「競争相手は同業他社ではなく時代の変化」日本小売流通業最大手の元会長鈴木敏文氏の言葉だそうだ。
本質をついた言葉だと思う。流通業と製造業は全く違う事業だが、本質は同じだろう。
大型店舗の進出で、地場の商店街が廃れて行く。こういう状況で、競争相手は近隣の個人商店でもなく、大型店舗でもない。
コンビニ全盛期にネット通販が勢力を伸ばす。こういう状況で、競争相手はコンビニ他社でもなく、ネット通販業者でもない。
本当の競争相手は、顧客嗜好の変化、利便性の変化,テクノロジーの進化だ。
その変化が時代の変化だ。
鈴木氏は、日本にコンビニを展開し、POSを活用したビッグデータ経営を取り入れた立役者だった。
我々製造業も同様だ。
若い頃私は、工場のオートメーションシステムの設計者だった。例えば自動制御システムのコンピュータに使う補助記憶装置を考えてみよう。
NotePCに内蔵されているハードディスク(HDD)の原型となったのは、IBM3340だ。洗濯機程の大きさで35MBの容量だった。今では2.5″・2TBのハードディスクが1万円程で買えてしまう。
容量数万倍、サイズ数千分の一、価格数百分の一だ。これが時代の変化だ。
競争相手ばかり見ていれば、信頼性を考慮して古いテクノロジーのハードディスクを使い続けることになる。しかしハードディスクメーカでは,旧製品の生産はもとより修理も不可能だ。
時代の流れは「軽薄短小」。設備産業の顧客要求は必ずしもそうではない。高信頼性、高稼働率が要求される「重厚長大」の設備産業だ。時代の流れを克服するためには、市場に大量に出回る安価なHDDを使って高信頼性、高稼働率を実現する事になる。複数のHDDを使い冗長化する。つまり複数台で一つのHDDの様に動作し、一台のHDDが壊れても、そのまま稼働出来る。壊れたHDDを交換すれば、そのまま修復が完了。
同業他社を見て戦略を決めるのではなく、
時代の流れ(顧客の変化、技術の変化)に戦略を合わせる。
更に上を行くなら、時代の流れに上手く乗るのではなく、時代の流れを自ら起こす。
これが競合他社との競争ではなく、時代との競争による経営だ。
このコラムは、2017年4月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第525号に掲載した記事に加筆修正したものです。
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