失敗事例の活用


 失敗を失敗に終わらせない。他人の失敗をも経験値として共有し、失敗を未然防止する。そのために失敗原因を特定し、その対策を考え設計や製造法を改善する。

 自己の失敗を教訓として対策を考え・実施するというのは当たり前のことだ。
市場で発生してしまった不良の原因を調査し、再発しないように製品設計や生産方式を改善する。

これだけではまだ不十分だ。
この失敗体験を組織に蓄積しなければならない。これが不十分だと、組織メンバーの世代が交代するたびに同じ不具合が発生することになる(こういう事例は少なくない)。

過去の失敗事例の当事者だった設計者は、役職がつき設計に直接タッチしなくなっているだろう。上司の検図で設計の不備を発見するのも容易ではない。

私が前職で品質保証を担当していた時、失敗事例を網羅したチェックリストを作成した。設計者は設計完了時にこのチェックリストに従って確認をする。
そしてそのチェックリストを上司とともにレビューする。この時の上司の役割は、設計者がチェック項目の意味を理解できているか確認すること。理解が足りないと判断した時は指導する。

このチェックリストは、過去の失敗事例(暗黙智)を形式智に変換する仕組みとした。従ってチェック項目の意味を伝えなければ形式的な確認しかできないだろう。そのため設計者と上司の対面によるダブルチェックとした。


このコラムは、2021年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1171号に掲載した記事です。このメールマガジンでは、市場不良などの事例から再発防止対策のヒントをお伝えしています。

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