月別アーカイブ: 2018年7月

八つの成功行動

 前職時代のK先輩から久しぶりにメールをいただいた。
K先輩は別の事業部の品質保証部長をされており、話をする機会はほとんどなかった。月に一度全社品質会議で顔を合わせるだけだった。

K先輩は定年退職され、私は独立し、互いの接点は無くなっていた。
2年前、私の携帯電話に、突然K先輩から電話があった。中国の民営企業に請われ、工場改革のために1年間の契約で来ているという。

私のオフィスから1時間ちょっとの場所だ。すぐに予定を調整し、着任された工場を訪問することにした。

工場を訪問して、懐かしい顔と再開出来た。最後にお目にかかって既に6年半は経っていた。

工場の中を案内していただいたが、これから一年間Kさんが相当苦労される事は容易に予測出来た(笑)「Kさん、一年では帰れそうもないですね」と冗談を言ったのを覚えている。

しかし、予測に反して予定通りK先輩は帰国された。
それから一年経っていただいたメールだ。
メールには中国での奮闘を小説風にまとめた電子書籍が添付されていた。「中国企業物語 先富の夢」と題された小説を、一気に読んだ。

私の想像した以上の大変な仕事をされた様だ。

K先輩が書かれた本の中に、「八つの成功行動」と言うのが出てくる。
メルマガ読者様にも参考になるはずだ。皆さんとシェアしたい。

人材流動が激しい中国で、ブレのない安定した企業活動を行うためには、良き企業文化を構築しなければならない。その元になるのが「八つの成功行動」だ。

  1. 清潔の文化を作る
     ここで言う清潔とは5Sの清潔の事だ。整理、整頓、清掃を改善する清潔はきちっとした躾から生まれる。
  2. 模範を示す
     上司の率先垂範が、部下の士気を高める。
  3. 月曜メッセージ
     毎週月曜日に、全社員に向けてメッセージを配信したそうだ。末端の作業員には現場の班長から朝礼で伝達。情報の公開により、公平・公明性を高めた。これにより、不具合の再発防止の水平展開も容易になったと言う。
  4. 設計審査を企業文化とする
     製造は設計から言われた通りに生産する、と言う「被害者意識」を取り払い設計の質を量産前に確認し、不良の出ない生産をする。
    これは私も経験がある。製造だけ任されている中国工場で「生産移行審査」を導入した。この審査に合格しなければ、量産をしないと、本社の設計部門に通達した。これで工場の生産技術のメンバーの志気が格段に上がった。
  5. 現場班長のレベルを上げる
     直接作業者を指導している現場班長の役割は大きい。しかし班長のための教育訓練が、蔑ろにされている例をよく見る。作業員の中から筋の良いものが班長に昇格しているだけで、班長としての役割も理解させていない。
    OJTを含む班長研修プログラムが必要だ。思い返してみると、K先輩にいわれ私の班長研修プログラムの骨子を説明したことがある。
  6. システム化で正しく仕事をする
     ミスは、システム化によりプロテクトする。
    ミスばかりではない。顧客オーダーより多めに、生産手配する。生産手配より多めに出庫指示をする。悪意からではないが、此の様な事を繰り返していれば完成品倉庫はすぐにいっぱいになる。この様な「故意による間違い」も防ぐ事が出来る。
  7. データでものを言う文化を作る
     私もしょっちゅう経験したが、組み立て工程でケースが不良で組み立てが出来ないと騒いでいる。現場に行ってみると、誰もケースの図面もノギスも持っていない。これでは何が正しいのか分からない。必ず正しいデータで判断する様にしなければならない。
  8. 改善を文化とする
     改善が行われない組織は、遅かれ早かれ停滞し消滅することになる。
    K先輩は改善提案制度を導入した。しかし全く提案がなく、私も相談を受けた。その後不具合再発防止で、真因にたどり着き対策が出来る様にメンバーを鍛え続けた様だ。

これらの事をたった一年間で達成された。
そのストーリィを一冊の本として楽しませていただいた。

ここにシェア出来たのはほんの一部だ(見開き76ページあるので、普通の本で換算すれば152ページだ)
それでもあなたのヒントになる事をお伝え出来たのではないかと思う。


このコラムは、2013年9月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第329号に掲載した記事に加筆しました。

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中国的モノ造り現場

 先週のコラムで,中国的モノ造りは図面や作業指示書がなくても製品を造ってしまうという事例をご紹介した.勿論「これはすごい」とポジティブに言っている訳ではない.一つ一つ違うモノが出来てしまう.
そのような製造方法だから,プロジェクタースクリーンの縁取りはフェードアウトしている.

しかしこのくらいの事で驚いていては,まだまだ中国初心者だ(笑)

ある工場の仕入れ先を見に行って驚いたことがある.
工場団地から少し外れた民家の中にその仕入れ先はあった.グラスファイバーの積層をする工場こうば(「こうじょう」というのはおこがましい気がする)だ.

家庭菜園の様な小さな畑の間の坂道を上ってゆくとその工場こうばがある.
工場こうばの中に入って,まず床が水平になっていない事に驚いた.グラスファバー布に樹脂を塗布含侵し積層する作業なので,床が水平になっていなければ,樹脂は片寄りしてしまうはずだ.工場の人間も,仕入れ先の人間も,そんなの問題にはなりませんと言う.

グラスファイバーを積層するための型が乱雑に積み上げられている事など,
些細な事に思えてしまう(笑)

表を見ると道を挟んだ向かいの畑の真ん中にも,積層型が見える.そばまで行って見ると,製品が型の中で乾燥中であった.雨が降って来たらどうするの?と質問しても,今雨降ってないでしょ?という顔をしている(笑)

振り返って「こうば」を見ると,外壁にも沢山積層型が立てかけてある.これなどは,もはや雨で濡れる事を前提とした確信犯としか言い様がない.しかもその脇には「鉄くず回収」の看板まである.これはジョークのつもりなのだろうか(笑)

日本にも下請け加工をする零細企業が沢山ある.
商店街の中に「こうば」がある。がらりと引き戸を開けると旋盤が置いてあり,社長一家は二階で寝起きしている.なんて光景はよく見る.しかし,床の水平が出ていない,製品や金型が外に放置されている,などと言う事はあり得ないだろう.


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事に加筆しました。

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人知らずして慍らず

子曰:“学而时习之,不亦说乎?有朋自远方来,不亦乐乎?人不知而不愠,不亦君子乎?”

《论语》学而第一-1

yuèshuōではなくyuè(楽しむ)の意味
yùn:憤る

素読文:
子曰く:学びて時にこれならう、またよろこばしからずや。ともえんぽうより来る有り、亦楽しからずや。人知らずしていからず、亦君子ならざるや。

解釈:
子曰く:学んで時にこれを復習する、学んだことが身につく。喜ばしいことではないか。心からの友人が遠方より訪ねてくる。楽しいことではないか。人に認められなくても憂えない。君子と言えるだろう。

論語の最初の一節です。
一般的には『shí』は『ànshíwēn』時にこれを復習する、という意味に解釈されます。個人的には「学びて時にこれを実践する」と解釈しています。

日本語でも朋あり遠方より来る。亦楽しからずや。とよく言いますが、最後の人知らずして慍らず、亦君子ならざるや。を味わい深く感じます。
人に認められようと大言壮語するより、ひたすら己の道を求めて研鑽する求道心を持ちたいものです。

【追補】
『有朋自遠方来』を「朋遠方より来る有り」と訳しました。
Google検索をして見ると、日本では「朋有り遠方より来る」と訳す方が多い様です。
個人的には「朋がある」ことより「朋が遠方から来る」ことの方が楽しいと思うので「朋遠方より来る有り」と訳しました。

また検索中に、「学んで時に之を習う」と「人知らずして慍らず」の間に「朋遠方より来る有り」と異質なモノが挟まってるのに疑問を持つ意見を発見しました。
その方は
「学んで時に之を習う」のは「朋が遠方より来て語り合う」ことと同じくらい楽しいものだ。
と解釈されていました。こちらの方が腑に落ちます。

中国的モノ造り

 中国で購入したプロジェクタスクリーンは,黒い外枠部分がフェードアウトするように塗られていた.
照明器具を生産している中国工場は,同じ製品でも,班が変わると組み立ての順序が変わる.同じ班でも作業者ごとに内部の配線経路が変わる,と言うモノ造りをしていた.

私の感覚から行くと,工業製品たる物同じように出来ていなければならない.農業産物・水産物の加工食品のように,材料その物が均一でない場合は別だが,全てが基準(図面,作業指示書)通りに出来ているべきだと思っている.

例えば,上述の照明器具内部の配線がどこを通っていようが,外からは見えない.機能上も問題はない.設計図面には何も指定はないだろう.
しかし同じにしておかなければ,作業性が変わってしまう.決められた時間内に,決められた水準で生産するためには,設計指定がなくても製造図面で決めておかねばならない.

もちろん工芸製品のように,一つ一つが違っていることに価値がある物もある.そういう価値を評価してもらえる製品であれば,コストを掛けてでもその価値を高めればよい.

中国の工場で,驚くことに,作業指示書はおろか,図面なしでモノ造りをしているのを散見する.図面はあっても,最終的には生産現場で,現物ですり合せの生産をせざるを得ず,結果的に図面どおりの物が出来上がらない.
例えば部品Aと部品Bを組み立てる作業で,部品Aの精度が悪く,そのままでは部品Bが組み付かない.通常ならば,部品Aを不良品とするが,部品Bを細工して部品Aに組みつけてしまう.

こうしておけば,歩留まりは上がるが,ムダな作業をたくさん投入することになる.更に悪いことに,こういう状況では部品Aの悪さ加減を身をもって知る事にならないので,いつまで経っても部品Aの改善は進まない.


このコラムは、2012年12月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第290号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗が進歩をもたらす

 市場クレーム、顧客クレーム、工程内不良などの失敗が進歩をもたらす。
クレーム、不良はない方がいいに決まっている。しかしクレームも不良も全くないとどうだろう?

進歩を促す機会が得られないので、組織の成長が得られない。
他社事例から学ぶことができれば、それを「疑似失敗」として成長の糧とすることができるだろう。本コラムは世の中の失敗事例を自社の「疑似失敗」に活用するために、情報提供している。

しかし現実的には、他社の失敗事例を深く解析することは難しい。最近の日産自動車、神戸製鋼所などの事例も、外部の人間が本当の原因を知ることはないだろう。なぜなら「失敗の科学」の著者・マシュー・サイドが指摘する様に、「クローズド・ループ」な社会では、失敗やその原因は隠蔽される。

「失敗の科学」マシュー・サイド著

制御システムの設計者だった私には、マシュー・サイドのクローズド・ループ、オープン・ループの区別が逆の様に思えてならない。制御システム業界では、クローズド・ループは制御が効いている状態を指す。オープン・ループは制御が効いてない状態だ。マシュー・サイドは、情報がオープンとなっている状態をオープン・ループと呼んでいる。

マシュー・サイドが提唱するオープン・ループにより失敗を進歩に変換する事ができるはずだ。この様な失敗が進歩をもたらす組織を構築するためにはどうしたら良いだろう。「失敗から学ぶ」組織はどの様にしたらできるだろう。
今週はこんなことを考えてみた。

  1. 失敗を隠蔽しない組織文化。
     失敗に対して過度な叱責、懲罰を科す組織は失敗を隠蔽する。(既に公知となり、有効な対策があるにも関わらず、同じ失敗を繰り返す者は論外だが。)
    航空業界は第三者が事故原因の検証に入る。失敗を隠蔽する余地はない。
    医療業界は病院ぐるみで医療過誤を隠蔽する傾向がある。
    飛行機に乗るより医者にかかる方が危険だ。
  2. 失敗原因を究明する。
     失敗の真の原因が分からねば、有効な対策が打てない。失敗原因の分析力が不足していると、繰り返し問題は再発する。
  3. 失敗の原因分析・対策検討のプロセスを共有する。
     失敗を隠さず、真の原因を究明し、有効な対策を実施する。この情報を組織内で共有する。単純に「結果」を共有するのではない。その結果に至る考え方、検証方法などの「プロセス」を共有する。
    問題解決の「結果」(原因、対策)を共有すれば同様の問題に対する水平展開、新製品立ち上げ時の未然対策などが可能になる。しかしこれだけでは不十分だ。
    問題の原因をどのように分析し、どの様に対策を検討したかと言う問題解決のプロセスを共有する事が出来れば、次に発生する未知の問題にも対応可能になるはずだ。

このコラムは、2017年10月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第580号に掲載した記事に加筆しました。

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神戸製鋼所データ改ざん問題

 先週の雑感で日産の無資格検査と共に、神戸製鋼所の品質データ改ざん問題についてふれた。
日産不正検査

当初アルミ、銅製品だけの問題としていたが、鋼線、鉄粉などにも品質データ改ざんの問題が発覚。出荷先は自動車、航空機、原子力、電気電子などの業界に拡大し、データ改ざんした製品を出荷した先は500社に上る。

原発用鋼管は径寸を片側だけ測定し、反対側は適当な数値を記入していた。
パイプの作り方を想像すると、片側の径寸が正しければ反対側もわずかな誤差しかないだろう。最初の一本と最後の一本の径を測定しておけば、問題はないだろう。これが保証できるのであれば、顧客に提出する検査成績書には片側の寸法データの記入だけにすれば良いはずだ。これをきちんと顧客に説明せずに片側のデータを適当に記入するというのは、不正だけではなく、顧客に対する不遜だと思う。

強度測定値にも改ざんがあった。航空機、新幹線などに使われる部品の材料だ。
強度不足が人命に関わることもありうる。ユーザ側の設計余裕度を見越して高を括っていたのだろうか?

神戸製鋼所は何度もこの手の前科がある。
1999年11月:総会屋への利益供与
2006年5月:排煙の窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)データ改ざん
2008年6月:JISで定められた検査をせずに鋼材を出荷
2016年6月:バネ用鋼材の強度検査値改ざん
その都度反省し、内部統制を改善したはずだ。企業全体に隠蔽体質があると思わざるを得ない。

仏の顔も三度までという。今回の件で神戸製鋼所は無くなるのではないだろうか。
株価は先週末に年初来安値を更新し、株価総額は2,900億円を割った。もっと下がりそうな予感がする。外国企業に買われてしまうかもしれない。

本件に関して興味深いコラムを見つけた。
『神戸製鋼所も…名門企業が起こす不正の元凶は「世界一病」だ』

「世界一」であり続けることを義務付けられた組織が、本来の目的を忘れ世界一であり続けることが目的となる「病」に取り憑かれているという。筆者は、三菱自動車、東芝も「世界一病」と論評している。さらにその舌鋒は「世界一勤勉な日本人」にまで向かう(笑)

本来「世界一」であることは、顧客の評価によるものだ。したがって本来の目的は「顧客への貢献」であるはずだ。騙した相手から世界一の評価を得る事などできるはずはない。

私に言わせれば、顧客と取り交わした仕様の検査データを改ざん・捏造せざるを得ないような企業が「世界一」であるはずがない。本当に「世界一」ならば、生産した物は全て仕様規格に入っており、検査などしなくても良いはずだ。


このコラムは、2017年10月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第577号に掲載した記事に加筆しました。

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日産不正検査

 今週の「失敗から学ぶ」で日産の完成車検査不正について書いた。
メール配信後、秒速で読者様からメッセージをいただいた。

※I様のメッセージ
 私も日産の件は不思議だなあと思いましたし、こんな大きなニュースのネタにするようなものだろうか、とも。メディアでは、新しく出た神戸製鋼の品質検査の誤魔化しと並べて報道されていますが、日産のケースはいまのところ検査内容自体の問題は指摘されていないので、両ケースは似て非なる別レベルの事案ではないでしょうか。

ご指摘の通り、日産と神戸製鋼所の問題は似て非なる別問題だ。
日産自動車:無資格検査員が検査を行ったが、検査そのものは正しかった。
神戸製鋼所:検査を行ったが、検査データを改ざんした。

神戸製鋼所の問題は同情の余地がない。
社内的にも、後ろめたさがあっただろう。本件の発覚は内部告発であろう。

日産の場合は、監督官庁の定期監査で発覚している。検査成績書の検査捺印が同一検査員の物が異常に多くあることを、監査員が疑問に思ったのだろう。
検査にかかる時間と、同一検査員の検査記録枚数を比較すればすぐにばれる。
また検査記録書の筆跡を見れば一目瞭然だろう。

問題となっている完成車検査は、陸運局の車検検査と同等のものである。工程内の品質検査と比較すれば、はるかに簡単な検査だ。なぜ検査有資格者が不足していたのか?

前回のメール配信後参考になりそうなコラムを発見した。
「日産の「無資格検査問題」が起こるべくして起きた意外な背景」

この記事は、ライバルメーカ幹部の推測を紹介している。

  • 急激な生産台数増。17年上期は前年同期比で23%増。
  • 経営幹部と現場のコミュニケーション不足により、リソース確保が不足。

確かに生産が急増すれば、人員の確保は現場の努力では及ばないことがある。しかしフル生産から23%増加したわけではなさそうだ。しかも足りなかったのは完成車検査有資格者だ。
現場管理職レベルの、人員計画・完成車検査員の教育計画で対応出来る範囲だろう。完成車検査員の資格があっても、従来通りの組み立て作業もできるはずだ。それともよほど弱気の年度計画を立てていたのだろうか?

記事は日産の認識が、軽すぎると指摘している。
「日産は最初に西川廣人社長や生産担当役員ではなく、一般の従業員に会見を任せた。」
さすがに、一般従業員といっても役職のある幹部社員が対応したのであろうが、これでは監督官庁の面子も無かろう(笑)

今回の問題は法律がらみの特殊な問題のように見えるが、「技能」という括りで考えると、製造業であれば共通の問題だ。

加工技術などで短期間で熟練できない技能がある。例えば「きさげ加工」は高い平滑度と面荒さという相矛盾した加工を、技能で実現する。このような技能は一朝一夕では得られない。きちんと技能継承の計画を持たねばならない。
設備などの保守計画なども同様に、問題が明確になってからでは間に合わない。事前に計画を持ち粛々と準備をしておく、というのが今回の事例の教訓だろう。


このコラムは、2017年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第575号に掲載した記事に加筆しました。

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日産の完成車検査不正

日産自動車が無資格の従業員に新車の検査をさせていた問題で、工場では書類の偽装に使われる有資格者の印鑑を複数用意し、帳簿で管理のうえ無資格者に貸し出していたことがわかった。こうした行為はほぼ全ての工場で行われ、組織的に偽装を慣行していた疑いが浮上した。

全文

(朝日新聞電子版より)

 この記事を読んでも何が問題なのか分からない。多分何かが隠されている、と言う印象を持った。

補助検査員が検査を行い、検査員の印鑑を押印していた、と言う事は生産量に対し正規検査員の数が足りなかったと考えられる。本問題の根本原因は「正規検査員の不足」と言う事になる。私には、なぜ正規検査員が不足したのかが、理解できない。

記事には、完成車の検査に関してこう記述してある。
"検査は本来国がするべきものだが、大量生産を可能にするため、各社が認定制度を設けて信頼性を担保し、「代行」する仕組み。”
つまり新車購入時に「車検」を受けなくても済む様に、メーカが陸運局を代行して検査を行うと言う事だ。

検査は本来国がすべきであり企業に代行検査を依託している、のであれば、依託検査員の資格認定は国が行うべきである。しかし検査員の認定制度は各社が設ける事になっている。これで本当に代行検査と言えるだろうか?

検査員の資格認定が企業に任されているのだとすれば、年度生産計画を立てた時点で、検査員が何名必要かは分かるはずだ。その時点で検査員の育成、認定計画を作るべきだ。本気になれば、組立工の大半を検査員有資格者とする事も可能のはずだ。

前職時代に、電源ユニットを納入していた事務機器メーカも「代行検査」制度を採用していた。
工程内最終検査員に対し、顧客の指導員が代行検査員の教育を行い、認定試験を実施する。検査員が認定試験に合格し「代行検査員」となると、顧客の受け入れ検査が省略される。当然代行検査員は4M変動管理の対象となり、離職、職場異動時には報告が必要となり、代わりの代行検査員が再教育・認定を受けなければならない。

ありていに言ってしまえば、顧客側の受け入れ検査業務のコストダウンだが、出荷側、受け入れ側の検査基準(検査員のスキルも含む)を摺り合わせておく意義は大きい。その上顧客の受け取り検査はAQLによる抜き取り検査だが、代行検査は全数検査である。

日産は完成車検査有資格者の認定を、国の機関に依存せずに、独自で出来たはずだ。なぜ押印の偽装などと言う姑息な事をしたのだろうか?


このコラムは、2017年10月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第574号に掲載した記事に加筆しました。

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学びて思う

子曰:“学而不思则罔,思而不学则殆。”

《论语》为政第二-15

wáng:无知
dài:疑惑

素読文:
子曰く:学びて思わざればすなわくらし。思いて学ばざれば則ちあやうし。

解釈:
書を読むだけで自ら考えなければ、物事ははっきりしない。考えるだけで学ばなければ、確かなものにはならない。
歴史や書物から学ぶだけではなく、自の体験に照らして考えることにより、実践的な知恵となる。つまり「学びて思えば殆うからず」ということです。

信頼

 人や組織との良好な関係は「信頼」だと言っても間違いではなかろう。
上司は部下を信じて任ずる、部下は上司の信任に応えて働く。これが信頼関係だ。同僚間、チームと個人、チーム間、会社と個人、会社同士に信頼関係があれば、そこにいる人々は仕事を通して幸福感を感じることが出来るはずだ。

では「信頼」とは何だろうか?
最近読んだ本にはこう書いてあった。
「信頼」とは「約束」と「実行」の積み重ね。

「モチベーション・リーダーシップ」小笹 芳央(著)
 

人は、相手の言葉や容姿を通して信頼できる人かどうか判断している。しかしそれは入り口であり、本当の信頼ではない。約束したことが実行されることにより、期待が実現する。この繰り返しにより信頼が形成される。

例えば「企業経営は人財育成だ」と言っている経営者に対して、信頼できる人かも知れないと言う期待が発生する。その言葉を、経営者が実際に行動することにより、期待が実現し信頼関係が生まれる。

「約束」は明示的な約束だけではない。日頃の言動から発生する暗黙的な約束も含まれる。例えば上記の経営者に対し、自分も育成対象だと言う期待を持つ。この期待が暗黙的約束になる。約束が実行されなければ、失望が生まれ信頼が崩れる。

人から信頼を得たければ、約束を実行する。自分の心情や信念から発生する暗黙的約束を実行し続ける。相手方にとって顕在化されていない約束を実行すれば、信頼度は高くなるはずだ。


このコラムは、2016年2月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第462号に掲載した記事に加筆しました。

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