予知能力


 リーダーの資質として「予知能力」をあげたい.
予知能力といっても,オカルトチックな能力ではなく,ロジカルな推論による能力だ.

例えば生産現場のリーダが,作業台の上にネジが一本落ちているのを見て,どう考えるかという能力だ.このケースを例として考えてみよう.

何も感じないのは論外だ.

すぐさまネジを拾い上げ,作業現場の5Sを保つ.
これではリーダーとはいえない.初歩の作業員レベルだ.

ネジの種類を調べ,どこから来たネジなのかを考える.そしてそのリスクに対し適切な予防処置を取る.これができて初めて現場リーダーといえる.

つまりネジが製品に組み込むためのものであれば,閉め忘れや脱落の可能性を予知し,完成済み品に影響が無いことを確認する.

またはネジが設備から脱落したものであれば,ネジが脱落した設備で生産した場合の製品品質への影響を予知し,適切な処置を取る.

こういうことが予知能力だと考えている.

同じものを見ても,どこまで予知が出来るかでその人の能力が決まる.
例えば他社のリコールのニュースを見たときに,自分たちの仕事に引き寄せて予知が出来るかどうかということだ.リコールなどの事件ばかりだけではなく,日ごろの出来事の中から多くのことを予知できるようにならなければならない.

これはモノ造りの現場だけでの能力ではない.
例えば,若者の離婚率上昇の新聞記事を読み,作業者の採用難を予知する,というのは人事部職員に要求される能力だろう.

こういう能力は,本を読んでも身に付く能力ではない.
日々目の前にある現象やモノから何が予測できるのか,鍛錬をする必要がある.
私は部下とこういう問答をしょっちゅうやっていた.
なんでもない物事を見聞きしたときに,それをいかに深く考察・洞察してその影響を予知するという,問答をするのだ.

部下の予知能力がシャープになるだけではなく,自分の訓練にもなる.実はこういうことをやるのが結構面白いのだ.


このコラムは、2010年3月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第141号に掲載した記事に加筆したものです。

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