プリント基板の半田不濡れ問題


以前お客様からメールで,プリント基板の半田不濡れ問題が多発し,プリント基板業者の監査ポイントについてコメントしてくれと相談を受けました.
同様の問題が発生した場合の参考になると思うので,ここに回答メールを転載しておきます.
— ここから —
基板屋を見るときのキーポイントを今回の不濡れ問題に絞って列挙してみます。ご参考まで
なお監査を始める前に、QC工程図を出させ、それに沿って見てゆくと良いでしょう。設定値などは設備によって変わってしまうので、こうあるべきだと言うのはわかりませんが、どうやって設定値を決めたのか、自分達の設定値をどのようにキープしているのかと言う観点で見ればよいと思います。
*SR(ソルダレジスト)塗布工程:
基板表面にSRが付着していると、半田不濡れになります。薄く残った場合、透明になって見ても判りません。
印刷用のシルク版の清掃管理、シルク版の寿命管理(ステンレスのシルク版を使っているときは寿命に関しては気にすることはないと思います)、スキージの管理。
スキージの硬さとか厚みなど、結構ノウハウが詰まっているはずです。このノウハウを、期待通り工程内でキープする為の管理が十分行われているか。
*ソフトエッチング・プリフラックス塗布工程:
化学プロセスの最後にソフトエッチングをして表面酸化膜を除去した上でプリフラックスを塗布していると思います。
このときのソフトエッチングの条件(エッチング液の濃度、PH、温度、噴霧強度、コンベアスピード)がきちんと設定できているか。プリフラックスの品種、濃度(多分原液を吹き付けていると思います)などの規定が現場でわかるようになっているか。
現場で設定値と実際の設定が見えるようになっていることが重要です(見える管理)。規定は?と言うと作業標準を出してきますが、作業現場で見えるようになっていないと管理されているようには見えません。また設定値が正しいことをどのように保証しているかを確認する必要があります。
通常は日常点検記録があるはずです。これがまじめに運用されているかどうか見抜かねばなりません。たとえばレ点ばかりの点検記録はまじめにやっていない可能性があります。実際の数値を書き込むようになっていると、かなり信頼度が上がります。
*穴あけ工程:
片面基板の場合は最後にプレスで穴を開けていると思います。このとき作業者が素手または汚い手袋で触ると、半田不濡れが発生します。非常に不安定な方法で、基板に触らないように作業している工場をよく見ます。
検査治具で穴が開いているかどうか検査していたりすると、全部の基板を触ることになります。この後ソフトエッチングの処理をしていれば、この工程で素手で触ってもあまり問題はないかもしれませんが、基板表面を素手で触らないということが、工場全体で習慣化されている必要があります。特にこの工程は機械油で手が汚れやすいので、ソフトエッチングをしても除去しきれない可能性があります。
*検査工程:
オープンショート検査、目視検査で基板に素手で触る可能性があるかどうか。
監査に行くと事前に言っておくと、急遽指サックを準備したりします。作業指導書などに指サックを使用すること、基板表面を素手で触らないこと、と明記してあることを確認した方がよいでしょう。
また現場の班長さんに指サックを持ってくるように言ってすぐ出てくるかどうか確認すると、本当のところが見えると思います。
例えば説明のために付いて来る工場の品証とか、えらい人がひょいと基板に触ったりしたらこの工場は信用できません。
*包装工程:
検査が終わったら、全ての基板がきちんと包装されて、誰も基板表面に触れないようにしてあることが必要です。
包装作業員も素手で触れないように清潔な手袋を着用していなければなりません。包装工程は指サックでは不十分なような気がします(手のひらに触れる可能性が高い)。手袋の交換周期とかどのように管理しているか。
*保管:
保管温度、湿度がどのように管理されているか。
保管方法。床にじか置きなど論外です。水を使って床掃除をすることを想像すると、床からの高さが確保できていなければ濡れてしまいます。
保管期間がどのように管理されているか。現場の記録、保管期限の表示などで確認してください。48時間以内に使い切れと客に要求しているので、それなりの保管期間管理をしていなければおかしいはずです。
*記録の確認:
基板はバッチ処理なので、ほとんどの基板屋が、工程記録をとっています。最低投入数量、日時などがロットごとに記録してあるはずです。まじめなところは各工程の設定パラメータ、不良数など記録しているはずです。
今回問題となったロットのPO番号を御社の購買部に確認をして、このPOで生産した工程記録を全部出させて、工程と日時に問題がないか確認してください。例えばソフトエッチングの後、穴あけプレスまでの間の期間が開きすぎていれば、ここで酸化してしまう可能性があります。
*5S:
一般的なことですが、重要です。
例えば最終製品になる前の基板の取り扱い素手で基板表面を触らないようにしているか。もちろん後ほど化学処理で酸化面は除去されてしまうので、問題はないのですが、作業員に対する「躾」がきちんとできているかどうかを見るのです。
工程内で滞留している、中間在庫などを見ると、酸化して変色してしまっているものがあったりします。当然後工程で除去されてしまうので、大きな問題にはなりませんが、作業員の認識が低いことがわかります。
以上お役に立てば幸いです。
— ここまで —
QC工程図も現場も見ないで,コメントをしているのでちょっと矛盾したところがあります.
このお客様はご自分で監査に出かけプリント基板メーカの指導をされました.


2 thoughts on “プリント基板の半田不濡れ問題

  1. 宮原 修

    プリント基板の半田管理で検索させて頂きました。タメになりましたので、スタッフにもこの内容を案内しようと思いましたが、残念。文中、「不濡れ」が「付濡れ」との誤字(?)の為、誤解を生みそうなので、止めました。惜しいです。

  2. 林@クオリティマインド

    宮原様
    ご指摘感謝です。誤字2カ所修正しました。

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