半田クリープ


プリント基板に挿入された部品リードの半田付け部分が、きれいに割れてしまう不良現象があります。これは工程内では発見できず、市場に出て時間がたってから発生する厄介な不良モードです。半田結合点に残留応力があると長い時間をかけて半田がクリープして割れてしまう現象です。温度で加速されます。
半田結合点が徐々に割れて行き最終的にはオープンになってしまいます。オープンになるだけなので通常は機能不全となるだけですが、深刻な不良モードになることがありえます。例えばACインレットのリード半田結合点が割れると、AC100Vとか200Vの電圧が切断されたり接続されたりするので、ぱちぱちと火花が出ることになり、徐々にプリント基板を焦がして最終的には発火の危険性もあります。
はじめてこの不良モードを経験したのは、プリンタの制御回路に使われているHICのリード半田付け部分でした。このHICは制御回路のプリント基板に半田付けされた上、HICの放熱の為にプリント基板とHICをプリンタ筐体に共締めする構造になっていました。従って半田付け時にHICが少し浮き上がったりすると、共締めする際にちゃんとプリント基板になじみますがリードの半田結合点に応力がかかったままとなります。この状態でお客様に出荷して1年位すると不良が発生しました。予防保全のためにプリンタを回収してHICを筐体に取り付けた状態で再半田付けし応力を逃がして対策としました。
これは作業方法上で半田結合点に残留応力が残ってしまった例です。最終製品だけを見てここに残留応力が残っているのを見抜くのは生易しいことではありません。しかしこの製品を作っているところをじっくり見ていれば、ここが危ないと容易に分かったはずです。
また重量部品を逆さ吊りにプリント基板に実装する、継続的に力がかかっている部分を半田だけで結合する、などなど設計的な要因もありえます。これはじっくり製品や部品を見れば簡単に見抜けるでしょう。
特に上記で述べたACインレットは不良モードが深刻になるので要注意です。ACケーブルの抜き差しによる力がダイレクトに半田結合点に伝わる構造になっていると、クリープだけではなく疲労破壊も心配しないといけません。じっくりと部品の構造を確かめなければなりません。
このように購入する部品や製品の構造をじっくり見る、OEM工場の工程をじっくり見る。自分たちで設計製造する部分も同じ手順でじっくり見る。ということが不具合を未然に防ぐ「予防保全活動」になると思います。
サンプリングで長期間の連続試験をしてみても、労多くしてこの手の不良モードを発見できないことが結構あります。