今週の「失敗から学ぶ」で日産の完成車検査不正について書いた。
メール配信後、秒速で読者様からメッセージをいただいた。
※I様のメッセージ
私も日産の件は不思議だなあと思いましたし、こんな大きなニュースのネタにするようなものだろうか、とも。メディアでは、新しく出た神戸製鋼の品質検査の誤魔化しと並べて報道されていますが、日産のケースはいまのところ検査内容自体の問題は指摘されていないので、両ケースは似て非なる別レベルの事案ではないでしょうか。
ご指摘の通り、日産と神戸製鋼所の問題は似て非なる別問題だ。
日産自動車:無資格検査員が検査を行ったが、検査そのものは正しかった。
神戸製鋼所:検査を行ったが、検査データを改ざんした。
神戸製鋼所の問題は同情の余地がない。
社内的にも、後ろめたさがあっただろう。本件の発覚は内部告発であろう。
日産の場合は、監督官庁の定期監査で発覚している。検査成績書の検査捺印が同一検査員の物が異常に多くあることを、監査員が疑問に思ったのだろう。
検査にかかる時間と、同一検査員の検査記録枚数を比較すればすぐにばれる。
また検査記録書の筆跡を見れば一目瞭然だろう。
問題となっている完成車検査は、陸運局の車検検査と同等のものである。工程内の品質検査と比較すれば、はるかに簡単な検査だ。なぜ検査有資格者が不足していたのか?
前回のメール配信後参考になりそうなコラムを発見した。
「日産の「無資格検査問題」が起こるべくして起きた意外な背景」
この記事は、ライバルメーカ幹部の推測を紹介している。
- 急激な生産台数増。17年上期は前年同期比で23%増。
- 経営幹部と現場のコミュニケーション不足により、リソース確保が不足。
確かに生産が急増すれば、人員の確保は現場の努力では及ばないことがある。しかしフル生産から23%増加したわけではなさそうだ。しかも足りなかったのは完成車検査有資格者だ。
現場管理職レベルの、人員計画・完成車検査員の教育計画で対応出来る範囲だろう。完成車検査員の資格があっても、従来通りの組み立て作業もできるはずだ。それともよほど弱気の年度計画を立てていたのだろうか?
記事は日産の認識が、軽すぎると指摘している。
「日産は最初に西川廣人社長や生産担当役員ではなく、一般の従業員に会見を任せた。」
さすがに、一般従業員といっても役職のある幹部社員が対応したのであろうが、これでは監督官庁の面子も無かろう(笑)
今回の問題は法律がらみの特殊な問題のように見えるが、「技能」という括りで考えると、製造業であれば共通の問題だ。
加工技術などで短期間で熟練できない技能がある。例えば「きさげ加工」は高い平滑度と面荒さという相矛盾した加工を、技能で実現する。このような技能は一朝一夕では得られない。きちんと技能継承の計画を持たねばならない。
設備などの保守計画なども同様に、問題が明確になってからでは間に合わない。事前に計画を持ち粛々と準備をしておく、というのが今回の事例の教訓だろう。
このコラムは、2017年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第575号に掲載した記事に加筆しました。
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