抜き取り検査


「MIL規格」を抜き取り検査の意味で使う方が結構おられます.この言い方は正しくありません.
抜き取り検査の意味でMIL規格と呼んでいるのはMIL-STD-105Eのことです.この規格はすでに廃止規格となっており,今はANSI-AQS1.4に引き継がれています.
一般にMIL規格というのは米国の軍の規格です.
中国の同等の国家基準はGB2828ですが,内容そのものは同じです.
この規格は統計確率理論で成り立っており,ロット全数から何個抜き取って検査するか,そのサンプルサイズと,そのロット全体を合格とするか不合格とするか判断する為のツールです.
例えばAQL(Acceptance Quality Limit)が0.6%だとすると,ロット全数から何個サンプルを抜き取って,不良が無ければ合格にします,但しロットの中には0.6%の不良が含まれている確立があります.ということです.
この規格を受け入れ検査で適用するときは,ロット全体の数量,AQLを規格の数表に当てはめ,サンプルの数量とロット不良と判断する時の不良個数を求めます.
したがって,比較的AQL水準が高い場合かつロット全体の数量が多かったりすると,不良が1個見つかってもロット合格と判断する場合もありえます.
なんとなく釈然としませんが,ロット全体にAQL水準の不良があってもOKですという検査方法なのでこうなってしまいます.
これに対して,クリティカル欠陥についてはAQL0.0%で検査します.という工場が意外にも多くあります.私が指導してきた中国の工場はほとんどすべて,クリティカル欠陥についてはAQL0.0%というルールにしていました.
気持ちはわかりますが,これはまったく意味がありません.不良なしを検査で保証しようとすると,全数検査しかありません.当然抜き取り基準の数表には0.0%の欄はありません.
ロット不合格の判定になった場合は,全数再検査などの処置により使用することができます.しかし不良発生の原因をきちんと把握し,そのロットの他の製品に影響がないことを確認しておく必要があります.
さらにその後の検査を並レベルから厳しいレベルに変えます.厳しいレベルになるとサンプル数が増えます.厳しいレベルで連続5ロット合格すると,並レベルに戻してよいことになっています.