日産の完成車検査不正


日産自動車が無資格の従業員に新車の検査をさせていた問題で、工場では書類の偽装に使われる有資格者の印鑑を複数用意し、帳簿で管理のうえ無資格者に貸し出していたことがわかった。こうした行為はほぼ全ての工場で行われ、組織的に偽装を慣行していた疑いが浮上した。

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(朝日新聞電子版より)

 この記事を読んでも何が問題なのか分からない。多分何かが隠されている、と言う印象を持った。

補助検査員が検査を行い、検査員の印鑑を押印していた、と言う事は生産量に対し正規検査員の数が足りなかったと考えられる。本問題の根本原因は「正規検査員の不足」と言う事になる。私には、なぜ正規検査員が不足したのかが、理解できない。

記事には、完成車の検査に関してこう記述してある。
"検査は本来国がするべきものだが、大量生産を可能にするため、各社が認定制度を設けて信頼性を担保し、「代行」する仕組み。”
つまり新車購入時に「車検」を受けなくても済む様に、メーカが陸運局を代行して検査を行うと言う事だ。

検査は本来国がすべきであり企業に代行検査を依託している、のであれば、依託検査員の資格認定は国が行うべきである。しかし検査員の認定制度は各社が設ける事になっている。これで本当に代行検査と言えるだろうか?

検査員の資格認定が企業に任されているのだとすれば、年度生産計画を立てた時点で、検査員が何名必要かは分かるはずだ。その時点で検査員の育成、認定計画を作るべきだ。本気になれば、組立工の大半を検査員有資格者とする事も可能のはずだ。

前職時代に、電源ユニットを納入していた事務機器メーカも「代行検査」制度を採用していた。
工程内最終検査員に対し、顧客の指導員が代行検査員の教育を行い、認定試験を実施する。検査員が認定試験に合格し「代行検査員」となると、顧客の受け入れ検査が省略される。当然代行検査員は4M変動管理の対象となり、離職、職場異動時には報告が必要となり、代わりの代行検査員が再教育・認定を受けなければならない。

ありていに言ってしまえば、顧客側の受け入れ検査業務のコストダウンだが、出荷側、受け入れ側の検査基準(検査員のスキルも含む)を摺り合わせておく意義は大きい。その上顧客の受け取り検査はAQLによる抜き取り検査だが、代行検査は全数検査である。

日産は完成車検査有資格者の認定を、国の機関に依存せずに、独自で出来たはずだ。なぜ押印の偽装などと言う姑息な事をしたのだろうか?


このコラムは、2017年10月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第574号に掲載した記事に加筆しました。

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