中国的モノ造り現場


 先週のコラムで,中国的モノ造りは図面や作業指示書がなくても製品を造ってしまうという事例をご紹介した.勿論「これはすごい」とポジティブに言っている訳ではない.一つ一つ違うモノが出来てしまう.
そのような製造方法だから,プロジェクタースクリーンの縁取りはフェードアウトしている.

しかしこのくらいの事で驚いていては,まだまだ中国初心者だ(笑)

ある工場の仕入れ先を見に行って驚いたことがある.
工場団地から少し外れた民家の中にその仕入れ先はあった.グラスファイバーの積層をする工場こうば(「こうじょう」というのはおこがましい気がする)だ.

家庭菜園の様な小さな畑の間の坂道を上ってゆくとその工場こうばがある.
工場こうばの中に入って,まず床が水平になっていない事に驚いた.グラスファバー布に樹脂を塗布含侵し積層する作業なので,床が水平になっていなければ,樹脂は片寄りしてしまうはずだ.工場の人間も,仕入れ先の人間も,そんなの問題にはなりませんと言う.

グラスファイバーを積層するための型が乱雑に積み上げられている事など,些細な事に思えてしまう(笑)

表を見ると道を挟んだ向かいの畑の真ん中にも,積層型が見える.そばまで行って見ると,製品が型の中で乾燥中であった.雨が降って来たらどうするの?と質問しても,今雨降ってないでしょ?という顔をしている(笑)

振り返って「こうば」を見ると,外壁にも沢山積層型が立てかけてある.これなどは,もはや雨で濡れる事を前提とした確信犯としか言い様がない.しかもその脇には「鉄くず回収」の看板まである.これはジョークのつもりなのだろうか(笑)

日本にも下請け加工をする零細企業が沢山ある.
商店街の中に「こうば」がある。がらりと引き戸を開けると旋盤が置いてあり,社長一家は二階で寝起きしている.なんて光景はよく見る.しかし,床の水平が出ていない,製品や金型が外に放置されている,などと言う事はあり得ないだろう.


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事に加筆しました。

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