信頼性技術」カテゴリーアーカイブ

メモリィの寿命

 5~6年の利用で制御装置のメモリーが寿命となり、後方カメラや運転支援システムなどの機能に不具合が生じると指摘している。

日本経済新聞

テスラのリコール記事だ。記事には続けて以下の文章がある

NHTSAによると、対象車両の制御装置は容量8ギガ(ギガは10億)バイトのNAND型フラッシュメモリーを搭載する。車を起動するたびにメモリーを消費し、平均5~6年で制御装置そのものが故障するという。

車を起動するたびにメモリィを消費し平均5~6年でメモリィが故障する、とはどういう意味なのだろうか?
起動・停止時に初期化したり、走行記録(例えば走行距離の積算値など)を不揮発メモリィに書き込むことになるだろう。毎日車を起動・停止したとして6年で5000回程度の書き込みとなる。この程度で寿命となる半導体メモリィがあるのだろうか?

他紙は、ボンネットにあたる部分が走行中に開いて視界を遮るおそれがある、と報道している。後方映像が表示されないのはトランクの開閉でケーブルが損傷するためとしている。

いずれにせよフラッシュメモリィが5~6年で寿命になるとは思えない。
プログラムのバグで記録エリアのアドレスポインタの更新が5~6年でオーバフローするというのはありそうだが。

日本経済新聞には技術系の記者も大勢いるはずだ、記事のチェックが漏れたのだろうか?

【編集後記】
記事の技術的な内容が間違っていても困る人はほとんどいないでしょう。
メモリィは5、6年で壊れる、と思ってもらえれば電気製品のメーカは喜ぶかもしれません(笑)
困るのは、よそ様の失敗から学ぼうなどという欲深かの人だけです。


このコラムは、2022年1月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1239号に掲載した記事です。

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事故は繰り返す・赤リン

パナがリコール、ドアホンが相次いで発煙 いまさら赤リンのなぜ

 問題なく使えていた自宅のインターホン。ところが、7~9年たったある日、突然、発煙する──。パナソニックが製造・販売するインターホン「テレビドアホン」の室内側モニター親機(以下、親機)の発煙トラブルが2019年9月
以降に相次いでいる。このうち、4件が火災認定事故となり、同社は21年12月1日にリコールの実施に踏み切った。

 対象は、「VL-MV18」「同20」「同25」の親機の3品番(セット品番では4品番)と、その修理用基板。合計で12万9792台をリコールする。製造期間は12年7月~12月。パナソニックは「製品内部の基板パターンの安全機構および基板
や筐体(きょうたい)に使用している難燃材料により、製品の温度上昇が収まる構造となっており、本体からの発火や拡大被害に至る危険性はないと判断」していると説明する。

日経クロステックより

赤リンによる発煙、火災事件は昔から繰り返している。
参考:トラブルは繰り返す

過去にTV受像機のフライバックトランスからの発煙・発火事故が多発。
フライバックトランスの絶縁樹脂の難燃材料を赤リンからブロム(臭素)に切り替えた。これでTV受像器の発煙・発火事故は激減。
しかし環境問題に対応するRoHS指令によりブロムが使えなくなる。材料メーカは赤リンの耐湿性あげることで、難燃材料・赤リンを復活させる。

しかしその後、ハードディスク装置からの発煙事故が多発。原因は赤リンだ。
フィライバックトランスの様に高電圧25kVがかかっているわけではないが、ハードディスクドライブ制御IC内部のパターン間隔はμmを切っている。電圧が低くともパターン間の電界は高いだろう。
耐湿性向上に限界があるのか、耐湿性に寿命があるのかわからないが事故は発生し続けている。

部品内にある臭素を回収する方法を開発するのが次善の策かもしれない。


このコラムは、2021年12月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1228号に掲載した記事です。

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防水加工の電気カーペット注意 操作部分、ぬれると発火

 「防水加工」と表示された電気カーペットの操作部分(コントローラー)から発火したという苦情が国民生活センターに寄せられている。操作部分に水分が入って周辺部分でショートしたのが原因とみられる。センターは19日、説明書やカーペット本体に「操作部分には防水機能がない」と明記するよう
メーカーに求めるとともに、利用者にも注意を呼びかけた。
 1月に起きた静岡県の50代の女性の事例では、電源や温度調整のコントローラーから30センチほど炎が上がった。メーカーは、飼い犬の尿が操作部分にかかったのが原因とみている。「防水加工はカーペット本体だけということは取り扱い説明書には明記している」というが、利用者に誤解を与えないように、新年度モデルから、「ペットの尿による水ぬれの恐れを説明書に加える」という。

(asahi.comより)

 この記事を見て日本の自宅にある電気カーペットを思い出してみた。
操作部分は電気カーペットと一体になっているが、構造的に防水されているとは思いにくい。
カーペット部分だけ防水加工をして、操作部分は防水加工していないというのは安全設計上の不備だと思う。

ユーザの使い方としてカーペットに座ってビールやお茶を飲むことは容易に想像できる。
ペットがいなくても同様の事故は発生しうるだろう。

説明書に注意書きを追加する、操作部分に注意書きを表示する、ということでは事故は防げない。操作部分も防水加工にすべきだと考える。

以前コンセントに本体ごと差し込めるプラグイン型の電源装置を開発した事がある。
品証部の「製品妥当性評価」により、テーブルタップに並べて3つ以上差した場合に、内部温度上昇が設計基準を超えることを発見した。

壁コンセントに差した場合は単体でしか使用できないのでなんら問題がない。
しかしテーブルタップを使用した場合、ちょうどぴったり並んで差さってしまうのだ。この時両隣の電源からの熱で真ん中の電源の内部温度が設計基準を超えることを発見した。

設計者は壁コンセントに挿入して使用することを前提としていたため、周囲温度は40℃以下で設計していた。テーブルタップに並べて最大負荷を取った時にケース表面が50℃程度になるため想定より10℃上がってしまった。これで火災になると言うことではなく、内部の部品の期待寿命が設計規格を満足できなくなる。

急遽製品のケースの幅を若干大きくし、テーブルタップを使っても並べて差せないようにした。
金型を修正する費用は発生したが、殆どコストをかけずに顧客の不満を未然に防ぐ事が出来た。

このときに電気回路の寿命設計を見直す、内部の部品をグレードアップする、という解決策を取ると「説明書に注意書き」ということになったかもしれない。火災事故にはならないという前提があるので、品証責任者だった私も同意したと思う。

しかしちょっと考え方を変えるだけで、この時の様にコストをかけずに問題を解決できる事があるものだ。


このコラムは、2009年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第85号に掲載した記事です。

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部品からの異音

 先週の「信頼性不良問題」の記事に関して読者様からメールをいただいた。

<T様のメッセージ>
以前テレビの修理をしていたころは、フライバックトランスから高圧が漏れていて、お客さんら変な音がするという指摘が、あり、良くフライバック交換をしていました。

T様、メッセージありがとうございます。

フライバックトランス高圧部と外部の筐体間で強い電界ができている。
何らかの理由でフライバックトランスの絶縁が低下していると、ジリジリという小さな放電音が聞こえてしまうことがある。

TV受像機の場合は音声も出ているので気がつかないこともある。しかしモニターやPCのディスプレイに使うと静かな環境では聞こえてしまう。

こういうのは大クレームにはならないかもしれないが、一度耳につくと気になってしまう。

以前液晶TVのアダプター電源内部のセラミックコンデンサから異音が発生した事がある。部品のロットばらつきなのか、量産後しばらくして突然異音が発生する物が出てきた。

通常は気にならないレベルの音で、工場の検査時には全く気がつかなかった。

クレームのあったエンドユーザは寝室で液晶TVを使用しており、TVを消して就寝しようとするとこの音が聞こえてしまう。TVを消してもアダプター電源は動作したままなので異音は発生したままだ。

セラミックコンデンサの両端にかかった交流電圧による圧電効果でセラミックディスクが振動して異音が発生するようだ。

異音のメカニズムは推定できたが対策には苦労した。
部品を違うメーカの物に変えると音は出なくなる。しかしこれではまたいつか異音が発生する可能性がある。

最終的には部品に細工をして共振しないようにした。


このコラムは、2009年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第120号に掲載した記事です。

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失敗事例

 失敗を失敗に終わらせない。他人の失敗をも経験値として共有し、失敗を未然防止する。そのために失敗原因を特定し、その対策を考え設計や製造法を改善する。そんな目的で毎週このコラムを書いている。

また失敗原因を特定するためには、故障メカニズムや信頼性技術の探究も必要となる。そのために信頼性技術に関わるコラムをホームページに公開している。

例えば半田結合点の信頼性問題や、メッキ処理で発生する水素脆性破壊、電解コンデンサの電解液による発煙事故、電解液の模倣で発生した電解コンデンサ不良、などなど過去の問題を書き留めてある。

例えば電気・電子製品に使われる難燃剤は過去から形を変えて何度も火災事故の原因となっている。
そのような事例を共有する目的で、私自身が経験したことや、間接的な見聞を掲載している。

上記のリンクをアクセスしていただければ、それらのコラムは自由に閲覧できる。

先日ボランティアで活動している東莞和僑会の運営メンバーのミーティングでWeb交流会(月一回金曜日の午前中に開催しているオンライン勉強会)で、信頼性技術に関わる話をせよと白羽の矢を当てられてた。提案者は私のコラムの熱心な読者でありすっかいおだてられ、矢は私の背中に相当深く刺さってしまったようで、断りきれなかった(笑)


このコラムは、2021年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1168号に掲載した記事です。このメールマガジンでは、市場不良などの事例から再発防止対策のヒントをお伝えしています。

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新規・珍奇技術

 以前ご紹介したプラスチック製インペラの燃料ポンプのリコールが拡大している。

「デンソーの燃料ポンプ」

通常はプラスチック材料をグリースなどの油脂が付着する環境では使用しない。ガソリンもプラスチック材料を侵し、膨潤、破断などの不具合を発生させる。
今回の回収の燃料ポンプはインペラに耐油脂製プラスチック材料の強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用している。ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有しガソリンが付着しても問題はないはずだ。だが、成形時の温度が低いと、樹脂密度が低くなりガソリンにより膨潤する。

市場不良発生により、初めてこの現象に気がついたというのではお粗末だ。当然新規材料なので分からなかったということはありうるだろう。

燃料ポンプに使用することを決定した時点で、使用環境で変形などの変化が発生しないことを確認すべきだ。なぜなら燃料ポンプのインペラに関して過去から、燃料ポンプの寸法制度、ゴミの巻き込みなどで回収騒ぎを起こして
いる。このことに着目すれば、「プラスチック・インペラの寸法精度」というキーワードが出てくるはずだ。もちろん加工精度には問題は無かろう。
しかし使用中の変動も考えるのが設計者の役割だ。

新規・珍奇技術を採用する時は十分な検討が必要だ。
新規技術を採用すれば、同業者の一歩前に出られる。この誘惑に勝つのは困難だろう。
珍奇技術を採用してしまうと業界標準とはならず、供給性や価格で不利になる。

しかしナーバスになるだけでは、競争力のある製品は作れない。事前に想定できる事態を列挙し、事前に対策することで問題を回避したい。

新規・珍奇技術

 以前ご紹介したプラスチック製インペラの燃料ポンプのリコールが拡大している。

「デンソーの燃料ポンプ」

通常はプラスチック材料をグリースなどの油脂が付着する環境では使用しない。
ガソリンもプラスチック材料を侵し、膨潤、破断などの不具合を発生させる。今回の回収は耐油脂製プラスチック材料の強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用している。ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有しガソリンが付着しても問題はないはずだ。だが、成形時の温度が低いと、樹脂密度が低くなりガソリンにより膨潤する。

市場不良発生により、初めてこの現象に気がついたというのではお粗末だ。
当然新規材料なので分からなかったということはありうるだろう。

燃料ポンプに使用することを決定した時点で、使用環境で変形などの変化が発生しないことを確認すべきだ。なぜなら燃料ポンプのインペラに関して過去から、燃料ポンプの寸法制度、ゴミの巻き込みなどで回収騒ぎを起こしている。このことに着目すれば、「プラスチック・インペラの寸法精度」というキーワードが出てくるはずだ。もちろん加工精度には問題はない無かろう。しかし使用中の変動も考えるのが設計者の役割だ。

新規・珍奇技術を採用する時は十分な検討が必要だ。
新規技術を採用すれば、同業者の一歩前に出られる。この誘惑に勝つのは困難だろう。
珍奇技術を採用してしまうと業界標準とはならず、供給性や価格で不利になる。

しかしナーバスになるだけでは、競争力のある製品は作れない。
事前に想定できる事態を列挙し、事前に対策することで問題を回避したい。


このコラムは、2021年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1172号に掲載した記事です。

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パナソニックのレンジ、発煙・発火事故18件

 経済産業省は20日、松下電器産業(現パナソニック)製の電子レンジ(NE―AT80)から煙が出る事故が7日に宮城県で起きたと発表した。事故の恐れがあるとして同社が07年5月からリコール(部品交換など)しているレンジ12機種のうちの一つ。一連の発煙・発火事故は18件目で、いまだに169万台が部品交換していない。

 7日の事故は、レンジ裏側の吸気口にほこりが詰まったまま使い続けたため、内部のはんだ付け部にひびが入って火花が飛び、周りの樹脂に火がついたとみられる。一連の事故でけが人は出ていないが、リコールの実施率は昨年末
時点で12%にとどまり、リコール後も今回を含めて8件の事故が起きている。同社は昨年11月から折り込みチラシを全国で4500万部配って注意を促している。

(asashi.comより)

半田クリープによる事故であろう。
半田クリープと言うのは、半田結合点に機械的ストレスがかかった状態で長期間の間に半田がひび割れてしまう現象だ。温度、機械ストレスの大きさが加速要因となる。

半田クリープが発生した場所が高電圧回路だと今回のようにスパークが発生し、発煙事故につながることもある。

重量部品のリード、半田付け後の機械ストレスなどに気をつけないといけない。

特にPC電源のようにトランス、コイルなどの重量部品があり、かつ部品がプリント基板にぶら下がる形でPCに組み込まれていると、簡単に発生する。リードをクリンチして半田結合点に直接機械ストレスがかからないようにする。重量部品はリードを増やし、リード一本あたりの重量を減らす。ハトメを使い半田接合強度を上げる(片面プリント基板の場合)
半田盛をする。などの対策で半田クリープ発生を回避しておかなければならない。

また作業で、半田付け後に半田結合点に機械ストレスをかけることは禁物だ。

半田クリープこちらも参照ください


このコラムは、2009年1月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第80号に掲載した記事です。

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ソニー製パソコンに異常発熱の恐れ 44万台無償修理

 ソニーは4日、ノートパソコン「バイオ TZ」シリーズの一部機種で異常発熱の恐れがあるとして、発売済みの44万台のうち顧客から申し出があった分を無償で点検、修理すると発表した。不具合が確認されたのは全世界で209件(うち国内が83件)。全体で軽度のやけどが7件報告されているという。

 ソニーは2007年8月には顧客から指摘を受けて、問題を把握していた。ただ、経済産業省への報告は今年8月だった。公表まで1年かかった理由について、同社は「不具合の調査に時間がかかったため」としている。

(NIKKEI。NETより)

 ネット上の情報から推測すると、ノートPCの液晶ディスプレイへの配線(フレキシブルPWB)がヒンジの開閉により徐々に絶縁層が磨耗し線間がショート、発熱するという故障のようだ。

当然稼動部分なので、そのような故障モードは当初から予測できるはずであり設計配慮はしてあったはずである。又耐久試験なども実施して問題がない事を確認してあるはずである。
それでも事故が発生した。なんらかの問題があったと考えるべきだ。

  • 製造的な問題
    設計的な弱点と製造的なばらつきが重なって事故が発生。
    事故品が設計仕様どおり作られていたのかどうかはわからないが、設計余裕がないところに製造上のばらつきが加算され、事故が発生。または製造の工程能力を超えた設計仕様が指定されていた可能性もある。

    当然設計的に製造余裕度を確保することは重要だが、高機能かつ小型という時代の要請は十分な設計マージンを確保できない場合もある。

    特に今回のように工程内検査で見つからない故障モードに関しては、きちんと工程FMEAを実施して事前に対策を打っておかなければならない。
    稼動部分の磨耗が与える故障モードの影響をきちんと評価をすれば、何らかの対策を打たなければならないという結論がでたはずである。

  • 設計妥当性評価の問題
    当然設計妥当性評価の項目には、寿命評価も入っていたはずである。
    その評価基準が妥当であったかどうか検証をしなくてはならない。これは外部からは知る由もないが、自社製品に水平展開をするために考察をしておく必要がある。

    寿命試験の基準を、製品の使われ方できちんと決定しなければならない。
    ノートPCの寿命を100年と想定して評価基準を作成するのは妥当ではない。
    長持ちをする製品を出荷するのも企業の責任であるが、消費者が受け入れられる価格で製品を販売するのも企業の責任である。

    例えばノートPCの使い方を、職場とオフィスで同一のノートPCで仕事をすると考える。
    そうすると始業時に一度PCを開き、昼休みの前後に開閉、就業時に閉じる。自宅に戻ってもう一度開閉。という使い方を想定、3年間のPCが毎日使われるとすると、3×365×3回=約3000回の開閉が行われるわけである。それに安全係数をかけて評価基準が決定される。

    しかし事故モデルのような小型ノートPCの場合、客先に持ち込んでプレゼン、移動中での使用等があるはずであり、一日3回の開閉ではすまないはずである。

    又寿命評価は材料の耐久性仕様から机上検討すべきではない。今回のようなアプリケーションでは本体との干渉が影響を与えるはずであるから実機で開閉寿命テストをしなければ、妥当性の評価をしたことにはならない。
    フレキシブルPWBの屈曲モードが、ヒンジ部分の磨耗により単純な屈曲ではなくなる可能性もある。

いずれにせよ、安全事故に関連する故障モードに関しては事前に評価をし対策を打っておくべきである。


このコラムは、2008年9月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第50号に掲載した記事です。

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タイヤ直撃事故 ボルトすべて破断、一部は以前から?

 

東名高速の吉田インターチェンジ付近で11日午前に起きたタイヤ脱落事故。
トラックにタイヤを固定するボルト8本はすべて破断し、うち2本の破断面にはさびが付いていた。専門家は、2本は事故以前から折れていて、残ったボルトに過大な力がかかった可能性があるとみている。

(asahi.comより)

脱落したタイヤが対向車線に飛び出してバスの運転台に激突し運転手さんが亡くなっている。大変気の毒な事件である。

トラックの運転手は始業点検をきちんとしていたのだろうか?
そして運送会社はどのように始業点検を指導していたのだろうか?

タイヤを固定するボルト2本は破断面に錆が発生していたというのであれば、始業時,休憩時の点検で見つかったはずである。ナットの頭をハンマーでたたいてみれば異変に気が付いていたはずだ。

運転手は,顧客と会社の財産を安全に運行する義務,自分自身と社会に対して身体人命の安全を図る義務がある。
また会社も同様に,顧客の財産を守る義務,従業員とその家族の生活を守る義務,社会に対する安全義務がある。
日常点検という作業がこれらの義務から発生しており,重要な予防保全活動であることをきちんと認知をする必要がある。

あなたの工場でも日常点検作業が確実に行われなかったときのリスクをきちんと評価して,従業員に再度徹底してみてはいかがだろうか。

ところで金属破断はそのメカニズムによって破断面が大きく異なる。
最初に折れていた2本のボルトは,長期間にわたって「疲労破壊」をしたものと推定できる。この場合破断表面は滑らかな表面になる。
一方最後に折れたボルトは,本来8本に分散していた荷重が1本に集中したため,過大な荷重に耐えられず破断したはずである。この場合のは断面は荒れたものになる。


このコラムは、2008年4月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第29号に掲載した記事です。

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