新聞の報道記事からメンテナンスに関して考察してみよう。
「空自機墜落、原因は配線ミス 防衛省が断定」
愛知県豊山町の県営名古屋空港で10月31日に航空自衛隊の支援戦闘機F2Bが離陸に失敗し炎上した事故で、防衛省の事故調査委員会は15日、事故原因を、定期点検をしていた三菱重工業の配線ミスと断定した、と発表した。
機体の姿勢を感知するセンサー(ジャイロ)と飛行制御コンピューターの間の配線を誤ったため、水平尾翼が異常な角度で動いて墜落した。今後、配線ミスが起きた原因を調べるとしている。
ジャイロというのは傾きを検出するセンサーである。
離陸時に機体が上に傾いているので上下ジャイロからは上に傾いているという信号が出る。しかしまっすぐに進んでいれば左右のジャイロ出力はない。
メンテナンス時に上下と左右のジャイロ出力が入れ替わってしまっため、飛行制御コンピュータは機体が水平状態と認識しており更に水平尾翼のフラップを上昇側に持ってゆく。実際に機体は上昇しており更に上昇角度が大きくなる。
パイロットはそれを補正しようと水平尾翼のフラップを下降側に倒す。
飛行制御コンピュータはフラップの角度は検出できるが上下ジャイロの出力がないので、更にフラップを下降側に倒す。
離陸時最大の推進力を出しているのにフラップを下降側にぐいと倒されたのではひとたまりもない。頭からもんどりを打つように墜落をしてしまったのだろう。
工場の設備でもメンテナンスの直後は意外にも問題が発生するものだ。
分解清掃した部品の組み付け間違、組み付け忘れ。
仮締めしたネジの本締め忘れ。
設定の戻し忘れ。
メンテ作業中に解除した安全機構の戻し忘れ。
等、いくらでもリスクはある。
メンテナンス作業手順にメンテナンス完了時の確認手順をきちんと入れておく必要がある。メンテナンス作業も「4M変動」のひとつと認識すべきだ。
防衛庁は、今回の原因調査により見合わせていたF2の飛行を配線を確認した後再開するという。
しかし誤配線はF2以外の機体でも発生しうる。全機体を再確認する必要があるだろう。
こんな事例もある。
装置内でX線を使用しているため扉を開けたときはX線が止まるように安全装置がついていた。メンテナンス時にX線が正しく出ているかどうか調べるために、扉の開閉を検出するマイクロスイッチをテープで止めて扉が閉まっている状態にしておいた。点検完了時にマイクロスイッチのテープをはがすのを忘れ運転を開始。
このため運転中に扉を開けるたびに作業者がX線に被爆していた。幸いX線の量が微弱であったため人体への影響は心配なかったが、目に見えないだけに深刻な事故だといえよう。
メンテナンス作業に対しFMEA(故障モード効果解析)を実施し、問題点の抽出と対策を立てる事が必要だ。
皆さんの工場でも、メンテナンス作業を再度見直されてはいかがだろうか。
このコラムは、2007年11月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第9号に掲載した記事です。
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