月別アーカイブ: 2006年11月

現場力

・現場は宝の山
・現場百篇
・三現主義
現場の重要性を表現する言葉はたくさんあります.
私も「現場主義」を標榜しており,日々足腰を鍛えております(笑)
中国で指導していたときのエピソードを紹介しましょう.
停電のお話です.
たまたま私が工場にいた時に停電がありました.
すぐさま製造ラインに飛んでいった.班長さんたちが停電時の処置がちゃんと出来ているかどうか確認に行ったのです.
ひと段落して戻ってきてみると,工場の台湾人幹部たちは,オフィスが暗くなっているので,表に出ておしゃべりしていました.
私は「せっかくのチャンスをあなたたちは無駄にしましたね.」と幹部たちに話をしました.彼らが停電中おしゃべりをしている間に私はいくつものことが出来ました.
・現場の班長さんたちがきちんと停電時の処理が出来ていることが確認できた.
・その後班長さんたちを集めて,停電時の注意事項と,復電時の注意事項を説明しました.
・工程内の非常灯の位置が悪いため,肝心の半田槽周りが暗がりになっているのが分かりました.
・非常灯の設置場所を変更し,点検表を追加することを指示しました.
現場に行けば,班長さんたちの非常時に対するOJTと職場環境の改善が出来たわけです.

サービスのクオリティ

品質と言うのは製造業ばかりではなくすべての産業に共通の経営基盤だと思います.
「品質」と言うよりは「クオリティ」と言った方がわかりやすいかもしれませんね.
今回はレストランの例をお話します.
接客のクオリティは,作業者(接客係)の人的クオリティによって直接影響されます.
この人的クオリティをどう向上するかと言うのが顧客満足の鍵になります.
勿論料理が美味しいと言うのは「当たり前品質」です.それを超えて「感動品質」を提供しようとすれば,他を圧倒的に引き離す美味しさもしくは,サービスのクオリティが必要です.
私が時々行く中国のレストランは味も値段もいいのですが,服務員の態度がなっていない.それでもたくさんの人で繁盛している.不思議です.
そういう私も,いつも腹を立てて店を出るのだけど,忘れたころにまた来てしまう(笑)

  • ここのウエイトレスは全員ブスッとしていて,ニコリともしない.
  • 何か頼んでも,客の顔を見ない,返事をしない.
  • 料理を運んできた坊やに「唐辛子味噌」を頼んでも「ない」という.仕方がないので別の女の子に頼まなければならない.
  • 頼んだ料理がなかなか来ないので,どうなっているのかたずねると「私は頼まれていないから分からない.あなたが頼んだ人間に聞いてくれ」という.
  • さすがに一緒に食事をしていた中国人の友人も腹を立ててしまいました.私は彼に,「ここで一週間働いたらどうして彼らがあんな態度なのか分かるよ」と話しました.
    私にはこのレストランの経営者に問題があるように思えます.

  • 従業員に適切な教育をしていない.
  •  従業員の給料は経営者の財布から出ているわけではない.お客さんの財布から出るのだ.お客さんに満足してもらうことが仕事だ.と言う基本的な事を教えていないのでしょう.
    笑顔,お客さんの目を見て聞く・話す,これはコストのかからない最良のサービスです.

  • 従業員に楽しく働く環境を提供していない.
  •  顧客満足を得るためにはまず従業員満足を与えなければなりません.不満だらけの人が,お客様に満足など与えられません.ここの従業員は朝のシフトだと6時ころに出勤して準備を始めていると思います.きっと朝食もろくにとらずに仕事をしているのでしょう.一番混む時間帯9時ころになるとお腹が空くでしょう.空腹でレストランの仕事をするのも苦痛です(笑)
    サービスは掛け算です.一人でもこういう人がいれば他の人がどんなによくても結果は「0」になってしまいます.もっと困るのはこういう気持ちはすぐに他の従業員に伝染することです.
    私が経営者ならば,仕事前にお腹いっぱいになるように食事をとらせます.

  • 従業員に働く喜びを与えていない.
  •  従業員にとって忙しくても,暇でも同じ給料ならば楽したくなります.利益の1/3は従業員に還元するよ,と言えば従業員は忙しいほど働く張り合いがあるというものです.

  • 作業手順が確立できていない.
  •  勿論一人ひとりの作業手順は出来ているでしょうが,「チームワーク」としての作業手順ができていないと思います.従って上述の坊やのようにお客様に何か頼まれても「ない」とか「知らない」と答えてしまうわけです.彼は料理を運ぶ係りですから,お盆しか持ってませんから.
    小さな食堂ならば,経営者の背中を見て従業員が育ちますが,規模が大きくなるとそれでは間に合いません.従業員を育てる「仕組み」と「仕掛け」が必要です.

    プリント基板の半田不濡れ問題

    以前お客様からメールで,プリント基板の半田不濡れ問題が多発し,プリント基板業者の監査ポイントについてコメントしてくれと相談を受けました.
    同様の問題が発生した場合の参考になると思うので,ここに回答メールを転載しておきます.
    — ここから —
    基板屋を見るときのキーポイントを今回の不濡れ問題に絞って列挙してみます。ご参考まで
    なお監査を始める前に、QC工程図を出させ、それに沿って見てゆくと良いでしょう。設定値などは設備によって変わってしまうので、こうあるべきだと言うのはわかりませんが、どうやって設定値を決めたのか、自分達の設定値をどのようにキープしているのかと言う観点で見ればよいと思います。
    *SR(ソルダレジスト)塗布工程:
    基板表面にSRが付着していると、半田不濡れになります。薄く残った場合、透明になって見ても判りません。
    印刷用のシルク版の清掃管理、シルク版の寿命管理(ステンレスのシルク版を使っているときは寿命に関しては気にすることはないと思います)、スキージの管理。
    スキージの硬さとか厚みなど、結構ノウハウが詰まっているはずです。このノウハウを、期待通り工程内でキープする為の管理が十分行われているか。
    *ソフトエッチング・プリフラックス塗布工程:
    化学プロセスの最後にソフトエッチングをして表面酸化膜を除去した上でプリフラックスを塗布していると思います。
    このときのソフトエッチングの条件(エッチング液の濃度、PH、温度、噴霧強度、コンベアスピード)がきちんと設定できているか。プリフラックスの品種、濃度(多分原液を吹き付けていると思います)などの規定が現場でわかるようになっているか。
    現場で設定値と実際の設定が見えるようになっていることが重要です(見える管理)。規定は?と言うと作業標準を出してきますが、作業現場で見えるようになっていないと管理されているようには見えません。また設定値が正しいことをどのように保証しているかを確認する必要があります。
    通常は日常点検記録があるはずです。これがまじめに運用されているかどうか見抜かねばなりません。たとえばレ点ばかりの点検記録はまじめにやっていない可能性があります。実際の数値を書き込むようになっていると、かなり信頼度が上がります。
    *穴あけ工程:
    片面基板の場合は最後にプレスで穴を開けていると思います。このとき作業者が素手または汚い手袋で触ると、半田不濡れが発生します。非常に不安定な方法で、基板に触らないように作業している工場をよく見ます。
    検査治具で穴が開いているかどうか検査していたりすると、全部の基板を触ることになります。この後ソフトエッチングの処理をしていれば、この工程で素手で触ってもあまり問題はないかもしれませんが、基板表面を素手で触らないということが、工場全体で習慣化されている必要があります。特にこの工程は機械油で手が汚れやすいので、ソフトエッチングをしても除去しきれない可能性があります。
    *検査工程:
    オープンショート検査、目視検査で基板に素手で触る可能性があるかどうか。
    監査に行くと事前に言っておくと、急遽指サックを準備したりします。作業指導書などに指サックを使用すること、基板表面を素手で触らないこと、と明記してあることを確認した方がよいでしょう。
    また現場の班長さんに指サックを持ってくるように言ってすぐ出てくるかどうか確認すると、本当のところが見えると思います。
    例えば説明のために付いて来る工場の品証とか、えらい人がひょいと基板に触ったりしたらこの工場は信用できません。
    *包装工程:
    検査が終わったら、全ての基板がきちんと包装されて、誰も基板表面に触れないようにしてあることが必要です。
    包装作業員も素手で触れないように清潔な手袋を着用していなければなりません。包装工程は指サックでは不十分なような気がします(手のひらに触れる可能性が高い)。手袋の交換周期とかどのように管理しているか。
    *保管:
    保管温度、湿度がどのように管理されているか。
    保管方法。床にじか置きなど論外です。水を使って床掃除をすることを想像すると、床からの高さが確保できていなければ濡れてしまいます。
    保管期間がどのように管理されているか。現場の記録、保管期限の表示などで確認してください。48時間以内に使い切れと客に要求しているので、それなりの保管期間管理をしていなければおかしいはずです。
    *記録の確認:
    基板はバッチ処理なので、ほとんどの基板屋が、工程記録をとっています。最低投入数量、日時などがロットごとに記録してあるはずです。まじめなところは各工程の設定パラメータ、不良数など記録しているはずです。
    今回問題となったロットのPO番号を御社の購買部に確認をして、このPOで生産した工程記録を全部出させて、工程と日時に問題がないか確認してください。例えばソフトエッチングの後、穴あけプレスまでの間の期間が開きすぎていれば、ここで酸化してしまう可能性があります。
    *5S:
    一般的なことですが、重要です。
    例えば最終製品になる前の基板の取り扱い素手で基板表面を触らないようにしているか。もちろん後ほど化学処理で酸化面は除去されてしまうので、問題はないのですが、作業員に対する「躾」がきちんとできているかどうかを見るのです。
    工程内で滞留している、中間在庫などを見ると、酸化して変色してしまっているものがあったりします。当然後工程で除去されてしまうので、大きな問題にはなりませんが、作業員の認識が低いことがわかります。
    以上お役に立てば幸いです。
    — ここまで —
    QC工程図も現場も見ないで,コメントをしているのでちょっと矛盾したところがあります.
    このお客様はご自分で監査に出かけプリント基板メーカの指導をされました.

    抜き取り検査

    「MIL規格」を抜き取り検査の意味で使う方が結構おられます.この言い方は正しくありません.
    抜き取り検査の意味でMIL規格と呼んでいるのはMIL-STD-105Eのことです.この規格はすでに廃止規格となっており,今はANSI-AQS1.4に引き継がれています.
    一般にMIL規格というのは米国の軍の規格です.
    中国の同等の国家基準はGB2828ですが,内容そのものは同じです.
    この規格は統計確率理論で成り立っており,ロット全数から何個抜き取って検査するか,そのサンプルサイズと,そのロット全体を合格とするか不合格とするか判断する為のツールです.
    例えばAQL(Acceptance Quality Limit)が0.6%だとすると,ロット全数から何個サンプルを抜き取って,不良が無ければ合格にします,但しロットの中には0.6%の不良が含まれている確立があります.ということです.
    この規格を受け入れ検査で適用するときは,ロット全体の数量,AQLを規格の数表に当てはめ,サンプルの数量とロット不良と判断する時の不良個数を求めます.
    したがって,比較的AQL水準が高い場合かつロット全体の数量が多かったりすると,不良が1個見つかってもロット合格と判断する場合もありえます.
    なんとなく釈然としませんが,ロット全体にAQL水準の不良があってもOKですという検査方法なのでこうなってしまいます.
    これに対して,クリティカル欠陥についてはAQL0.0%で検査します.という工場が意外にも多くあります.私が指導してきた中国の工場はほとんどすべて,クリティカル欠陥についてはAQL0.0%というルールにしていました.
    気持ちはわかりますが,これはまったく意味がありません.不良なしを検査で保証しようとすると,全数検査しかありません.当然抜き取り基準の数表には0.0%の欄はありません.
    ロット不合格の判定になった場合は,全数再検査などの処置により使用することができます.しかし不良発生の原因をきちんと把握し,そのロットの他の製品に影響がないことを確認しておく必要があります.
    さらにその後の検査を並レベルから厳しいレベルに変えます.厳しいレベルになるとサンプル数が増えます.厳しいレベルで連続5ロット合格すると,並レベルに戻してよいことになっています.

    顧客満足について

    ISO9001は2000年版になって「品質保証」よりも「顧客満足」が前面に出てきていますよね.
    私達日本人が考えている「顧客満足」と規格が要求している「Customer Satisfaction」って少しずれているような気がします.
    「Customer Satisfaction」と言うのは顧客の要求事項を満たしていることです.すなわちプラスマイナスゼロ.過不足なく要求事項を満たしていればOKなのです.
    一方で「顧客満足」と言う言葉には,顧客要求として定義しにくい部分まで入り込んで満足していただこう,と言う語感があります.
    「顧客歓喜」(Customer Delight):言葉にされない願望に対して,期待をはるかに超える驚きを伴った反応.に近いものが有ると思うのです.
    「顧客満足」の計測パラメータのひとつに,顧客のリピートオーダー率があります.しかし満足しただけならば,必ずしもリピートオーダーはしません.満足だったけど他も試してみよう,となります.
    本当にリピートオーダーを獲得したければ「顧客歓喜」を狙わないとだめでしょう.
    ひとつエピソードを.
    ある飲食店の経営者が,ランチタイムのサービスセットに小さなケーキをデザートとしてつけることを思いつきました.
    食後のコーヒーを出すときにウエイトレスが,「これはサービスです」と言って小さなケーキを出す.
    お客様はすごく喜んでくれた.
    これに気を良くした経営者は,メニューにサービスランチ・ケーキ付きと書きました.
    どうなったと思いますか?
    同じようにウエイトレスが「これはサービスです」とケーキを出すとほとんどのお客さんは「えっ,こんなに小さなケーキなの?」と言って不満に思いました.
    中には自分はケーキを食べないからその分安くしろ,と言うお客様まで出てくる.
    メニューに書いたとたんそれが要求事項になってしまったわけですね.
    製品を販売するときも同じです.
    お客さんは製品を購入するのが目的ではないはずです.購入した製品によってお客さんの問題(欲求)を解決するのが目的です.
    製品を買いにきたお客さんに間違いなくその製品を販売する.これが過不足のない顧客満足です(ISO9001の世界)
    しかしお客さんがその製品によって何を解決したいのかを知れば,お客さんにさらによい製品やサービスを提案することができます.同時に供給者側にも新たな商機が発生する.これが「顧客歓喜」の世界です.