日本の大手製造業のモノづくりが最近大きく変わってきているように感じる。
日本は伝統的にモノ造りの職人に対して尊敬の念を持つ心がある。(経済的に優遇されているかどうかはちょっと疑問に思うところもあるが、いかがお感じだろうか?)その伝統が日本の製造業の根っこの所を支えてきたように思う。
近年それが変わってきたように感じている。
明治以降近代化が進み、日本は先進国のモノマネを始める。当時日本製品は世界から「安かろう悪かろう」の代名詞として認識されていた。戦後の復活期にデミング博士から教えられた品質管理を愚直に徹底。小集団活動により改善を繰り返し、品質、コストダウンを追求した。そして「モノ造り日本」という称号を得て、経済大国に成長した。その背景には勤勉な日本人労働者がいる。
ここまでは、先頭ランナーの背中を追いかけていればよかった。
先頭に飛びたしてしまってから、ちょっと勝手が違ってきた。もうマネをする相手がいない。自ら価値を創造しなければならない。そんな時期にバブル崩壊がやってきた。
その時期に、日本的伝統を捨て欧米流の合理主義経営に飛びついた。
製造や設計の外部リソース化により、製造や設計を変動費化し経営を身軽にしようとした。アップルやグーグルなどの優良企業の様に、商品開発による顧客創造を目指したと言えるのではなかろうか?
中堅中小企業がこの様な戦略を取っているとは思えないが、大企業がこの戦略で、製造や設計の現場力を落としている様に思えてならない。
一方中国のモノ造りの変遷は以下の様になるだろう。
先進国の生産委託を受け入れることにより、先進国のものづくり技術や設備を取り込んだ。そして安価な労働力を背景とし、同一規格製品の大量生産により経済成長を果たす。急速に経済発展した中国は労働コストの優位性を失ない、次の展開を目指さねばならなくなっている。
中国の新興民営企業は、独自製品の設計・生産を始めている。しかし残念ながら、中国企業は現場力を極める姿勢がまだ足りない。設計力をつけてきた企業は次の段階(設計品質保証)を目指すことになる。
日本の製造業が進んできた道を、経路は違っても中国企業がキャッチアップしてくる。日本企業も次のステップに向かわねば追いつかれる。
このコラムは、2017年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第582号に掲載した記事です。
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