JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝


JR北海道、データ改ざん「9部署で」 社長陳謝

 衆院国土交通委員会は22日、JR北海道の一連の不祥事を追及するため同社の野島誠社長らを参考人として招き、集中審議を開いた。野島社長は函館保線管理室など9部署でレールの検査データの改ざんがあったことを明らかにした。改ざんが全社的に行われていた疑いが強まった。

 野島社長は冒頭、「国民の多くに多大な迷惑をかけ、おわびします」と陳謝。「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べた。委員からは安全意識の欠如や内部統制の不備を指摘する声が続出し、野島社長は「反省している」と繰り返した。

 JR北海道でレールを点検・補修する保線部署は44カ所あり、これまでに函館保線管理室で検査データの改ざんがあったことが判明していた。

 野島社長は答弁で、新たに8つの保線管理室で改ざんが見つかったことを認め、改ざんの背景には「業務の集中や若手社員の技術不足など様々な問題が絡んでいる」との認識を示した。ただ、動機や組織性は「調査中」と述べるにとどめ、詳細な答弁は避けた。

 同社には経営幹部らが輸送の安全確保を議論する「安全推進委員会」がある。野島社長は「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と述べ、委員会が機能していなかったことを認めた。また、2011年の石勝線の脱線・火災事故を受け安全基本計画を策定した後もトラブルが多発したことには「計画を実行に移したが、スピードが足りなかった」と釈明した。

 同社では9月の国交省の特別保安監査で270カ所でレール異常の放置が発覚。追加監査も踏まえ、同省は2回の改善指示を出した。今月には監査の前に一部現場でレール検査データを改ざんしていたことが発覚し、同省は現在3回目の監査に入っている。

 JR北海道の経営陣が一連の問題で国会に呼ばれるのは初めて。国交省によると、JR幹部の国会招致は05年のJR福知山線脱線事故で、当時のJR西日本社長を呼んで以来。

 太田昭宏国土交通相は22日午前の閣議後の記者会見で「(参考人招致で)JR北海道が率直な報告をすることを期待している」と話した。

(日本経済新聞・電子版より)

 新聞記事だけで判断するのは公平性に欠けるが、野島JR北海道社長の衆院参考人質疑の応答はちょっとお粗末だと思う。

「日々の安全を確認し、私が先頭に立って再発防止に努めたい」と述べただけでは誰も安心出来ないし、問題の再発が防止出来ると言う確信も持てない。組織のトップが先頭に立って再発防止をするのは当たり前だ。「反省している」では無く、どのような対策を打つのかを明確にする必要がある。

原因の特定も出来ていないようでは、有効な対策など期待出来ない。
「安全推進委員会」が「トラブルの報告にとどまり、十分な審理もしていなかった」と言うのでは、何のための安全推進委員会なのか分からない。トラブル報告一つずつに、きちんと有効な再発防止が出来ている事を確かめて初めて安全推進委員会と言える。
この様な発言をすると言う事は、野島社長は安全推進委員会に出席していたのだろうかと言う疑念も出て来る。安全は経営のトップに掲げて達成しなければならない目的のはずだ。一番優先順位の高いはずの会議に経営トップが出席していないと言う事は、「安全第一」はただのお題目だと、従業員は理解するだろう。

このような問題は、工場の中でもしばしば発生している。
あなたも社内を見直してみてはいかがだろうか。問題が発生してからでは遅いのだ。

私が指導して来た中国工場の現場でも、データの改ざんはしばしばあった。
実例を紹介しよう。

  • 受け入れ検査の偽造
    板金部品の受け入れ検査記録を見てみると、いわゆるAQL検査による抜き取り検査をしているはずだが、各ロット2個分のデータしか記録されていない。
    作業員に理由を聞いてみると、記録用紙に抜き取りサンプルのデータを書くスペースが無いので、代表値(最初のサンプルと最後のサンプル)だけを記録していると言う。
    その説明を聞いて気が付いたが、作業員一人で検査出来る物量以上のサンプルを検査しなければならない様になっていた。作業員は、AQL基準には従わず、各ロット2個だけ検査して作業を間に合わせていた。
  • IPQC(工程内検査)の検査データ捏造
    IPQCは2時間ごとに、半田ごての温度、絶縁抵抗を測定することになっていた。
    しかし現場に巡回して来たIPQC検査員は、絶縁抵抗測定器を持っておらず、全て10MΩ以上と記入していた。検査員に理由を問いただすと、自分が使っている絶縁抵抗計が壊れ修理中だと言う。
  • 安全規定の非遵守
    工程内検査で絶縁耐圧検査(3000Vを印可する検査)は安全のためゴム手袋を着用して作業をする規定になっている。しかし検査作業員は顧客監査時以外は誰もゴム手袋を着用していない。それでも作業チェックリストにはゴム手袋着用の欄にレ点が入っている。
    これは作業員に聞いてみるまでもない、夏期にゴム手袋をして作業をすれば、5分もしないうちに手袋の中は汗まみれとなり、気持ち悪くて作業どころではない。

これらの「不正」に対しどのような対策を打ったら良いだろうか?
「従業員の品質意識を高め、再発防止に努めます」と言う対策で、再発しないと確信出来るだろうか?

勿論従業員の品質意識を高める事は必要だ。しかしこれらの問題は、品質意識が低いから発生したのではない。ちゃんと理由がある。
・時間が足りない
・必要な測定器がない
・汗で気持ちが悪い
これらの理由に対して、きちんと対策を打たねば必ず再発する。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆しました。

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