月別アーカイブ: 2008年1月

妥協しないモノ造りは妥協しないヒト造り

毎月「品質改善・経営革新セミナー」を開催している.セミナーにご参加いただいた経営者様,工場管理者の皆様からいろいろなお話を聞き,大いに勉強になっている.
以前ご参加いただいた中国縫製工場の管理者様は,ウチの幹部は現場上がりの人が多く,小学校しか卒業していない人が多い.そういうメンバーに新しいことをさせようとすると尻込みしてしまう.と言うお悩みをうかがった.
また別のアパレル系検品工場を経営されている方からは,ベテラン作業者を監督職に昇格させようとすると,字の読み書きが出来ないからと辞退されてしまうと言うお話も聞いた事がある.
皆さん中国の工場では,日本では想像が付かないようなご苦労をされてる.
しかしこういう状況を良く考えてみると,これもひとつの強みに転換できるのではないかと考えている.中学もろくに卒業していない農村出身の作業者が何年も勤めてくれて,ベテラン作業者になっている.こういう人たちはなかなか転職して行かない.
事実,この検品工場は4%以下と言う非常に低い離職率だ.日本の製造業と比較してもかなり低い数字ではないかと思われる.
こういう作業者達に少しずつ能力を付けてゆけば,時間はかかるが優秀な現場リーダに育てる事が出来る.
「妥協しないモノ造りは妥協しない人造り」である.

誤出荷

以前中国の生産委託工場から出荷した製品の中に違う機種が一台混ざっていたというクレームをお客様からいただいた事がある.
クレーム品を調べてみると,製品そのものは同じだがラベル銘版を別機種の物を貼って出荷してしまった事が判明.全く同じ製品なのだが,お客様が仕向け地別に型名の枝番号を変えているので,ラベル違いで3機種ある.ラベルも型名の最後の二桁が違うだけで殆ど同じである.
したがってラベルを貼り間違えてしまう可能性は,生産開始時点から予測していた.
そのため型番ごとに作業指示書を3セット用意し,ラベル貼り作業,目視検査工程の作業指示書にはラベル現物を表示した.
それでも問題は発生した.
工程の記録によると,内部異物(ケースを振るところころ音がする)不良でラインアウトした物がある.この場合超音波融着してあるプラスチックケースを開けて,中の異物を確認・除去しなければならない.従ってケースは再利用できず交換することになる.ラベルも新たに貼らねばならない.
通常であれば修理完了後ライン復帰しラベル貼り工程,目視検査工程を通るので,不良は発生しないはずである.
更に班長の記憶を調査してみると,修理品のライン復帰時に既に別の機種を生産しており,別の機種が流れているラインで班長が持ち回りで,検査梱包工程を通した事が判明.
このときに班長が作業者に間違ったラベルを渡し,目視検査員も見逃してしまった,というのが真相のようである.
万全を期して不具合が発生しないようにしていても,このように意外な落とし穴があるものである.
注意しなければいけない落とし穴は,修理品のライン復帰,抜き取り検査品の戻し先間違い,など見落としがちなところに潜んでいる物である.
別のお客様からも違う機種が混入していたというクレームをいただいた事がある.
この時は我々の製品の中に,別の会社の製品が混入していたというクレームであった.
返却いただいた製品を見ると,お客様が我々の製品のセカンドソースとして購入しているコンペチターの製品であった.そのセカンドソースの生産工場は車で20分ほど離れた場所にあり,混入するはずがない.
どう考えてもお客様倉庫で混入したとしか考えられない.
「お客様は神様です」というが,神様もたまには間違いをするようである.

変革リーダを探せ

 中国の工場で生産の方法を変えたり,組織を変えたりするのがなかなかうまく行かないことがある.リーダ層や作業員の抵抗にあう.
日本の工場でも同様だが,多くの人は「今までのやり方」を変えることに抵抗がある.これは人類共通の特性ではなかろうか.いやひょっとすると生物共通の特性かもしれない.
ぬるま湯に浸かった蛙は徐々に水温が上がっているのに気がつかずついには茹で死んでしまう.
早く温度の変化に気がついて,危機感を持つリーダがいないことには組織もぬるま湯に浸かったまま茹で死んでしまうだろう.
経営者が危機感を持っていても現場がなかなか変革についてこない.現場が抵抗勢力になってしまう.しばしばこういう局面に出会う.
現場で変革を推進なければならないリーダが抵抗勢力側に入ってしまう.
無理もない.現場のリーダは「現在のオペレーション」をきちんと推進できる能力を評価されリーダの役割を担っているはずだ.
往々にして現状に満足しない人たちは,職場での評価が低く,埋もれていることがある.しかしこういう現状に満足しない人が「変革リーダ」としての役割を果たすことがある.
工場の中で改善活動をしていると,「現状リーダ」と「変革リーダ」の違いがよく見えてくる.
「現状リーダ」をすぐに「変革リーダ」に変えることはかなり難しい.
「現状リーダ」に変革マインドを埋め込む.変革マインドを持った人にリーダマインドを埋め込む.
いずれにせよ「変革リーダ」を見つけ養成するのは現場の活動を通してでなくては達成できないと考えている.