トランス業者の指導(その2)


トランス業者の指導の続きです。
前回は半田ボールの話をしましたが、今回は線屑がコイルに巻き込まれていた不良について、どのように品質とコストを同時に改善する指導をしたかお話します。
トランスの不良と言うのは電源メーカにとっては致命的故障です。電源の特性に重要な影響を持っている。不良が絶縁不良(安全故障)につながる可能性がある。
したがってAQLで受け入れ検査をしていますが、1個でも不良があっては困るわけです。
抜き取り検査では100%良品(少なくとも絶縁不良ゼロ)を保証することはできません。業者さんの工程が100%良品を保証できる工程になっていることを確認しないといけません。
今回のような線屑がコイルに巻き込まれているような不良は容易に絶縁不良につながるので、1個でも発生を許してはいけません。
この業者さんの工場は見かけは比較的きれいに整理整頓ができている工場でした。
しかし巻き線工程の作業台を良く見ると、そこここに線屑が散らかっています。品証担当の説明によると、巻き線工程ではワイヤを切らないから線屑は発生しないはずだと言います。しかし現実に線屑がある。
作業台のうえにある線屑はトランスの絶縁テープの粘着部分に付着してコイルに巻き込まれる可能性があります。これを見逃してはいけません。
ここの工程は1次巻き線、2次巻き線、1次巻き線と一層ずつ一人の作業者がまいて、最後にリードにからげたワイヤをカットすると言う4人一組のラインになっています。このワイヤカットの工程で発生した線屑が飛び散ったり、半完成品を入れているトレーに入って巻き線工程に散らかっているわけです。
ワイヤカット工程を巻き線工程からはなれたところにおけば、線屑混入の危険性は減らせます。幸いなことにこの4人の工程は、巻き線工程が遅いため、ワイヤカットの工程が閑です。巻き線工程2組に対してワイヤカットを1にしてワイヤカット工程を離れた場所におけば、作業者は1人減らせる上に線屑混入の危険性も減ります。
すなわち品質をよくして、コストも安くできるわけです。
またトレーに入ってくる線屑は、空いたトレーをひっくり返しておく習慣をつけてやれば、うんと減らせます。これはコストをかけずに品質が向上します。
このような観点で作業現場を良く見てゆくと、不良を作りこまない工程が出来上がります。