小売業界の顔、噴出した社内の不信


 三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長(61)が今月限りで辞任する。売り場や働き方の改革を推し進めてきたが、道半ばで突然の退場となった。大西氏は、なぜ会社を去ることになったのか。

(朝日新聞電子版より)記事全文

 流通業界のことは全く知らない。社長が退任することが「失敗」と言えるかと考えると定かではない。恐れ多くも(笑)今回はこの事例を考えてみたい。

記事から想像する大西社長は、百貨店業界では斬新なアイディアを発揮し業績を伸ばした。業界団体の会長も務めており、社外的には大いに評価されている。
しかし社内では、仕事への姿勢が厳しく、周囲にはイエスマンしか置かないと批判的な声もあった様だ。部下からは、意見を言えば飛ばされると恐れられていたという。

君主のあり方について、老子の教えを「道徳経」は以下の様に伝えている。
君主には4段階ある。一番ダメな君主は人民から侮られる。二番目は人民から畏れられる。三番目は人民から敬愛される。そして最も優れた君子は人民に存在を知られているだけだ。

参考文献:「世界最高の人生哲学 老子」守屋洋著

君主を指導者に置き換えて考えれば、能力も、人望もない指導者は部下から愚かだとバカにされる。
能力があっても、人望がない指導者は強権的に組織をまとめようとし、部下から恐れられる。
能力も人望もある指導者は、部下から敬愛される。
しかしこれではまだ足りないと老子は言う。
最も優れた指導者は部下に存在を知られているだけで、何をしているか知られないと言う。「透明な指導者」だ。

道徳経は、更に次の様に続けている。
「信足らざれば、すなわち信ざられざること有り。悠としてそれ言をおもくすれば、功なり事は遂げられて、百姓は皆我自ずからなりと謂う」

部下を信じることにより、部下からの信頼を得る。悠然として口を挟まず、部下に仕事を任せる。部下が皆の力で業績が良くなったと、自ら誇れる様にする。そんな指導者が最上の指導者だと言うことだ。

私の師匠である原田則夫師は、組織の経営を「犬の散歩」と言っていた。
若い子犬は好奇心いっぱいで、主人と散歩に出かけてもあちこちを嗅ぎ回り、主人の先を行く。主人はリードを持って自由に歩き回らせれば良い。ただし危険な時だけ後ろから引っ張ってやる。成犬はゆったりと主人の前を歩く。主人はリードをゆったり持ち後からついて行く。

オフィスの近所で見た犬は,リードを付けずに散歩していた。ゆったり歩きながら時々後ろを振り返る。振り返った先には、老夫婦が散歩している姿があった。犬は主人を心配する様に、時々足を止めては振り返っていたのだ。
この老夫婦こそ老子が言った最上の君子ではないだろうか。


このコラムは、2017年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第519号に掲載した記事です。

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