社内の技術を共有化する第一歩は「標準化」だろう。作業要領書や設計標準などを作ることにより、誰でも一定水準の品質を守る事が出来る様にする。
ほとんど全ての日系企業はこのレベルをクリアしているだろう。
中国企業で、作業標準がない工場を指導したことがある。
生産現場に渡されるのは、製品の分解図だけだ。各ラインの班長が分解図面を元に、組み立て手順を決め作業者を割り振る。こうして出来上がった製品は、組み立てるたびに違う手順で組み立てることになる。同時に組み立てた製品もラインごとに違う手順で組み立てる。
こういうやり方をしたのでは、コスト・品質・納期を管理する事は難しい。
標準化とは、やらなければならない事、やってはいけない事を決める事だ。
その結果QCDのバラツキを抑える事が出来る。
一方で標準化をすると言う事は、進歩を一度止める事だ。
今日最高の技術や手順を標準化しても、それが明日も最高だとは言えない。
むしろ明日も一ヶ月先もそれが最高と言うのでは、進歩がないと言う事だ。
また全てを標準化すると言うのも現実的ではない。
それを補うために「事例集」を作ることを、推奨している。
いわゆる失敗事例を集めたものだ。標準化するものと、事例集として蓄積するものを分ける。
例えば、SMTセラミックコンデンサのクラック破壊に関する事例は、設計部門には、プリント基板レイアウトの設計標準として配置場所に制約を与える。
製造部門には、「取り扱いベカラズ集」の様な事例集を作るのだ。
失敗ばかりではなく、うまくいった事も事例集に出来る。成功要因がどこに有ったのか分析し、蓄積する。失敗原因の共有事例は良く聞くが、成功要因も共有したら良い。
こういう方法により、現場のノウハウ・経験技術を組織の智慧として蓄積継承する。そしてその智慧が蓄積する方法が組織の暗黙智となる様にする。
こういう努力は、画期的な技術革新が起こらない領域では強い競争力になる。
継続しなければ蓄積出来ない経験技術は、後から参入して来るライバルには決して追いつけないものだ。
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