ISO9001は2000年版になって「品質保証」よりも「顧客満足」が前面に出てきていますよね.
私達日本人が考えている「顧客満足」と規格が要求している「Customer Satisfaction」って少しずれているような気がします.
「Customer Satisfaction」と言うのは顧客の要求事項を満たしていることです.すなわちプラスマイナスゼロ.過不足なく要求事項を満たしていればOKなのです.
一方で「顧客満足」と言う言葉には,顧客要求として定義しにくい部分まで入り込んで満足していただこう,と言う語感があります.
「顧客歓喜」(Customer Delight):言葉にされない願望に対して,期待をはるかに超える驚きを伴った反応.に近いものが有ると思うのです.
「顧客満足」の計測パラメータのひとつに,顧客のリピートオーダー率があります.しかし満足しただけならば,必ずしもリピートオーダーはしません.満足だったけど他も試してみよう,となります.
本当にリピートオーダーを獲得したければ「顧客歓喜」を狙わないとだめでしょう.
ひとつエピソードを.
ある飲食店の経営者が,ランチタイムのサービスセットに小さなケーキをデザートとしてつけることを思いつきました.
食後のコーヒーを出すときにウエイトレスが,「これはサービスです」と言って小さなケーキを出す.
お客様はすごく喜んでくれた.
これに気を良くした経営者は,メニューにサービスランチ・ケーキ付きと書きました.
どうなったと思いますか?
同じようにウエイトレスが「これはサービスです」とケーキを出すとほとんどのお客さんは「えっ,こんなに小さなケーキなの?」と言って不満に思いました.
中には自分はケーキを食べないからその分安くしろ,と言うお客様まで出てくる.
メニューに書いたとたんそれが要求事項になってしまったわけですね.
製品を販売するときも同じです.
お客さんは製品を購入するのが目的ではないはずです.購入した製品によってお客さんの問題(欲求)を解決するのが目的です.
製品を買いにきたお客さんに間違いなくその製品を販売する.これが過不足のない顧客満足です(ISO9001の世界)
しかしお客さんがその製品によって何を解決したいのかを知れば,お客さんにさらによい製品やサービスを提案することができます.同時に供給者側にも新たな商機が発生する.これが「顧客歓喜」の世界です.