 このメールマガジンで,過去何度か「21世紀型企業経営」と言う概念を、紹介した。
10月に明治大学経営学部の3、4年生の学生さんに「21世紀型企業経営」の概念を講義する機会をいただいた。先週学生さんたちからのレポートを62件読み、全てのレポートにコメントをした。
授業を聴講いただいた学生さんは80人余りいたが、レポートを提出しなかった学生さんたちは既に単位が足りているのであろう(笑)

講義では「21世紀型企業経営」を以下のように話をした。
本来企業とは利益を追求することを目的としている。その結果従業員を幸せにすることが出来る。
この定義の目的と結果を入れ替えて、企業とは人を幸せにすることを目的とし、その結果利益を上げることができる、とすると、企業も従業員も社会も幸せになるだろう。こういう企業を「21世紀型企業」と呼ぶことにする。

学生さんたちの感想は、自分も21世紀型企業に就職したい、自分に部下が出来たら部下の幸せを目的としたマネジメントをしたい、など肯定的な意見が大半を占めた。

中には、骨のある感想を書いてくれた学生さんもいる。
そんな学生さんの代表的な意見を紹介したい。

「二十一世紀型経営について話を聞き、納得する部分もあったが、正直腑に落ちない点もあった。人を幸せにすることが最重要でその結果利益が上がる。
というのはあくまでそれは理想であって、実際そうもうまくいかないと感じたからである。今日M&Aも盛んになっており、企業は弱肉強食の世界に立たされている。そんな中で利益よりも大事なことなどあるのだろうか?」

大変もっともな感想だ。多くの企業経営者も、こう考えているだろう。

しかし利益を追求して、弱肉強食の競争をしている企業は、結果として価格競争に巻き込まれる。顧客、従業員を幸せに出来る企業は、社会にその存在を許されるので、利益を上げ存続できる。

利益を追求することが重要なのではなく、「人第一の企業経営」をすることを決断することが重要だと考えている。

人を大事にする企業と言えど、企業が目指す方向に向いていない人は当然淘汰される。不正を働いた人間に寛容であることは、逆から見ればまじめに働いている人たちにとって不公平だ。

携帯電話がたくさん売れている会社では、ユーザにわくわくするような製品を出荷し顧客を幸せにする。それを開発している人たちも、仕事が楽しい。
しかし「タコな地図」を作ってしまった幹部は会社を去ることになる。
(A社が21世紀型企業なのかどうかは知らないが)

日本一の遊園地を経営している会社は、ゲストに感動を与えることを目的としている。そこで働いているアルバイトも、ゲストに感動を与えることで幸せを感じている。
だから、伝説となるような感動サービスを顧客に与えることが出来、驚く程のリピート顧客を生み出し、儲かっているのだと理解している。
しかし目的を共有できない人は、会社に残れない。

人を大切にし、人の幸福を願うと言うことは、人に対して寛大であるという意味ではない。企業が目指す目的と同じ方向に向いている限り、従業員を大切にし、幸福になるよう支援すると言うことだ。

中国でも、労務費はどんどん上昇しており、人々の生活は豊かになりつつある。
深センの最低賃金は2004年から2012年までに2.5倍に上がった。この上昇率がこのまま続けば、あと6年で更に2倍となる。2018年には2004年の5倍!になる。
こういう状況下で、今までどおり「従業員はコスト」と言う考え方で経営をしていたら、発展は望めないだろう。従業員の成長を目指し、従業員の幸福を目指す経営をしなければならないだろう。

設備は購入した日から減価償却が始まり、その価値はどんどん下がる。
一方人材は採用した日から、適切に指導をすれば、成長により価値が上がる。
ここが「設備コスト」と「労務費」の違うところだ。
従業員の価値が上がれば、製品当たりの労務費は下がるはずだ。


このコラムは、2012年11月12日号のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】に掲載した物です。
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経験技術の蓄積

 社内の技術を共有化する第一歩は「標準化」だろう。作業要領書や設計標準などを作ることにより、誰でも一定水準の品質を守る事が出来る様にする。
ほとんど全ての日系企業はこのレベルをクリアしているだろう。

中国企業で、作業標準がない工場を指導したことがある。
生産現場に渡されるのは、製品の分解図だけだ。各ラインの班長が分解図面を元に、組み立て手順を決め作業者を割り振る。こうして出来上がった製品は、組み立てるたびに違う手順で組み立てることになる。同時に組み立てた製品もラインごとに違う手順で組み立てる。

こういうやり方をしたのでは、コスト・品質・納期を管理する事は難しい。

標準化とは、やらなければならない事、やってはいけない事を決める事だ。
その結果QCDのバラツキを抑える事が出来る。

一方で標準化をすると言う事は、進歩を一度止める事だ。
今日最高の技術や手順を標準化しても、それが明日も最高だとは言えない。
むしろ明日も一ヶ月先もそれが最高と言うのでは、進歩がないと言う事だ。

また全てを標準化すると言うのも現実的ではない。

それを補うために「事例集」を作ることを、推奨している。
いわゆる失敗事例を集めたものだ。標準化するものと、事例集として蓄積するものを分ける。

例えば、SMTセラミックコンデンサのクラック破壊に関する事例は、設計部門には、プリント基板レイアウトの設計標準として配置場所に制約を与える。
製造部門には、「取り扱いベカラズ集」の様な事例集を作るのだ。

失敗ばかりではなく、うまくいった事も事例集に出来る。成功要因がどこに有ったのか分析し、蓄積する。失敗原因の共有事例は良く聞くが、成功要因も共有したら良い。

こういう方法により、現場のノウハウ・経験技術を組織の智慧として蓄積継承する。そしてその智慧が蓄積する方法が組織の暗黙智となる様にする。
こういう努力は、画期的な技術革新が起こらない領域では強い競争力になる。
継続しなければ蓄積出来ない経験技術は、後から参入して来るライバルには決して追いつけないものだ。


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