メールマガジンの読者様からご相談のメールをいただきました。
※N様のご相談
中国工場の総経理として赴任して3年目になります。 日本で仕事をしていた時は、特に5Sと言わなくても、皆がきちんとやっていてくれました。しかし中国では、毎日「5S!」とうるさく言ってもなかなか、思う様に浸透しません。本社の役員が出張に来るたびに、叱られています(苦笑)
中国人に5Sをきちんとやらせる事は不可能なのでしょうか?
上手くやるコツなどがあればぜひご教授ください。
現場を拝見していないのでどの程度なのか分かりませんが、文脈から判断すると日本と比較して悪い、と言う事だろうと思います。
まず一番目のご質問、中国人に5Sをきちんとやらせるのは不可能なのか?
私はそうは思っていません。5SやTPMに力を入れておられる日系工場で、すばらしい工場があります。指導者は日本人ですが、実践しているのは中国人です。
中国人経営者の工場で5Sに取り組んでいる工場もあります。
後者の工場では、頻繁に工場を見学に来る人があるようで、現場の班長さんが自信を持って自分たちの5Sの取り組みを説明していたのが印象的でした。
きちんと指導すれば、中国人にも5Sは理解出来るし、実践出来るはずです。
5Sをきちんとやるコツをお話する前に,なぜ5Sが上手く浸透しないのかを考えてみましょう。
上手く行かない典型的な例は、以下の三つのパターンです。
- 経営トップや経営幹部が、自ら5Sに取り組んでいない。
従業員は経営トップや幹部の事をよく見ています。上層部が本気でないと感じると、従業員は真剣に取り組みません。経営トップが本気である事を示し、幹部が率先して5Sに取り組む姿勢を見せる事が大切です。
例えば、5Sを導入宣言したその月に,倉庫にある不動在庫をごっそり捨てる、位の事をやらなければなりません。
当然、不動在庫の廃棄はコッソリやるのではなく、従業員全員が見ている所で、セレモニーとしてやります。廃棄の痛みと、それでも廃棄する意義をしっかり教えて,それを見せるためです。 - 5Sの意義をきちんと説明していない。
よくある例ですが、「掃除なんかしている時間があったら、仕事をします」と言う従業員がいます。または「今は忙しいので5Sは後回し」と言う幹部がいます。これは5Sの意義を理解していないからです。だらだらと時間をかけて掃除をするのが5Sではありません。
5Sの意義と、それが自分にどんなメリットになるのかを、きちんと理解してもらわねばなりません。 - 5Sの基準を示していない。
作業も仕事も,基準が示してあるはずです。何処までやれば合格なのかを示さずに仕事を依頼すれば、仕事を受けた方は勝手に判断するしかありません。掃除をしろ、と指示をしても合格レベルを示さなければ、何処までキレイにすれば良いか判断出来ません。「掃除をしたつもり」で終わってしまいます。
5Sが上手く行かないのは、この三つのパターンに当てはまる事が、あるのではないでしょうか?これを排除しておけば、良いのです。
そして最後にもう一つ重要なコツをお伝えします。
簡単な事ですが、ここを見落としている人が多くいる様に思います。
それは「楽しくやる」ことです。
なんだぁ、と思われるかもしれません。しかしすべての事は人のココロから始まっています。楽しくなければ継続出来ません。
5Sとは整理・整頓・清掃・清潔を通して躾をする事です。
躾とは、正しい行動が出来る様にココロを整える事です。そうすれば行動は習慣となり、習慣が文化を創ります。これが5Sの目指す所です。だから5Sをやっている人たちのココロを忘れてはいけません。強制だけでは躾は出来ません。楽しみがなければ上手く行きません。
これはすべての「組織運営」に共通の事だと考えています。
このコラムは、2013年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第328号に掲載した記事に加筆したものです。
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