ついている,ついてない,と感じることがままある.
売り上げ増加を見込んで,設備投資をしたら金融危機で受注がすっかり減った.
地震の代替え生産で大量に受注を得たが,洪水の影響でサプライヤーから部品が入ってこない.
逆に,
キャンセルで大量に部材が余ったが,別の顧客の増産要求に即応できた.
出荷抜き取り検査で不良が見つかり,顧客への流出が防げた.
こういう運,不運というモノがある.
ではその「運」とは何だろうか.
出典を忘れてしまったが,こういう定義がしてあった.
「準備の上に訪れるチャンスを運という」
運を制御できない偶然のモノと考えていては,運を生かすことは出来ない.経営を偶然に任せる訳には行かない.
万全の準備があって初めて運がある.
以前インドネシア・バタム島に工場を立ち上げたことがある.
不運なことに,工場立ち上げ直後に受注が減って,この工場にまわす生産を確保することが出来なかった.そのため立ち上げサポートに現地に入っていたメンバーはくる日もくる日も作業者の教育・訓練に明け暮れた.
そのおかげで,この工場はすばらしい工場になった.
米国の最大手通信機器メーカ向けに生産した製品は納入1号機から,客先工程,市場で1台も不良が発生しなかった.客先から絶大な信頼を得ることが出来た.
受注減は準備をするためのチャンスだった訳だ.その準備の上に客先受注というチャンスが訪れた.これが「運」というモノだろう.
こう考えれば,運はコントロールできないモノではなくなる.
経営上発生する全ての困難は,準備をするチャンスだ.正しく準備さえ出来れば,運はやってくる.
不景気で受注が減った時に,不運と考えて首をすくめ,ひたすら経費節減に取り組み耐える.これでは運はやって来ない.生産が減っている時こそ改善のチャンスだ.課題を間違えなければ,必ず運はやって来る.
生産量拡大の改善をしても,同じ不運が何度もやってくることになる.
高品質高付加価値を目指して生産性を改善する.こういう準備ができれば,今までにない運がやって来るだろう.
このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。
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