69歳の青年実業家


 仕事柄,経営者の方にお目にかかりお話を伺うことが多い.
先日は香港で年商150億円の会社を経営されている69歳の青年実業家からお話を聞かせていただいた.
69歳の青年実業家という言い方は矛盾しているが,彼にぴったりの表現だと私には思える.
彼は事業の傍ら,中国中を列車で旅して回っている.硬座(二等車)に乗り中国人に混じっての一人旅である.行く先々で地元の人と仲良くなり,食事に招待されたり自宅に泊めてもらったりしている.まさに青年の心を持った方である.
老若は過ごした年月で決まるものではなく,心のありようで決まるのだと彼の話を聞いて確信した.
彼にはもうひとつ趣味がある.
旅の途中で見た貧しい農村の小学校.窓にはガラスが入っていない.机も椅子もガタが来ている.彼はこの小学校を立て替えることにした.ぽんと私財を出し,建築の作業者には地元農民を採用することだけを条件にした.
完成した小学校と,子供たちの笑顔を見た彼は今5軒目の小学校を建築中だ.
「たいしたお金ではないんです」「私の道楽ですから」とさらりと言ってのける.
こういう日本人が,香港・中国で活躍しているのを知るとわれわれ日本人も誇りが高い.私も仕事を通じて感謝の気持ちを形にしてゆきたいと新たな目標ができた.