1円玉から1万円金貨まで…重さチェック 貨幣大試験


 貨幣の重さが規定通りになっているかどうかをチェックする恒例の「貨幣大試験」が22日、大阪市北区の独立行政法人・造幣局であった。貨幣への信頼を維持するために1872(明治5)年に始まり、今年で139回目。

 桜井充・財務副大臣ら約80人が出席。今年度に造られた1円(1枚1グラム)▽5円(同3.75グラム)▽10円(同4.5グラム)▽50円(同4グラム)▽100円(同4.8グラム)▽500円(同7グラム)――や天皇陛下在位20年記念の1万円金貨幣(同20グラム)など計21種類の貨幣を電子てんびんなどで計量し、基準を満たしていることを確認した。

(asahi.comより)

 新聞の記事なのでこれでよいのだが、科学や工学を勉強した人は、こういうレポートを書いてはいけない。

どこがまずいかお分かりだろうか?

重さが規定どおりになっているかどうかチェックする、と言う目的で「貨幣大試験」を行った。そしてその結果は、基準を満たしていることを確認した。とあるが、その基準がどこにも明記されていない。

つまり1円玉が1gと決めてあるが、測定値がいくらならば、基準どおりと判定してよい、と言う基準が明記されていない。

全てのモノにはバラツキがある。
1円玉を作って1gにせよ。と言う製造指示をもらっても、これを達成するのは不可能だ。公差を入れてもらわなければ、モノ造りはできない。

例えば重量1g±0.01gと書いてあれば、造ったモノの内99.9gから1.01gの間に入っているものが合格品だ。

公差が指定してない場合は、有効数字を明確にしておけば、どれだけばらついてもよいと言うことは類推できる。

硬貨の重量の例では、各硬貨の製造工程は完成品の重量の工程管理能力が同じだとすれば、小数点第二位の精度で作れるはずだ。(5円玉:3.75g)
従って各硬貨の重さはそれぞれ、
1円:1.00g
5円玉:3.75g
10円:4.50g
50円:4.00g
100円:4.80g
500円:7.00g
と表記しなければならない。
つまり有効数字が小数点下二桁であることを明記しなさいと言うことだ。

この場合小数点第三位まで測定できる測定器を用い、1円玉であれば0.995g~1.005gまでの製品が合格となる。

ところで、賢明な読者様は測定にもバラツキがあるのがお分かりだろう。
同じモノを同じ人が測定しても測定値が、違う値になる。その測定のバラツキを評価したものを「ゲージR&R」と呼んでいる。

通常は測定のばらつき(σ)は、測定の公差範囲より一桁精度が高くなくてはならない。3σが公差範囲と同じくらいになってしまうと、1000回測定して3回ほど公差ぎりぎりのものを誤判定することになる。


このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事です。

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