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【華南マンスリーコラム】手袋で損失予防

作業員が守るべきルールは管理者も率先して守らねばならない
#7
 現場に出るときはいつもその現場が要求するモノをきちんと着用することにしている.
 例えば手袋である.以前セラミックコンデンサーのメーカに採用監査に行った事がある.その工場の品証責任者が現場で説明する際に原材料であるセラミックの円板を素手で触った.
 この一つを見ただけで,この工場は採用に値する品質レベルではないと判断できる.セラミック円板に付着した汗の成分が耐圧不良を起こす可能性があるのだ.
 現場の作業者がきちんと手袋をしていても,管理者がルールを守らないということは作業員もルールを守らない可能性がある.
管理者に必要なのは損失リスクを予防する力
 電子製品でもプリント基板に汗が付着すると,それが触媒になってプリント基板の線間がショートする可能性がある.この不良は工場の中では発見できない.エンドユーザが製品を使用中に不良が発生する.大変厄介な不良であり,損失コストは莫大なものになる.
 最近有害物質が玩具に使われて回収騒ぎになる事例が多い.ニュース記事を見て,心配で夜も眠れない経営者が多いのではないだろうか.しかし心配していても始まらない.心配しなくて良いようにするのが経営者の仕事である.
 自社,他社の失敗事例から,工程中のどこに損失リスクがあるか見抜きそれを事前に予防する事が必要である.
 
守られるルールにする 
手袋の着用もそんな予防対策のひとつである.しかし作業者は目を離すと手袋をしていない.そのたびに叱ってもなかなか改善しない.
手袋着用が守られない理由を深掘りしなければならない.ルールにムダ・ムラ・ムリがある場合が殆どである.
守られるルールにするにはムダ・ムリ・ムラを取り除いてやらなければならない.
 ある電源メーカで耐電圧試験の作業者がゴム手袋を着用し作業をしていた.顧客監査時に感電事故防止を指摘され,ゴム手袋を着用することにしたという.
 しかしこの対策は守られないのは日の目を見るより明らかである.蒸し暑い工場の中でゴム手袋をしていたら汗で不快になるはずだ.
 客が来た時だけ守る様なルールは却って逆効果だ.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.